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  • 2009/05/14 掲載

不況下、企業のIT投資の実態は?真に有効なIT活用の羅針盤(前編)(2/2)

野村総研 研究理事 淀川高喜氏

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効果が出ると分かっていても、新規プロジェクトは中止

野村総合研究所 研究理事 淀川高喜氏

野村総合研究所
研究理事
淀川高喜氏

──今回の調査におけるIT戦略役割の変化からどのようなことが読み取れるでしょうか?

 図3をご覧いただくと分かりますが、2007年まではeビジネスのような「事業・サービス創造支援」や情報系システムと言われる、情報は提供するが使い方は社員任せで、うまく使えば効果が出る「情報活用支援」などが減少してきています。これは2000年当時、ITが華やかな時期があり、それを受けて高度なIT活用を試みようという傾向がありましたが、実際に実行してみても思ったような効果が得られなかったことに原因があります。

 その後、2003年~2007年、現在のような極度の不況ではありませんでしたが、景況は低飛行が続いており、不要、不急のことに取り組める時期ではありませんでした。そこで効果の出にくい、分かりにくいものは抑え気味にして取り組んだのが「業務プロセス標準化支援」と「業務効率化支援」です。業務をシステムに置き換えることで、システム投資以上に業務コストが削減されるため、こうした効率化は積極的に行われてきました。ところが2007年になると、この「業務プロセスの標準化」への投資意欲も下がりました。つまり「必ず効果が出る」ところでも「新規プロジェクトはやめて欲しい」となったのです。

図3 IT投資配分
図3 IT投資配分
※クリックで拡大

Source:NRI,2009


──IT投資を「減らす」企業が「増やす」を上回った傾向は2009年も続くのでしょうか。

 次回の調査は今年が対象となるので、投資を控える傾向はむしろ「今年が本番」と言えそうです。業務そのものが減少する状況にありますので、システムそのものも身軽に、スリム化するというのが全体の傾向でしょう。中長期的視野から見るとこの1~2年が「氷河期」ですが、これを乗り切っても「これまでと同様、需要が回復して成長軌道に乗る」と単純に考えられる業種は限られています。

 そのため、あらゆる日本の企業は、日本のマーケットだけを見ているのではなく、本気でアジア市場などに注力できるようにしなければならないと思います。日本のマーケットリソースだけではコストは維持できないのですから、グローバルのリソースを使い切らなければならないということです。業務そのものの体質や構造を変えないと、氷河期が過ぎて成長軌道に戻っても、勝てない企業になっていると考えます。

 これはもちろん、日本がお家芸である製造業や多くのサービス業にも当てはまります。あるタイミングでこれに備えた構造転換を行う必要があります。

 従って、システムも新しい業務に対応できるものに変えていかないといけないでしょう。先行投資はターゲットを絞って行う必要があるので、今年後半から来年度になるでしょう。これができる会社では、業務プロセスの標準化、事業サービス創造支援的なニーズが一部で起きてくると見ています。

※後編は5月20日に公開いたします。

(聞き手:丸山隆平)

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