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  • 2009/07/07 掲載

【連載】工事進行基準対策の第一人者に聞く(3):工事進行基準適用のための3つのポイント<2>(2/2)

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工事原価総額の見積もりについての各社の問題意識

 工事原価総額の見積もりについての問題意識についてアンケート調査を実施したところ、実に約40%の企業が「プロジェクト開始後の仕様変更により、原価予算が大きく変動してしまう」「プロジェクト開始後の追加開発により、原価予算が大きく変動してしまう」と答えている。このように、プロジェクト開始後の原価予算の変動は、工事原価総額の見積もりに際し、大きなボトルネックとなっている。


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図:工事原価総額の見積もりについての問題意識(n=120, 複数回答可)
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 仮に、その期間における原価予算を大幅に超過した工数またはコストが発生しており、全体としても当初見込んでいた原価予算を大きく上回ってしまいそうな場合には、全体としての予算超過が明らかになった時点で、工事原価総額を見直す必要がある。実務上はどのタイミングでどの程度乖離があれば原価予算を見直すのかについて、各社ごとに運用の規程を設定し、そのルールどおりに工事原価総額の見直しを行い、それを工事進行基準の計算に適切に織り込んでいく必要がある。弊社で行ったアンケート調査の結果を見ても、原価総額の見直しの方法については、いくつかの興味深いパターンが見られた。

 また、将来的に見積もりと実績が大きく乖離してしまった場合、前述のように適時に見積もりの見直しを反映させることは必須であるが、その一方で、当初の見積もりがはたして妥当であったのか、という点も問題になる。逆にいうと、結果として見積もりと実績が乖離してしまったとしても、会計監査への対応などのために、当初の見積もりが妥当であったことを示す必要があるのだ。

 この見積もりのルール化に関しても実際に企業が抱える問題意識として挙げられており、アンケート調査においても、「原価予算の見積もりの方法がルール化されていない」と答えた企業が30%以上にものぼった。また、これらの前提としての原価計算についても「原価計算制度が適切に構築されていない」との問題意識を抱える企業も25%以上となっており、実際に弊社にご相談いただくケースを見てみても、原価計算制度の見直しから検討を進められるケースが少なくない。

 原価予算の見積もりの精度を高めるためには、個人ではなく組織として一定水準の見積もりを行う必要がある。そのために、組織としての精度の高い見積もりを行うためのルールを設定し、そのルールどおりに見積もりを実施する「見積もりの標準化」が求められる。その見積もりルールどおりに見積もりが実施されており、ルール自体も妥当であれば、全社的に原価予算の見積精度も高まり、外部に対しても客観的に工事原価総額の見積もりの合理性を示すことができるのである。

 いずれにしても、プロジェクトごとの工事原価総額の合理的な見積もりとは、各プロジェクトから最終的にいくらの利益が出るかを高い精度で予測するために欠かせないものであり、先読みの企業経営を行い意思決定を行う上でも重要な経営課題となる。今回のポイントである工事原価総額についても、前回取り上げた工事収益総額の合理的な見積もりと同様、会計基準への対応もさることながら、健全な企業経営のために欠かせない要素と言えるだろう。

 今回は、工事進行基準への対応のための大きなハードルとなる工事原価総額の合理的な見積もりについて、基準上の要件と対応の留意点、また実務上のポイントとなる見積もりの標準化についても触れながら紹介した。最終回となる次回は、3つのポイントのうちの「工事進捗度」にスポットをあて、工事進捗度を見積もるための手法について、各社の実態と実務上の対応にも触れながら紹介していきたい。


≪次回へつづく≫

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