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  • 2012/04/19 掲載

トヨテック 木村和雄社長:トヨタグループ販売店の構造改革を成功に導いたカギ

シェアードサービス(SS)で市場縮小を乗り越える!

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1990年初頭のピーク時には800万台を超えていた国内自動車販売台数は、2010年代にはほぼ半減している。こうした国内市場の急激な縮小に伴い、東京のトヨタ販売店グループは一丸となり、身の丈にあった経営を目指して、さまざまな構造改革を推進してきた。その中心的な役割を担ったのが、販売店などのグループ会社を束ねる「トヨタアドミニスタ」だ。同社では縮小市場でも活路を見出すため、シェアードサービスによる事業効率化を推進してきた。3月6日に開催された「BPMフォーラム2012」では、この構造改革を推進してきた中心人物の一人であるトヨテック 代表取締役社長 木村和雄氏(前トヨタアドミニスタ 専務取締役)が登壇し、パラダイムシフトとなったグループ化までの道程や、グループ経営体制に移行するにあたり留意した点などについて熱弁を振るった。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


市場縮小を乗り切るため、身の丈にあった経営に踏み切る

photo
トヨテック
代表取締役社長
木村和雄氏
(前トヨタアドミニスタ 専務取締役)
 2001年8月にトヨタ自動車から都内直営販売店の全株式を移転され、持株統括会社として設立されたのが「トヨタアドミニスタ」だ。同社は「東京トヨタ自動車」「東京トヨペット」「トヨタ東京カローラ」「トヨタ西東京カローラ」「ネッツトヨタ東京」などの都心部のトヨタ系列自動車販売店のほか、物流会社の「トヨタメトロジック」や、情報システム子会社の「トヨテック」を抱える。

 トヨタアドミニスタ・グループの販売会社は、東京都内に約250の新車販売店舗と、8000人強の従業員を有するが、市場の後退と共に、新車販売台数はピーク時の半分以下にまで落ち込んだ。

 トヨテックの木村氏は、販売店グループが構造改革に踏み切らざるを得なかった背景について「バブル崩壊以降の急激な市場縮小が大きな原因」と語る。実際に国内自動車販売台数の推移を見ると、1990年の約800万台をピークに、2000年には約600万台、2010年には約400万台近くに半減。トヨタ車の販売も同様の傾向を示しており、特に東京地区はバブル後の落ち込みが激しかった。このような市場縮小に伴い、販売店各社は店舗投資や数多くの要員を抱え、固定費の大きさに悩むことになった。

 そこで各社はバブル期の拡大政策から大きく方向転換し、自社独自の合理化によって何とか難局を乗り切ろうとした。「まだ当時は(再度)市場が回復するのではないかという淡い期待もあった」(木村氏)という。しかし、2000年以降になっても市場経済は失速し続け、状況は厳しくなるばかりだった。

 「もはや自助努力による経営改善策だけでは手直しが難しいとのギリギリの判断」から、トヨタアドミニスタを設立し、グループ経営による本格的な構造改革が進められ、店舗拠点や要員の採用などで思い切ったスリム化が進められた。各社が「身の丈」にあった経営に転換しなければ、今後は存続すら難しいという危機感が広がり、抜本的な経営改善が至上命題となった。

 販売店として、競争力は何としても維持しておきたいとの思いが、経営改善の足かせとなり、各社の固定費構造が生み出されて来た現実を、直視せざるを得ない状況を迎えた。

 その結果、「販売事業体の構造、体制、あるいは業務体系まで踏み込んだ改革を推進しなければならないという全体の総意ができた」(木村氏)という。集約・統合できるものは最大限まとめ、経営効率を高めることに活路を見出そうとしたわけである。このようにしてグループ経営への基本方針が打ち出された。

 基本方針の1つ目は「コスト構造を抜本的に見直し、事業体の垣根を越え、バックオフィスを共有すること」。2つ目は「販売第一線での活力や競争力を維持しつつ、事業縮小に繋がるネガティブな状況を醸し出さないこと」。木村氏は「特に首都圏の特殊な状況が、全国の販売店にまで影響を及ぼさないように、販売体制はあくまで堅持するという揺るぎない方向性を対外的にアピールした」と説明する。

 また3つ目の方針として、「新しく設立した持株統括会社が販売事業体本来の運営を妨げないように直接的な関与をさせないこと」という点に配慮した。

画像
トヨタアドミニスタの考えたグループ経営の姿
(出典:トヨタアドミニスタ)

 そして、いよいよグループ経営体制とシェアードサービス(SS)体制をテコにした固定費改善への動きが始まった。

【次ページ】シェアードサービス化を軸足に、グループ経営への大転換を図る

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