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  • 2013/08/05

アサヒグループHD 泉谷 直木社長:強いミドルの改革能力を育む10の発想転換ポイント

ソーシャルネットワーク時代の接近戦のマーケティング

国内でビール類を中心とした酒類事業から飲料事業、食品事業を展開するアサヒグループ。今や海外売上高比率も10%を超え、2012年12月期の連結売上高は1兆5,791億円にのぼる。主力のビールは国内で3年連続トップシェアだ。同グループでは、企業の長期的価値を高めていくために、ミドル層の改革マインドを育むための取り組みに注力している。BPMフォーラム2013で登壇したアサヒグループホールディングス 代表取締役社長の泉谷直木氏が、同社の躍進を支える10の視点と、改革を進める上での注意点について語った。

執筆:レッドオウル 西山 毅

執筆:レッドオウル 西山 毅

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama


現場のデータに基づいた戦略立案が鍵を握る

photo
アサヒグループホールディングス
代表取締役社長
泉谷 直木 氏
 冒頭、泉谷氏は、「まずは経営層自身が思考のパターンを変えていかなければ、目まぐるしく変化する経営環境には対応できなくなる」と切り出した。

「BPM以前に、経営層としてどういう発想が必要なのか、そしてそれを従業員とどう共有していくのかという取り組みがベースになければ、せっかくのBPMも単なるオペレーションレベルでの施策に終わってしまう。」

 経営層としての展望や経営目標の作り方が変われば、当然、物事の価値観や判断基準も変わってくる。

「たとえばIT部門の役割についても、従来のシステムの面倒を見るというものから、経営戦略についての責任なり役割を分担するというように変わっていく。少なくとも我々はIT部門にそれを求めている。」

 それでは具体的にアサヒグループでは、どのような思考パターンの転換を行ってきたのか。この点について泉谷氏は、10個の発想転換ポイントを提示する。

 まず1点目は、「どうやって売るか」から「どうやって買っていただくか」への発想転換だ。

 現在の小売店には所狭しと物が溢れ、必ずしも買いたいとは思っていない消費者にあの手この手で訴求しており、店頭では値引き合戦も繰り広げられている。

 こんな時に社内で必ず出てくるのが、“営業部門は何をやっているんだ”という話だ。しかし、一方の営業部門は、“商品が他社に負けているからだ”と言う。苦しい経営状況にもかかわらず、お互いが責任をなすりつけあって、議論が社内へ社内へと入ってしまう。これは「どうやって売るか」という議論をするからだ。しかし、泉谷氏はいう。

「どうやって買っていただくかという議論をすれば、なぜお客さまは我が社の商品を選ばれないのか、あるいは今まで選ばれていたのになぜ他社製品に切り替えたのか、という視点が生まれてくる。基本的な発想を“お客さまのニーズをどう満たすか”に置いておかなければ、たとえBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)のような優れたツールを採り入れたとしても、単なる社内の効率化運動に終わってしまう。」

 2点目は、「思い込み」から「事実確認」への発想転換だ。

「正しい情報は現場にしかない。一方で一番正しくない情報があるのは社長室だ。しかし社長が、過去の自分の成功談を持ち出して権力でゴリ押しすれば、従業員は絶対に抵抗できない。これが最大の間違いのもと。お客様も市場もどんどん変化していて“事実確認”をしなければならないのに、過去の“思い込み”で判断してしまい、お客様や市場の実態とズレてしまうことがある。お客さまも市場もどんどん変化していて“事実確認”をしなければならないのに、過去の“思い込み”で判断してしまい、お客さまや市場の実態とズレてしまうことがある。」

 たとえば、一口で少子高齢化が進み、人口も減っているが、世帯数は逆に増えている。さらにその内訳を細かく見てみると、従来の日本の標準生計世帯は両親と子供2人の4人家族で、20年前には80%を構成していた。しかし今ではその割合は50%を割り、2015年には単身世帯が32%、夫婦2人の世帯が21%を占めるという。食べ物・飲み物のマーケティングを考える場合、こうした前提の変化を誤って捉えると、大きな間違いを起こすことになる。

「20年前の戦略を持ち出しても絶対に成功しない。いまのマーケットの動きを見なければダメだ。私がBPMに期待するのは、こうした現場のデータをきちんと捉え、それを経営プロセスの中に織り込んでいくということ。」

ソーシャルネットワーク時代の接近戦マーケティング

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 3点目は、「社内発想開発型」から「市場発想開発型」への発想転換だ。

 アサヒビールのようなメーカーは、当然技術力で勝負している。しかし他社との技術力の差が顧客満足度の差につながらなければ、消費者には買ってもらえない。

「そこで私はR&D本部の人たちに、R&D&M&F本部になってくれと注文を付けている。研究開発(Research & Development)するだけでなく、Marketingを行い、Financeまでを見てくれと。つまり自分が開発した商品がお客さまニーズのどこを満たし、我が社にどれだけの利益をもたらすのかまで考えて仕事に当たってもらうよう話をしている。」

 4点目は、「物的品質」から「精神的品質」への発想転換だ。

 商品にはまず物的品質がある。壊れにくい、長持ちする、使いやすい、といった項目だが、これらは今や平準化しており、差別化にはつながりにくい。

「しかしもう1つ、精神的品質がある。これはお客さまに精神的な満足を提供することだ。この評価は社内では行わない。お客さまにしていただく。これで初めて我々のテクニカルシーズ(=技術の種)とお客さまニーズとが1つにつながっていく。」

 5点目は、「広告宣伝」から「情報受発信」への発想転換だ。

 ソーシャルネットワークが社会インフラ化しつつあり、消費者同士が直接つながる時代になった。商品の評価は、口コミで簡単に広がっていく。

「溢れ返る情報に対する信頼感が下がっている中で、お客さま自身が発する言葉が、他のお客さまに大きなインパクトを与えている。」

 アサヒビールでは3年来、スーパードライをマイナス2度まで冷やして飲んでもらう“エクストラコールド”という飲み方を提案している。しかしTVCMをいくら流しても、その味わいを伝えることはできない。だからTVCMも打たない。代わりに銀座にパイロットショップを作り、実際にマイナス2度まで冷やしたスーパードライを提供することにした。

「たくさんのお客さまに並んでいただいた。それをマスコミが報道してくれる。またTVCMなら“アレ、見たか?”という話にしかならないが、実際に体験されたお客さまの口からは“アレ、飲んだか?”という言葉が出てくる。じゃあ飲みに行ってみようという次のお客さまの行動が起こる。こうした接近戦のマーケティング、エクスペリエンス型のマーケティングがこれからは必要になってくる。」

 6点目は、「お願い型」から「品質論争型」への発想転換だ。

「昔の営業マンは、“そこを何とか”というお願いの上手な人間が一番成績がよかった。しかしビジネスがグローバル規模になってくるとこれでは通じない。今はもう売り方の問題ではなく、きちんとしたものづくりが基本にあり、その商品の持つ強みや特性を品質として語っていくことでしか、営業活動は成り立たなくなっている。」

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