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- 2013/08/16 掲載
石油資源開発が語る、BPM活用で実現した業務プロセス進化のサイクル
方法論としてのBPM、手段としてのSOAが成功の要因
「国内事業では、各部門が競い合うようにして業績を伸ばし、順調に発展してくることができた。しかし競争の激しい海外での事業展開や、メタンハイドレートなどの新しいエネルギーの開発に向けてまだ確立されていない技術に挑んでいくという状況では、従来のように各事業部がそれぞれ個別に注力するだけでは通用しない。部門間がしっかりと連携し、一丸となって取り組む必要があった。」
そこで石油資源開発では、2007年の本社移転を機にIT中期計画を打ち出し、社内の業務改革に乗り出した。
「このIT中期計画は社内の多くの関係者を巻き込んで作り上げたもので、経営支援や事務系部門の連携、技術部門における情報共有、ITインフラの整備などを目指した。」
そうした中、約3年前に着手したのが操業部門の業務改善支援だ。それまで手掛けてきたいくつかの取組みの中で、この取り組みの特徴は利用部門の実務者が共感を持って主体的に進めたことであり、導入したシステムも着実に定着してきているという。
「どうしてこれがうまくいったのかと私なりに解釈してみたが、やはり方法論としてのBPM、手段としてのSOAの利点に相当する要素をしっかり含んでいたからだと考える。」
成功のポイントは大きく3つあった。分かり合えたと実感できるコミュニケーション、誰でも改善効果が期待できる表現力、そしてすぐに改善の手応えを実感できるスピードだ。
社外のプラントエンジニアリングの専門家の支援を仰ぎ、まず業務の要点をホワイトボードに書き出し、整理して、現場の実務者とやり取りをするという進め方をした。こうしたセッションを何十回も重ね、業務の流れ、情報の流れを整理し、誰もが納得できる改善ポイントをまとめあげた。そしてプロジェクトメンバーの熱意が冷める前にシステムに落とし込み、一刻も早く使ってもらうことに注力した。
「ただしこの取り組みは、すべて外部のスキルに依存して実現したものだった。このやり方を何とか自前でもできるようにしたいと思った。これまでの外部支援依存の取り組みを“カイゼン”の第一ラウンドとすれば、ここからがカイゼンの第二ラウンドとなる。」
約1年5か月の準備期間をかけ、自社のみのBPMプロジェクトを開始
この成功によってBPMの有効性に着目した渡辺氏は、約1年をかけてパイロットプロジェクトの準備を進めた。過去事例の収集や社内スタッフの確保、スモールスタートの決定および対象業務の選定などだ。そして目標として掲げたのが“人員情報の活用を支援する”ためのシステム構築である。「自分たちだけで手掛ける本番プロジェクトの前哨戦として、パイロットプロジェクトを立ち上げることにした。本番を画餅に終わらせないためにもぜひBPMを導入して取り組もうと決意した。」
「実際にやってみた感想を言わせてもらえば、BPMは業務改善そのものと、業務改善意識を啓発させることに非常に大きな貢献性があると感じた。」(藪根氏)
ただしプロジェクトの開始時点では、BPMやSOAに対する批判的な見方が多かったという。当時は導入事例が少なく、特に部門横断的な取り組みは難しいという指摘も受けた。そこで社内を巻き込んでいくために、大きく2つの点に留意した。
「第一に目指したのは、難しい課題や最先端の技術、あるいは未開拓の領域や新しいアイデアなどへの挑戦だ。第二に、業務部門やエンドユーザ、あるいはパートナーやプロジェクトメンバーなど、このプロジェクトに関わるすべての人たちにプラスをもたらすことも念頭に置いた。」(藪根氏)
まず非常に小さなパイロット用の予算を確保し、パイロットプロジェクト立ち上げまでに5か月をかけて準備を進めた。具体的には、BPM/SOA製品の選定と並行して業務課題の選定と実現性調査を進め、その後、社内への構想提案を行った。
「製品選定の際には当然RFP(提案依頼書)を書いたが、盛り込んだのはソフトウェアの機能要件だけでない。各ベンダーに同じ仮想の課題を提示し、それについてのAS ISとTo Beを書いて、2週間以内に実際のアプリケーションを見せてくださいという要望を出した。」(藪根氏)
このロールプレイングで、ベンダーから提出されたTo Beがユーザー企業として実感の持てるものかどうか、また2週間という短納期で間に合うかなどをレビューしたという。いうまでもなく、コストも重要な比較検討項目だ。そうして最終的に4社から1社を決定した。
次に注力する業務課題については、当時IFRS(国際財務報告基準)の強制適用が一旦延期になったものの、将来的にIFRS関連の要件は非常に重要になるとの判断があり、最終的に会計システムと人事システムのデータ連携部分にターゲットを絞った。
「人事システムから上がってくる人員情報を使って人件費の計算を行った後、それを紙で出力して人が目視でチェックし、会計システムに入力するといったことを行っていた。まずはこの両部門のシステム間でデータ連携がスムーズに実現されていない箇所を改善することにした。」(藪根氏)
そこで当時利用していた人事パッケージシステムのデータベースを調査し、メタデータのデータ構造を整理し、ER図を描いて可視化を図り、実現性があることを見極めた上で、経理部門と人事部門を中心に構想提案を行った。
【次ページ】ぐっと辛抱してコミュニケーションを取り続ける
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