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- 2013/03/13 掲載
オムニチャネル時代の消費者行動、「買う」と「ポチる」の境界線
オムニチャネル時代の「非計画購買」
先ほど冒頭で、「ポチる」という言葉をインターネットスラングと紹介したが、オムニチャネル時代の肌感覚では、むしろスラングというよりも一般的な動詞だろうと感じている方も多くいるのではないだろうか。この言葉は、物品購入の気軽さを表現するとともに、消費者行動論でいうところの非計画購買、いわゆる「衝動買い」と呼ばれる購買行動を行う消費者の心理状態をも言い表している。先の例文からも、(偶然にも、その時点で初めて)見つけた商品が良さそうな印象だったので、(十分な検討過程を踏まず)思わぬ形で購入に踏み切った、という文脈が透けて見える筈だ。
このような非計画購買は、もちろんウェブ上での通信販売に限られたものではない。誰もが一度は、リアル店舗内でも商品を「思わず購入」した経験があることだろう。
実は消費者の購買行動の7割から8割が、このような非計画購買によるものであるという結果が数多くの調査でも明らかになってきている(図1)。
手軽に、気軽に、思い立ってすぐに商品を購入してしまうような、つまり「勢い」で「ポチる」ような非計画購買が、さらなる購買率、併売率の向上、ひいては客単価の向上をもたらし、現代の消費を大きく牽引しているともいえるのである。
さまざまなチャネルを跨ぎ、重ね合わせて「ポチ」る消費者
では、オムニチャネル時代の消費者が行う「非計画購買」とはどのようなケースが存在するのだろうか。図2のように消費者の購買行動を3つのタイプに分類し、例示してみる。まずは1の「商品認識型」の場合だ。消費者は購入予定商品を決めており、購入意思も持っている。しかし「何を買うか」は決まっているが、「どこでどう買うか」までは決めていないケースである。
たとえば、ある消費者が、ある書籍を求めて書店へ出向いたとする。彼は店内でその書籍をパラパラと立ち読みしたあと、「欲しいことは欲しいが、今すぐに購入するほどの内容ではないな」という印象をもった。そこで、他の読者がその本をどう評価しているのかを確かめるために、スマホを用いてオンラインショップへアクセスし、書評レビューを確認しようとする。そしてオンラインショップ上の該当書籍のページをひらくと、なんとその書籍の中古本が「良好」な状態で、しかも半額以下で販売されていたとする。
新品・中古に対するこだわりがない彼は、思わず、その場でその中古本を「ポチる」ことになるのである。
この例のように「突発的ショールーミング」を行った消費者の頭には、事前にこういった購買行動をする予定はなかった筈である。つまり、「何を買うか」については計画的であっても、「どこでどう買うか」については非計画的であったということだ。
【次ページ】品質と価格 vs 利便性と情報量
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