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前回は、オムニチャネル・リテーリングを実現するための3つの企業変革について、業態別に解説した。共通して言えるのは、オムニチャネル時代はリアルに強みのある既存小売業者にとって、むしろ最大のチャンスであるということだ。今回は、そのチャンスをさらに活かす「店舗力」向上に向けた取り組み方法について解説しよう。
「店舗力」とは何なのか、その価値を再考する
まず最初に本稿で店舗とは、リアルに存在する店舗のことを指すことをお断りしておく。
では、この店舗の力、すなわち「店舗力」とは何だろうか?
店舗のサービスには、接客・品揃え・価格など色々あるだろう。それらが顧客に満足を与え続け、それによってリピーターを増やし、さらには口コミなどによる新規顧客を引き寄せることのできる力が「店舗力」であると考える。
顧客への訴求手段として考えた場合、広告・宣伝・販促などが一時的な訴求手段であるのに対して、店舗力は継続的に質の高いサービス提供を行うこと自体がそれに該当する。企業としての総合力ともいえるものであり、実現も継続も容易ではない。だからこそ、店舗力は競争力の源泉となりうるのである。
それでは、具体的に「訴求」するサービスとはどんなものだろうか?それは顧客の期待通り、または期待を上回るサービスを提供することに尽きる、と筆者は考えている。
たとえば、高級バッグを買うときには、顧客は、豪華な内装の店舗、丁寧な接客、美しい包装など、特別なショッピング体験を期待している。もし、その店員が安っぽいジーンズをはいていたらどうだろう?せっかくの購買体験が台なしである。営業途中の営業マンがランチに牛丼を食べる場合は、どうだろうか?早い・安い・うまいことが、もっとも重要である。丁寧なメニューの説明や豪華な店内装飾など、まったく期待していない無用の長物である。
つまり、顧客の期待に応じた価値を、一貫性をもって、継続的に提供することなのである。言い換えれば、自社が約束した価値を、約束どおりに愚直に提供し続けることである。
顧客の期待通り、あるいはそれを上回るサービスを提供することは、企業活動の基本中の基本であろう。しかし、オムニチャネル時代には、これらに加えて考えるべきことがある。それは、ネットの世界を知ってしまった消費者に対しては、ことさら「リアルであることの価値、意味を提示すること」が必要になってきている、ということである。
リアルであることの価値とは何か?それは、そこでしか得られない体験・体感、出会い(セレンディピティ)・空気。つまり、「場」としての価値であろう。
「場」としての価値を考えるならば、地域性の高い情報の集約や発信、その店ならではの品揃え、店員と顧客のフレンドリーな関係性、顧客同士の交流などが考えられる。ナショナルチェーンの小売であっても、従来の画一的サービス以上のものが求められるようになってきている。
加えて、リアルとネットとを、有機的に連携できれば、新たな価値を提案することが可能となる。顧客は、その店のサービスや情報に、店舗の外から、つまりネットからもアクセスしたいと思っている。
オムニチャネル時代では、それらが「つながっていない」ということが、不満の要因となってしまうことすらあるのである。
【次ページ】オムニチャネル時代に店舗力を向上する4つのステップ
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