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  • 2013/06/19 掲載

ガートナー志賀嘉津士氏:ソーシャル活用で注目される“コラボレーション型意思決定”

ボーイングや家電業界の過ちを繰り返さないために

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Webログやソーシャルメディアなどの非構造化データを含むビッグデータの収集が可能になってきたこと、あるいはデータ分析といったテクノロジが進化してきたことで、企業はこれまでにない意思決定を行うことが可能になってきた。ガートナー リサーチ部門 リサーチ バイス プレジデントの志賀嘉津士氏は、その1つを“コラボレーション型意思決定(CDM)”と呼び、これからのビジネスに勝つためには必要不可欠なものだと指摘する。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

意思決定上のミスが、企業に取り返しのつかないダメージを与える

photo
ガートナー リサーチ部門
リサーチ バイス プレジデント
志賀 嘉津士氏
 企業には意思決定の3つのレイヤーがある。1つめが戦術的な意思決定で、マーケット分析や顧客分析など、ビジネスの現場レベルの意思決定だ。取り扱う情報としては、市場データや売上データなどの構造化データが多い。

 2つめが、それと対をなす戦略的な意思決定で、トップマネジメント層がBIや経営ダッシュボードなどを用い、非常に高いレベルでの意思決定を行う。自社の強みや弱みを理解し、市場状況などの外部環境を把握して、競争上優位になるような手を講じていくための意思決定である。取り扱う情報は、現場から上がってくるレポートや交渉、会話の内容などの非構造化データが多い。

 その中間にあるのが管理的な意思決定で、内部監査や人事関などに関する意思決定レイヤーとなる。ビジネス・インテリジェンス&情報活用 サミット 2013に登壇したガートナー リサーチ部門 リサーチ バイス プレジデント 志賀 嘉津士氏は次のように語る。

「戦術的になればなるほど意思決定は内部志向となり、論理的、反復的で、自動化が容易でITが与しやすい領域となる。一方、戦略的になればなるほど意思決定は外部志向で、創造的で不規則性を持ち、自動化できる範囲も約半分に留まる。」

 こうした3つのレイヤーの特徴を踏まえた上で、志賀氏は勝敗を決めるような重大な意思決定を誤ると、企業は非常に大きなダメージを受けることになると強調する。

 たとえば米ボーイング社の次世代旅客機ボーイング787は、度重なるバッテリーのトラブルに見舞われ、最近再就航したものの、一時期運航停止を余儀なくされた。この件については日本メーカーの部材提供率が3割を占めるという報道もあり、バッテリ供給元の企業が犯人扱いされたが、志賀氏は基本的にボーイング社自身のグローバル・パートナーの掌握不足だと指摘する。

「日本ではあまり焦点が当たらなかったが、要は内部環境の把握ミスだ。787クラスの機体では、使用部品点数が約200万点にもなるといわれており、極度のグローバル水平分業が進んでいる。これをうまくマネジメントしていくのが航空産業のコア業務ともいえる。そこでミスを犯したということ。」

 また日本の家電業界も意思決定で過ちを犯したため、全体的に不振に陥った。

「モノづくりの成功体験が非常に強かったため、日本企業は良いものを作れば必ず売れると信じていた。しかしコモディティ製品の市場変化は非常に激しく、後発のサムスンが市場ニーズをどんどん汲み取り、安価で、比較的品質の良い製品を出してきた。それをたとえばシャープは脅威と感じなかった。」

 内部状況を把握していなかったこと、外部環境を把握できなかったことが、ビジネスに取り返すことが非常に困難な大きなダメージを与えたということである。

外部環境と内部状況を把握して正しい分析を行う

 次に志賀氏は、軍事戦略と経営戦略の融合を果たしたロバート・マクナマラの戦略モデルを紹介した。本モデルは、“敵を知り、己を知れば、百戦危うからず”という孫子の兵法をベースにしたもので、まず敵(=外部環境)を知って環境予測を行い、己(=内部状況)を知って情勢判断を行い、現在の課題を検討する。そしていくつかの案をシミュレーションして、最終的に戦略を決定するというものだ。

画像
ロバート・マクナマラの戦略モデル
(出典:ガートナー)


「つまり意思決定にはいつの時代も、外部環境の把握と内部状況の把握がなければ始まらないということ。これに加えて、勝敗の帰趨を決める意思決定にはもう1つ、バイアスがかかっていない“正しい分析”が必要となる。」

 だがこれは非常に難しい。組織の力関係やしがらみ、過去の成功体験などによって、事実に基づいた正しい意思決定が妨げられるケースが非常に多いからだ。正しい意思決定を企業内で作り上げていくことは簡単なことではない。

「しかし現在ではITの進歩によってこれまでにないような大量データを蓄積し、高度な分析技術を加えることによって、事実に基づいた正しい意思決定が徐々に可能になりつつある。これを我々は、イノベイティブな意思決定と位置付けている。」

 ガートナーではイノベイティブな意思決定を、“これまでできなかったことをできるようにした意思決定手法であり、社会的に大きな影響を与えるもの。ITによって多面的な情報で効果的な判断材料を提供し、再利用するもの”と定義する。

 このイノベイティブな意思決定を実現するためのテクノロジが、ガートナーがNexusと呼ぶ4つの“破壊的なITの力”だ。各々、ソーシャル、モバイル、クラウド、インフォメーションである。

「この4つの力のうち、2つ以上結び付けることで、テクノロジやビジネス、あるいは市場や人々の生活において新しい成果を創出することが可能となる。」

【次ページ】正しい分析にはコラボレーション型意思決定(CDM)が必要

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