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  • 2018/08/28

楽天 森正弥氏が解説、「コンサル」が広告業界地図を塗り替える仕組み

CCSE2018レポート

これまで「閉じたもの」という印象が強かった企業の研究所。学会誌やカンファレンスへの論文投稿を推奨する企業も多いが、それだけではなく、一般向けに公開された発表カンファレンスの開催という動きがある。企業の研究所に今何が起きているのか。楽天やサイバーエージェントなど、企業研究所を持つ企業が企画し開催された研究発表カンファレンス CCSE2018にて、楽天 執行役員、楽天技術研究所代表 森正弥氏が基調講演に登場。企業研究の試みを語った。

フリーライター/エディター 大内孝子

フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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CCSE(Conference on Computer Science for Enterprise) 2018

企業が“研究”する意味

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 7月1日、明治大学中野キャンパスで行われたCCSE 2018は「Conference on Computer Science for Enterprise」、企業の研究所による合同研究発表会だ。

 楽天、サイバーエージェント、Unity Technologies Japan 、メルカリ、スタートトゥデイテクノロジーズ、アイ・オー・データ機器、Cookpad TV、Cygames、ABEJAの9社が登壇し、自社の研究機関、そして研究内容について発表した。

 エンジニアに対し自社のテクノロジーを紹介するイベントは数多い。あるいは、カテゴリー分けした関連の技術を持つ数社が最新技術動向を発表するという形もある。しかし、今回のCCSEは「企業研究所による合同の発表会」というのが軸。そのため、機械学習からVR(仮想現実)、対話エージェント、画像認識、デジタルサイネージと、さまざまな分野が集まることになった。

 企業研究活動の動きの中で、技術の位置づけが変わってきている。今の最新技術は従来の要素技術に対し、比較的ビジネスに近い。

 また、最近のビジネスの在り様からして、最終の製品、サービスは1つの技術だけで成立することは少ない。一社が抱えている技術だけでプロダクトが完結することは少なく、多様な新旧の技術の複合体が必要になる。

 IT業界などでは、技術研究所やそれに類した施設を設置したり、大学のラボや他企業との共同研究などの交流も盛んだが、背景にあるのはそうした「コラボレーションの必要性」だ。時代は共創を謳い、流れを促進している。こうした合同研究発表会のような企画も、もちろんコラボレーションの流れにある。

 最近オープンになってきたとはいえ、企業の研究所の成果はその分野の外にいる一般の人や学生にはなかなか届かない。専門の外にいると何をやっているかわからないし、一般公開のオープンラボや展示会などが開催されていることもあるが、1社だけではなかなか難しい。だからこそ、今回のような合同研究発表会が必要になるのだ。

就職で「研究」が途切れてしまって良いのか?

 企業と技術、そしてそれを取り巻く人や社会が変わってきている。企業は目先の利益を求めるだけではなく、未来への準備を始めなければいけないという意識が浸透してきている。

 今回、運営委員長を務めたサイバーエージェントの岩本拓也氏は、企業の研究所が大学生や大学院生の卒業後の進路、その受け皿になり得るのだという点を示したかったという。

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サイバーエージェント 岩本拓也氏

「大学時代は研究室で学会に参加していても、卒業後、企業に就職すると、そこで途切れてしまう。多くの企業が研究活動を積極的に行っており、自身の研究や経験が活きることもあるということがあまり知られていないという問題意識があった」(岩本氏)

 技術研究に携わる人口が増加することは、社会的意義も大きい。今までにないものを生み出すための母数は多いほうがいいし、多様であることは必須だ。企業にいて技術研究を担う若手社員が集まり、企業研究所による研究発表カンファレンスが行われたのは、必然的な時代の流れといえる。

 以降では、森氏による基調講演から楽天技術研究所における技術開発とビジネスの関りを見ていく。

楽天の試み、「リアルな店舗でのリモート接客」

楽天技術研究所では、ロボティクス、ドローン、無人船から、ネットワーク最適化、分散コンピューティング、NLPや深層学習、機械翻訳やコンピュータビジョンやAR/VR/MRなど、非常に幅広い、多彩な研究プロジェクトを行っている。そのうちの、HCIの分野においては、オープンコラボレーションを意識し、楽天市場に入っているお店などにも参加してもらう形で、さまざまなビジネスの企画を進めている。

 楽天技術研究所の森正弥氏は「トップを走っているお客さまはビジョンとか発想が非常に柔軟で、ときとして学生や研究者、企画職よりも先を行っています。私たちは、こうした人たちとビジネスを一緒にやっていこうと考えています」と語った。

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楽天技術研究所 森正弥氏

 同氏が紹介した1つの試みが、2017年10月に行われた雑誌『FUDGE』主催のイベントに出展した未来のスタイリングルームだ。これは、楽天市場店舗の「イーザッカマニアストアーズ」と筑波大学デザイン研究室と共同で制作した、リモートでの接客の未来を考えるものだ。

 もともと、楽天技術研究所ではHCI分野において先行研究として「デジタルサイネージの未来はどうなっていくか」という課題に取り組んできた。その中で、彼らが到達した結論は「デジタルサイネージ単体だけではサービスは完結しない」ということだった。

 これまで、デジタルサイネージとスマートフォンを連携させるさまざまなアプリケーションやサービスを出してきた。たとえば、楽天イーグルスの本拠地のスタジアムにおいて、巨大なオーロラビジョンと観客3万人のスマートフォンをつなぐ観客参加型のゲーム「ダイナミック ボートレース イニング」。イニング間に行われる仮想のボートレースゲームで、スマートフォンを連打することで応援する選手のボートがスピードアップするというもの。これは、現在も稼働中で、毎ゲーム実施されている。

 近未来スタイリングルームは、さらに筑波大学で感性工学を学ぶ学生たちのアイデアをプラスすることで、近未来の接客、リモートの接客のデザインを形にした。

 リアルな店舗での購買コンバージョンに関し、最も重要な要素は接客だ。特にファッションにおいてはコーディネート。手にしている、あるいは試着しているスカートやパンツに、どんなトップスが合うのか、着こなしのアレンジなど、ファッションコーディネートを通してコミュニケーションを取る。どうアドバイスすれば購入してもらえるのか、非常に重要なポイントだ。

 技術を使ってリアル店舗の接客を変えようとすると、接客スタッフを廃する形になることが多い。気に入った服を手に取ると、ディスプレイにスタイリングサンプルが表示されるものであったり、色違い、トップス違いが鏡に表示されるというものであったり。

 しかし、楽天技術研究所とイーザッカマニアストアーズ、そして筑波大学のプロジェクトでは人が人に接客をするというベースを変えずに、それを未来型にデザインした。

 身長や体型に合わせた服をデジタルサイネージ上で試着し、背後では接客スタッフがコーディネートをアドバイスする。おもしろいのが、このときスタッフの素の声をそのまま流すのではなく、ボイスチェンジャーで変化させた音声で応答しているところだ。この音声のチェンジについては、感性工学における研究知見をベースにしているという。

【次ページ】グローバリティでコンサル企業が広告業界に流れ込む事態に

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