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2018年01月26日

「女性活躍」は男の「上がってこいよ、がんばれ」でしかない

「女性活用」という言葉が掲げられ、それがいつの間にやら「女性活躍」という言葉に取って代わられてきている。その一方で、昨年10月から米国で注目されている#metooが日本国内でも注目されるなど、「女性」と「労働」と「女性と一緒に働く人々」の関係性がさまざまな角度から見直され始めている。ノンフィクションライターの中村淳彦氏、著述家の北条かや氏、特定非営利活動法人「BONDプロジェクト」代表 橘ジュン氏、評論家、リプロエージェント代表取締役社長でパリテパートナーズ代表理事 勝部元気氏が、それぞれの立場から日本国内の「女性活躍」の本当の意味を考える。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子


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セッションのパネリストたち。左から橘ジュン氏(特定非営利活動法人「BONDプロジェクト」代表)、勝部元気氏(評論家)中村淳彦氏(ノンフィクションライター)、北条かや氏(著述家)

行き場を失う少女たち

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 「女性が活躍できる社会」といつから言われ出したのだろうか。その記憶もないくらい、ありふれた言葉になっていて、何も感じなくなっている。その理由は、身のまわりに顕著な変化が起こっていないからだ。どこかで何かは起こっているのかもしれないが、自分のまわりにはない。

 現代を生きている誰もが、何らかの生きづらさを感じている。個々人が感じる生きづらさや具体的な理由、背景は異なるが、その大本は「現状でいいと何かをあきらめ、感情に蓋をする」ことではないか。

 2017年11月17日から3日間の日程で開催された「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017」の分科会では、「女性活躍の陰に隠れている問題」をテーマに、現在の若い女性を取り巻く社会の課題が多角的に語られた。

 登壇した中村氏、北条氏、橘氏、勝部氏は、家庭のトラブルから家を出るためにJKビジネスや風俗の世界に入ってしまう若い女性の問題から議論を始めた。

 橘氏が向き合うのは、行き場のない若い女性たちである。彼女たちはトラブルを抱え、居場所を探して街に出る。橘氏自身、渋谷や新宿など夜の繁華街を歩き、困っている少女がいれば声をかけ、話を聞く。助けを求めてくる少女たちの受け皿として、NPO法人「BONDプロジェクト」を設立し、サポートを続けている。

 中村氏は、中3から高3といった未成年の少女たちが、親からの虐待といった家庭の事情で家にいられず、自分でお金を得るために夜の繁華街に立つことは、福祉行政のモレだと指摘する。

 中村氏は「子どもは家に帰るのと風俗、どっちもいやなんだけど、風俗のほうがマシかな、という判断をします。こうした状況はかなりまずいと思います」と現状を危惧している。

 街に出る少女たちには、風俗以外の居場所がない、と橘氏は指摘する。

「彼女たちには身体を大事にされなかった、モノのように扱われてきたという経験もある。親だけでなく、学校の先生だったり地域の人だったり、信頼できる大人との出会いが少なかった子たちなのかなと思います。それで、自分で何とか稼がなきゃって考える。(18歳未満だから)店で働けない子は街に立って、援助交際を繰り返す。本当に他にないのかなって思うんですが、そっち(風俗)側に行ってしまう。自己肯定感が低くて、自分なんてどうなってもいいって、そんないろいろな思いからだと思うんですが」(橘氏)

 こうした問題に対し、公的な支援が絶対に必要という意見もある。

「たとえば、新宿や渋谷に常時200人程度収容できる施設を作るといった意見です。でも、彼女たちはそこで保護されたいとは思わないと考えます」(中村氏)

 橘氏は、「銭湯」に可能性を見出しているという。

「私が考える銭湯は、お風呂に入って身体を温めたり、仮眠できたりする場所です。そうして、徐々に『何か疲れたな』とか『やっぱり、(援助交際なんか)やりたくないな』って自分で思ってくれるのが自然だと思います。行政担当者でもカウンセラーでもいいし、相談できる人につなぐのは次のステップでいいと思っています。まず彼女たちが来たくなるような場所を作ることが大事なんです」(橘氏)

 とはいえ、行政の担当者が困っている少女たちと対話することはできるのだろうか。

「彼女たちと会話する役目は私たちでもいい。橋渡しできればいいんです。事情を聞いて、必要な(支援策を持っている)人につなぐことができればいいので。そこから自立して生き抜いていく方法を見つけれるよう、みんなで支えられたらいいのかなと思います」(橘氏)

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橘氏自身、荒れていた少女時代に話を聞いてくれる人に出会ったことが人生を変えるきっかけだったという


 北条氏は、少女たちの自己肯定感の低さ、苦しい気持ちを誰にも吐き出せない辛さが、夜の街に行ってしまう背景だと指摘する。何でもいいから「自分を承認するもの」を求めて街に出る。そこにあるのは、少女の「性」と「若さ」を「価値」として承認する風俗の世界だ。

 橘氏の活動に対し、「そんなことをして何になるの?」「そうやって1人ひとり助けていって何人が救われるの」という否定的な見方をする人も少なくない。さらに、人が人を救うことができるのかという議論もある。実際、橘氏も(風俗の世界で生きていくかどうかは)最終的には少女自身が決断することだとする。

 しかし、著しく自己肯定感が低い状態では自分の決断を信じる強さを持てない。「寄り添って話を聞くこと」で、彼女たちは自己を肯定し、決断する覚悟を持てるのではないだろうか。

女性の生きづらさの議論に「男性の自尊心のお守り」は必要か

 北条氏は「女性の生きづらさ」といったとき、その一面だけを「もやっと見ている」人が多いと指摘する。事前のミーティングでも、女性の生きづらさの背景に男性の生きづらさもあるのではないかとする議論があり、「なぜ、女性の生きづらさを議論するのに、わざわざ男性の自尊心のお守りをしないといけないのかと思った」という。

 これには勝部氏も同意するが、同時に勝部氏は生きづらさの質に言及する。あくまで個人的な感覚だとしながらも、「男性の生きづらさのほうが自己対処しやすい。自分でしっかり対処することによって、生きづらさから離脱できる可能性が大きい」と指摘し、以下のようにコメントした。

「たとえば、毎日働かなきゃいけない、嫌な上司にもペコペコしなきゃいけないとよく言いますけど、そういう場合は会社を辞めればいい。なぜ辞められないかというと家族を養っているから。じゃあ、妻にも働いてもらえばいい。でも残念ながら、(妻が一家を代表して家族を養うことを肯定するような)そういう関係性を作ってこなかった。本人はもちろん意識していないかもしれないけれど、日本の結婚、男尊女卑型のシステムに無意識の上に入り込んでしまっている。ただし、そうした社会のシステムに抵抗することは可能でしょう。自分はパートナーのことを支配もしないし、お互いが経済的に自立しよう、もし自分が働けなくなったら代わりにサポートしてほしいし、自分も相手の支えになるという関係を築くことで、(男性は生きづらさから)逃げられると思うんです」(勝部氏)

 一方、女性は男性からの加虐的な行動に対して基本的に受け身になってしまう。女性が自らの生きづらさを解消したからといっても、性暴力被害はなくならない。女性のほうが逃げにくい傾向にある。女性の場合、自分さえ変われば何とかなるという状況ではないのだ。この点について北条氏と勝部氏は、次のように議論する。

「私がこの『生きづらさ』というテーマで呼ばれたのは、昨年自殺未遂をしたからだと思います。そのとき、性的に侮辱する言葉をかなり浴びました。それ以前にもありましたが、(私を攻撃してくる人たちは)『性的に侮辱するとダメージが強いだろう』と考えていると感じました。そのときに、『女性は受け身である』ことを強く感じました。女性である以上、女性性からは逃れられない。自分ではどうにもできないことです」(北条氏)

「女性が(自身の)生きづらさを語っても、男性側には『自分も生きづらいのに』という被害者意識がある。だから『そんなの取り合っていられない』となります。ネット上でも『日本は男性差別社会だ』『女尊男卑社会だ』という発言が散見されます。その理由は、映画館などのレディースデイや女性専用車両の存在です。見栄えがよいとされる女性が社会の中でちやほやされる傾向にあるというのは事実かもしれないですけど、女性全員がそうされているわけではないですよね。でも、それを女性全体が優遇されていて、自分たち男性は阻害されていると感じて、『日本は男性差別国家なんだ』となってしまう傾向にあるとは思いますね」(勝部氏)

【次ページ】属性でしか他者を認められない社会に

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