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  • 2016/01/25 掲載

象印マホービンがインバウンド需要に乗れた理由 最高益の秘密と爆買い収束後の戦略は

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日本のインバウンド需要を説明する重要キーワードである「爆買い」。この爆買いにおいて中国人観光客が大量に買ったものの中には、炊飯器と魔法瓶があった。炊飯器や魔法瓶などの調理用家電を主力とする象印マホービンは爆買いの影響を受けて3年ぶりに最高益を更新し、株価も急騰した。国内の家電市場は頭打ちとされていたが、状況は一変したのである。決算発表のあった象印マホービンの業績推移を解説しつつ、爆買いの影響や競合メーカーの動向、今後の課題にも触れていく。
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爆買い需要で象印マホービンが最高益を更新

外国人観光客による爆買いの影響で象印マホービンが好調

 日本における生活家電業界の市場規模は、2014年度の日本電機工業会の発表によれば、2兆1,134億円(出荷金額ベース)となっている。前年度比で13%減の数値だが、これは2014年4月に消費税が5%から8%へと引き上げられたことによって、増税前の駆け込み需要の反動を受けての数値だ。

 しかし、2015年度の市場規模は回復が見込まれている。回復の理由はいくつかあり、一つは消費税増税の影響が薄れつつあること、そしてもう一つは外国人客の爆買いの影響だ。特に、後者の影響は大きい。生活家電の市場は成熟市場であり大きな成長は見込めないとされていたにも関わらず持ち直したことを考えると、爆買いの影響をうかがい知ることができる。

 2015年ユーキャン新語・流行語大賞にも選出された爆買いという用語。爆買いは外国人観光客が日本国内で大量に商品を購入することに対して用いられる言葉だが、外国人とはいっても主に中国人観光客を指して用いられる。

 このような大量購入という行為自体は2014年頃には定着していたが、特に「爆買い」という表現が用いられるようになったのは2015年2月の春節休暇(中国で最も重要な祝祭日であり、一般に一週間程度の長期休暇となる)からであり、多くの日本メディアが取り上げたことによる。2015年の中国人観光客は45万人を超え、1,140億円もの消費を記録したから驚きだ。

 爆買いが起こる理由はさまざまだが、「元高と円安」、「日本製品への高い信頼の高さ」、「中国の税制」などが挙げられる。

 日本製品に高い信頼が寄せられているのは中国に限ったことではないが、3つめの「中国の税制」による影響は大きいであろう。現在の中国の税制では、日本製品を中国国内で買うよりも、日本へ旅行して買ったものを持ち帰った方がかなり安くなるのだ。これと関連して、中国人特有の大家族主義から、日本に旅行した中国人がたくさんの家電製品を買い、親族に配ることも影響しているようだ。このほか、転売目的で大量に購入していく人もいる。

 このように、観光客による爆買いが家電市場に影響を与えているが、具体的にはどのような影響が出ているのだろうか。先日決算を発表した象印マホービンの業績推移が影響の大きさを示唆している。

象印マホービンの純利益推移と爆買いの影響

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 象印マホービンは1948年に設立され、1986年に上場した歴史ある企業である。日本の家電メーカーは大手・中小を問わず色々な家電を開発しているが、象印マホービンは調理用家電やリビング用品を専業で作っている。

 特に、社名にもある通り魔法瓶の性能がトップクラスであるほか、炊飯ジャーへの取り組みも業界トップクラスである。今では当たり前である保温機能を備えた炊飯器を最初に開発したのは象印マホービンであることからも、そのことが分かる。その他、電気ポットやホットプレートにも強みがある。

 爆買いの対象となるのは主に4つの商品だ。「炊飯器」「魔法瓶」「温水洗浄便座」「セラミック包丁」、これらは中国人観光客はからは「四宝」と呼ばれている。そのため、象印マホービンの製品も爆買いの対象となり、爆買いが業績に与える影響は非常に大きかったというわけだ。

 象印マホービンの純利益の推移を見てみると、その影響の程が分かる。2012年度は約40億円、2013年度は約16億円、2014年度は約37億円、2015年度は約63億円となっている。2013年度は前年比で60.7%減となったわけであるが、これは大幅な円安によって海外生産品の原価が上昇したこと、国内で販売競争が激化したことによる販売価格の下落などによるものだ。大幅に利益を落としたが、その後2014年、2015年と順調に盛り返し、2015年度は3年ぶりに最高益(前年比67.9%増)を達することとなった。

画像
象印マホービン 当期純利益推移
(出典:決算発表資料から作成)


【次ページ】爆買いピークは過ぎた? 象印の競合と戦略に迫る

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