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  • 2016/04/06 掲載

日本郵政×ファミリーマート提携の背景 セブン・ローソン・ミニストップではダメな理由

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国内最大のユニバーサルサービスを提供する日本郵政グループと、国内コンビニエンスストア(コンビニ)業界第3位のファミリーマートは5日、訪日外国人のインバウンド需要に対応する業務提携に合意したことを発表した。両社は会見の中で「エクスクルーシブ(排他的)な提携ではない」という点を強調していたが、実際のところ必然の提携といえる。なぜ日本郵政はセブン-イレブンやローソン、ミニストップではなく、ファミリーマートとの提携強化を選んだのか。
(執筆:編集部 時田 信太朗)

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日本郵政とファミリーマートが提携強化した背景とは

日本郵政とファミリーマート、提携強化の背景

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ファミリーマート
代表取締役社長
中山 勇氏
 コンビニ業界は、成長の第三段階に入った――。ファミリーマート 代表取締役社長 中山 勇氏は、提携発表の記者会見でこのように語った。成長フェーズの第一段階は、70年代にコンビニが生まれた時期、第二段階は、サービス・物販が高度化され、社会的にコンビニが認知された時期。そして第三段階は、消費者のライフスタイルが変化し、多様になっているまさに今の時期である。

 こうした中でファミリーマートと日本郵政は5日、業務提携についての基本合意書を締結した。今回の基本合意にある提携内容は、ファミリーマート店舗に預けた荷物を海外店舗に配送できる「越境eコマースサービス」、宅配ロッカー「はこぽす」や、コンビニ用に開発した「小型ゆうちょATM」の店舗設置拡大など。いずれも、年間2000万人以上といわれる訪日外国人のインバウンド需要に対応するものだ。

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日本郵政
取締役

代表執行役社長
長門 正貢氏
 中山氏は「日本郵政グループは全国でユニバーサルサービスを展開している。国内のリアル店舗ナンバーワンの会社と組むことで、真の生活インフラが構築できるのではと思っている」とし、一方の日本郵政 取締役 兼 代表執行役社長 長門 正貢氏も「(ファミリーマートとは)これまでも提携を続けてきたが、一段階高い提携関係に格上げし、相互に企業価値を高めたい」と抱負を語った。

 今回の提携について、両社は会見の中で「エクスクルーシブ(排他的)な提携ではない」という点を強調していた。しかし実際のところ、日本郵政グループがファミリーマートと提携するのは必然の流れといえる。

ATM運営会社をグループ内に持つセブン、ローソン、ミニストップ

 その理由のひとつが、「ATM事業」の関係である。まずセブン-イレブンとミニストップは、ATM設置に関して日本郵政(ゆうちょ銀行)と提携するとは考えにくい。それぞれグループ内にセブン銀行とイオン銀行を持ち、自社で金融サービスを展開しているためだ。

【大手コンビニのATM運営会社】
ファミリーマートゆうちょ銀行
/イーネット
他社
(イーネットは共同出資)
セブン-イレブンセブン銀行自社
ローソンLANs
(ローソン・エイティエム・ネットワークス)
自社
ミニストップイオン銀行自社

 また、ローソンは銀行は持っていないものの、グループ企業のローソン・エイティエム・ネットワークス(LANs)がATM事業を運営している。また、昨年11月には銀行参入を検討しているとメディアで報じられるなど銀行業進出に前向きな姿勢を見せている。

 一方でファミリーマートは、自社グループに銀行もATM運営会社も保有せず、コンビニATM運営会社「イーネット」のATMを店舗に設置してきた。ファミリーマートはイーネットに出資しているが、メガバンクや地方銀行、コンビニチェーンなど共同出資する計68社(2016年1月現在)のうち1社に過ぎない。

 また、ファミリーマートは2010年3月にam/pmを買収しているが、その後の2014年11月、当時am/pm店舗に導入されていた三井住友銀行のATM「アットバンク」の契約が満了になった際、これらをゆうちょATMへリプレースしている実績もある。ATM事業を自社で持たず、他のコンビニチェーンと比べてATMをリプレースしやすいのがファミリーマートだったというわけである。

ファミリーマートにとって悩ましい? 「複数社ATMの共存」

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 前述の通り、ゆうちょATMは2014年から都市部のファミリーマート500店舗に導入されている。この取り組み結果について、中山氏は「(ファミリーマート店舗に置かれているATMの)トランザクションをつぶさに分析したところ、ゆうちょATMの稼働状況は非常に良い」と語り、顧客にゆうちょATMが受け入れられていることを強調した。

 ファミリーマートにとって悩ましいのは、既存のATMとの共存を考えねばならない点である。会見では、これまで出資してきたイーネットのATMも並列で運用していくと説明された。しかし、2016年9月にファミリーマートと経営統合するサークルKサンクスは、ファミリーマートと同じくイーネットのATMが設置されている店舗と、サークルKサンクス全額出資の子会社であるゼロネットワークスのATMが設置されている店舗が混在している状況だ。

 ゆうちょ銀行 代表執行役社長 池田 憲人氏は会見の中で「イーネットは提携機関との共同(の企業)。地域銀行との連携をふまえると、イーネットを活用するメリットはある」としており、ATM事業に関して新たな方向性を見出すことにも言及した。いずれにしても、各社ATMとゆうちょATMの顧客基盤を活かしてシナジーを生み出せるか、あるいはどのようなバランスで店舗に設置していくかについては、各社で検討が必要だろう。

【次ページ】ゆうちょとセブン、訪日外国人向けサービスでしのぎを削る
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