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  • 2016/04/05 掲載

伏見匡矩がエイチで仕掛ける循環型社会 「ネットだけのビジネスは価値を生まない」

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エイチは、会議、教室、セミナーやオフ会、ノマドワークなど、ちょっとしたスペースのニーズに対応するシェアリングエコノミー型サービスだ。代表取締役 伏見 匡矩氏は、P&Gでのマーケティングや商品企画のキャリアとヒット商品の実績に加え、いくつかのベンチャービジネスの立ち上げでも実績を上げているシリアルアントレプレナーだ。伏見氏はなぜシェアリングエコノミーを始めたのか? その背景にある循環型社会への意識と共に、エイチのビジネスモデルや戦略について話を伺った。
(聞き手/構成:編集部 中島 正頼)

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エイチ 代表取締役社長
伏見 匡矩氏

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2006年、P&G Japan マーケティング本部へ入社し、シンガポールアジア本社で1年ほど出向。2011年、リクルートから10億円の出資を受けエモーチオを設立、取締役就任。2013年、ベビー用品レンタルショップのココロイロを設立、代表取締役社長に就任。2015年、エイチを設立し空きスペースのレンタルプラットフォーム事業に乗り出す。

会社情報
エイチ
設立: 2015年4月1日
従業員数: 11名(2016年4月現在)
資本金: 5,000,000円
所在地: 東京都中央区銀座7-5-4 毛利ビル2F
事業内容: 空きスペースを活用したスペース検索予約サイトの運営

シリアルアントレプレナー伏見氏の根本にあるもの

──まず、伏見さんの経歴、背景についてお伺いしたいと思います。エイチだけでなく、多くのベンチャーの起業や経営にかかわっておられますね。

伏見氏:早稲田大学を卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)にマーケティングとして入社しました。『ハーバルエッセンス』というヘアケア製品の日本でのリローンチを担当したこともあります。

 その後、シンガポールアジア本社での勤務を経て、2011年に帰国しました。帰国後は外資の別の会社に就職し、女性向けの加圧ソックスの商品開発などをしていました。メディキュットという商品なんですが、今でも売れているようです。このときに、友人に頼まれて、リクルートの社内起業コンテストに応募する新規事業プロジェクトを手伝っていました。

──リクルートの社内起業コンテストを手伝ったのは、やはり当時から新規事業に興味をお持ちだったのでしょうか?

伏見氏:はい、事業を作るのは好きだったので、ソックスの会社の仕事の傍ら協力していました。これがグランプリを獲得し、10億円の出資が決まりました。それで設立されたのがエモーチオで、そのまま取締役に就任しました。

 エモーチオは、口コミをベースとした書籍・音楽・映画・ゲームのランキング型キュレーションサイトです。その後、2013年にはココロイロというベビー用品のレンタルビジネスを始め、2015年にスペースをシェアするビジネスプラットフォームであるエイチを設立しました。

──ヘアケア製品から加圧ソックス、キュレーションサイト、ベビー用品と扱ってきた製品も幅広く、ジョインした企業規模もさまざまですね。こうした多種多様な選択の根底にあるものはなんでしょうか。

伏見氏:おおざっぱに言うと、体制への反骨というのでしょうか。もともと資本主義の中でモノやサービスを作ってトップをとるぞ、というより、その端っこでそれを壊すようなことを考えていました。ココロイロでもそうでしたが、大規模なメーカーが勝つのではなく、商品の循環というものをぶつけてみる。作って消費するだけではない「循環型の社会」、そういうビジネスで世界を変えたいと思っています。

──伏見さんの言う循環型の社会について、もう少し詳しく教えていただけますか?

伏見氏:現状を乱暴にまとめてしまえば、グローバル経済と呼ばれるアメリカや中国等の大国が経済を牛耳っている社会といえますが、それが環境問題や少子化等さまざまな問題を生む一因となっています。しかし、このような資本金融主義、国家やグローバルという考え方の限界がくるとしたら、今後は、もっと「個人がエンパワーされる共有経済」を目指すべきではないでしょうか?

 とくに、日本の置かれている立場を考えると、従来型の資本経済だけに依存するより、EUなどが目指している経済圏を考えるべきではないかと思います。人口が減っていく中で、何かを作り続け、消費し続ける経済はおそらく回っていかないし、むしろ循環型社会を作りあげることが、日本の役割なんだろうと感じています。

ネットだけのビジネスは価値を生まない

──そうした伏見さんの課題感の中で、新規事業のエイチが生まれたということですね。では、エイチの具体的なビジネスについて、教えてください。

伏見氏:レンタルスペース・コワーキング・貸し会議室・レンタルオフィス・スタジオ・キッチンスペースなどを地図から検索でき、簡単に予約までできるWebサービスです。

 事業ドメインという意味では、大は「あらゆるスペース」、ということになります。中は「空いているスペース」、小はWi-Fiエリア、電源のタップなど「個人のスペース」といった分類ができると思います。その中で、エイチは主にコンシューマー向けのスペースを循環させることを考えています。今の例でいえば中と小ですね。ノマドワーカーだったり個人のグループだったり。法人向けの大会議室、イベントホールなどは狙っているビジネスとはちょっと違いますね。

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PCやスマホから1分で簡単・気軽にスペースを予約できる「エイチ」

──そのドメインにニーズがあると感じているのだと思いますが、「スペースマッチング」市場をどのように見ていますか。

伏見氏:私はスペースというものをリアルなものと捉えています。モノ、スペース(空間)、ヒト、時間、これらを循環させることで価値が生まれると思っているので、ネットだけで完結するものではありません。極論すれば、ネットだけの活動では価値は生まれないと思っています。

 たとえば、クラウドワーキングなどネット上でマッチングさせるだけでは、単価も安く、クオリティも確保できない。これでは結局、誰も幸せになっていません。スペースはリアルな空間なので、モノと同じように所有しなくてもシェアできたり、レンタルできたりします。家や会社といった空間は固定的なもので、所有するメリットがありますが、それ以外の非日常の空間、イベントだったり会議だったり、バーベキューの場所だったりは、所有する必要はありません。だからこそ、スペースをマッチングできるのです。

【次ページ】 「あそこにスタバがあったな」という感覚でサービスを使ってもらうために、エイチが狙う「本当のターゲット」

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