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  • 2016/05/31

eSIMとは何か? 標準化が進む「次世代SIM」の基本、IoT/M2MやeCallで爆発的普及か

SIMの進化が著しい今、標準化および実用化が進んでいるのが、「eSIM(イーシム:Embedded SIM)」だ。現在のSIMは、通信事業者を切り替えるためには物理的な差し替えが必要だが、組み込み型のeSIMではリモートから通信事業者の情報を変更できる。Apple Watch Series 3でも採用されたeSIMは今後、IoTやM2Mを加速する重要なテクノロジーとして大きく注目されることになりそうだ。今回は、そのeSIMについて、仕組みや標準化の進捗、現在の状況などを見ていこう(2017年9月20日一部更新)。

フリーライター/エディター 大内孝子/編集:編集部 松尾慎司/監修協力:ジェムアルト 蔦田剛士

フリーライター/エディター 大内孝子/編集:編集部 松尾慎司/監修協力:ジェムアルト 蔦田剛士

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VodafoneのeSIMカード
(出典:Vodafone Medien/Flickr



SIMの進化系「eSIM」とは

 スマートフォンをはじめ、通信機能を持つ携帯端末には、小型のICカードが内蔵され、契約者情報を特定し通信を行う。この小型のICカードが、いわゆる「SIM(Subscriber Identity Module)」だ。日本でSIMカードは通信事業者が管理するよう定められており、デバイスメーカーや一般消費者には貸与という形で渡されている。

 基本的にSIMはデバイスに同梱されて提供されるため、通信事業者を切り替えるにはSIMカードを入れ替える必要がある。

 こうした携帯端末における通信の仕組みがIoT(Internet of Things)市場の成長を阻害している、とは言いすぎだが、実際この仕組みでは、あらゆるデバイス(自動車、農業機器、重機、スマートメーター、ウェアラブルデバイス、ヘルスケアデバイスなど)に通信機能を持たせようとしたとき、不都合が生じる。

 そこで注目を集めているのがeSIMだ。eSIMであれば、物理的な入れ替えなしにリモート操作で通信事業者を切り替えることができる。

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SIMロック、SIMフリー、eSIMの比較

 IoTはデバイスとサービスがつながる世界だが、その中心には人間がいる。一方、デバイスとデバイスが人間を介さず、自律的に通信を行うのがM2M(Machine to Machine)、マシン間通信とも呼ばれる(※IoT-GSIによればM2MはIoTのサブセット)。

 Smart Insightsによる予測では、eSIM対応の携帯電話の売り上げ台数は2020年までに3億4600万台から8億6400万台にのぼるとされ、携帯電話以外にも自動車、ウェアラブル・ヘルスケアデバイス、スマートメーター、セキュリティモニタなどあらゆる機器、あらゆる分野に拡大され、将来的には500億台がつながる世界が来るとも言われている。

 eSIMのほか、Apple SIM、バーチャル(ソフト)SIM、いまさまざまにSIMが進化しようとしているのも、こうした時代の流れが背景になっている。

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SIMの分類表。eSIMとは、デバイス出荷時にeUICC(SIM実行環境)が埋め込まれたものを指す

eSIMの運用イメージ

 eSIMの運用は基本的に、デバイスに搭載されたeSIM本体と、契約者情報の管理、動的な書き換えなどを行うオンデマンドサーバによって構成される。

 このとき、オンデマンドサーバ上で通信事業者の情報を取りまとめるのがサブスクリプションマネージャだ。eSIM内にはサブスクリプションマネージャへの接続情報が入っており、デバイスの電源が投入されたら、まず最初にサブスクリプションマネージャに接続する。そして、eSIM内にサブスクリプションマネージャから契約事業者のプロファイルをダウンロードし、契約事業者に接続する。

 その後は、たとえば契約事業者の領域を超えれば、サブスクリプションマネージャを経由し、現地の使用可能なプロファイルに切り替えるというように、サブスクリプションマネージャにより複数のサブスクリプションを管理するという仕組みだ。

 地域ごとのSIMを入れ替えるという現行の仕組みでは、多種のデバイスに多種のキャリアにひもづくプロファイルが必要になる。複雑化するサプライチェーンは、つまりは高コストにつながっている。

 eSIMは、現行のこうした仕組みの不具合を解消し得る技術だ。オンデマンドサーバ、サブスクリプションマネージャを用いるので、通信事業者を切り替える一連の流れを簡素化、低コストし、高い利便性を得ることができる。たとえば、自動車の場合のメリットが想像しやすいだろう。国境を、あるいは、地域を超えるたびに通信事業者の切り替えを手動で行うのは、効率的ではない。eSIMであれば、サーバとの通信により自動的に書き換わるので、エンドユーザーは意識せずにシームレスに通信を継続して利用できる。

eSIMのメリットとは?

 もう少し突っ込んで考えてみよう。eSIMによって、具体的にだれがどんなメリットを得られるのだろうか? ここで上げられる利点は、マーケットの拡大をドライブする要素でもある。

 一番わかりやすのは製造業だ。製品(サービス)を国内のみに展開するのであれば、何の問題もないかもしれない。ただ現状のままでは、グローバルな展開を考えたとき、国ごと、地域ごとに使用可能な通信事業者に合わせ、個別にカスタム製造しなければならず、1つの生産ライン上で製造を完了できない。

 たとえば、コンシューマデバイスを日本と中国で作って世界中で販売するとき、そこに通信機能が載る場合、国・地域ごとに使用可能な周波数帯域(バンド数)が異なるため、通信モジュールもSIMも個別に載せて出荷しなければならない。

 地域ごとにカスタム製造となり、手間もコストもかなりかかる。しかし、リモートから通信事業者の情報を変更できるeSIMであれば、ハードウェア的には同じモジュールを使った組み込み型なので、1つの拠点で製造を完了できる。

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NTTドコモのeSIMを活用した利用イメージ


 つまり、製造メーカーにとっては同じものを大量に作ることができ、コスト的なメリットになる。このメリット(=コスト削減)は、eSIMのマーケットをドライブする大きな要素だ。

 しかし、ネガティブなドライブ要素として無視できないのが「規制」だ。日本も海外もそうだが、通信事業者がネットワークとプロファイルとSIMを管理している。日本は総務省の管轄になり、敷かれた規制をベースに通信事業者が約款を作るという形だ。現状の約款がeSIMのビジネスモデルにはそぐわない。

 SIMは通信免許を持つ通信事業者が責任を持って管理するもので、デバイスメーカー側には貸与という形での供給だ。この部分をeSIMのビジネスモデルに変えた規制に変えていく必要がある。

 極論すると、eSIMの場合、通信事業者がSIMを調達してメーカーに提供する必要性がなくなり、デバイスメーカーが直接調達、直接エンドユーザーに提供できる可能性がある。通信事業者側が果たす役割は、純粋に「インフラ」となる。実は、このあたりがGSMAによる標準化がなかなか進まない理由と言えるだろう(標準化の状況については後述する)。

 そのほか、形状におけるメリットもある。eSIMは名前のとおり、デバイスに直接通信モジュールをチップとして埋め込むので、いわゆるSIMカード用のスロットは必要ない。その分、デバイスそのものをより薄く、小型化できる。かつ、SIMカード用のスロット分のスペースを確保しなくてよいため、より柔軟で、自由なプロダクトデザインも可能となるだろう。

eSIMの標準化と普及の現状

 eSIMは、現在、GSMA(GSM Association、携帯電話関連企業の業界団体)で標準化が進められている。大きくM2Mフェーズとコンシューマフェーズに分かれ、M2Mフェーズにおいて、技術仕様書も2013年12月から策定され、2016年4月にはv3.1が出る予定だ。ちなみに、M2M offer(オンデマンドのサブスクリプションマネージャ側)の仕様書はv3.0。

 M2Mフェーズに関しては標準化は進んでいるが、懸案はコンシューマフェーズだ。時計、ヘルスケア、タブレットなど製造側は将来的な市場への展開に向けて、かなりの勢いでeSIMの搭載の検証を実施し始めているという状況だ。しかし、通信事業者ら既存のビジネスモデルを崩しかねない部分であるため、標準化がなかなか進まないようだ。

 2015年12月にようやくPhase1が出たが、これは「ある一定の条件ならeSIMを入れていい」というもの。ある一定の条件が何かというと、既存の携帯端末をプライマリにして、セカンダリにウェアラブルや他のデバイスを使う場合だ。その場合に限って、セカンダリにeSIMが使用できる。プライマリを介して最初のホームプロファイルをダウンロードするというプロセスを経れば、あとは好きなようにネットワークを更新していいことになる。

 このPhase1を受け、MWC2016において、Samsungとジェムアルトにより、Samsung GearにジェムアルトのeSIMを搭載し、サブスクリプションマネージャからのリモートプロビジョニングのデモが行われている。

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Samsungの端末に搭載されたVodafoneのeSIM
(写真:Vodafone Medien/Flickr


 ちなみに、5月中にはPhase2が出る予定。これは、プライマリを経由しなくても個人情報が入っていなければeSIMを使える、など一歩進んだ形になる可能性もあるという。

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eSIM標準化の状況

eSIM普及の最大のトリガーは「eCall」

 さて、M2Mフェーズだが、技術仕様は標準化されており、2~3年以内には、自動走行と絡めて、まず自動車業界においてeSIM普及の波がくるとされる。

 そのトリガーとなるのは自動車の緊急通報機能だ。いわゆるeCall、自動車が衝突事故を起こしたときに自動で緊急通報センターに連絡する仕組みのこと。EUでは2018年4月以降にEU内で発売されるすべての新車にeCall機能の搭載が義務付けされた。ロシアでも、2016年のQ4から義務付けされることになった(ERA-GLONASS)。ロシア、EU諸国に自動車を売ろうとする企業は対応することになる。

 eSIMが搭載されたコネクティッドカーが世界中で普及すると、それをデバイスとしてさまざまなマルチメディアサービスが起こる。国をまたぐ、シームレスな接続サービスが低価格のプラン帯で、かつセキュアな通信(サーバとeSIMはH2Hでセキュリティが担保される)下で提供されるため、たとえばエンターテイメント、ストリーミングなどのコンテンツサービスが可能だろう(もちろん、緊急時にはeCallに切り替わる)。

 このような背景から、2019年、2020年には世界中でeSIMをベースにしたM2Mビジネスが立ち上がっていくと言われている。

eSIMの先にあるもの

 これまで述べてきたように、eSIMは製造メーカー、そのチップが搭載されたデバイスを製造する企業、デバイスを使うユーザーにとってコスト的なメリットが非常に大きい。標準化が整い、プレイヤーがそろった段階で、eSIMを搭載したデバイスは加速度的に伸びていくものと見られる。

 それ以外にも独自の方式で通信事業者の切り替えを行うSIMやソフトウェアのみで構成されるソフトSIM(バーチャルSIM)なども登場している。

 アップルがApple SIMをリリースし、GSMAの提唱する方式とは異なる独自の方式でSIM書き換えを行う。日本国内ではauがこれに対応し、海外の90の国と地域で、AT&T、Sprint、T-mobileなど主要な通信事業者のサービスに対応する。既存のビジネスモデルの枠に収まらない動きは、ますます拡大している。eSIMの動向から目を離せない状況が続きそうだ。

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