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  • 2017/02/27

LPWAとは何か? 「LoRa」「NB-IoT」「SIGFOX」を比較、いったい何が違うのか

IoT/M2Mが注目を集めて、サービスを展開する企業が増えるのに伴って、それを支えるネットワークインフラにも大きな変化が求められている。IoT/M2Mでは、従来のインターネット通信とは異なり、データサイズが小さいながら、高頻度に通信が行われ、さらにそのデバイスは低消費電力であることが求められるからだ。こうした要件を満たすための無線通信技術を「LPWA(Low Power Wide Area:エルピーダブリューエー)」と呼ぶ。ここではLPWAの基本的な概要と、注目すべき主要な規格「LoRa(LoRaWAN)」「NB-IoT」「SIGFOX」についてまとめて解説する。

フリーライター/エディター 大内孝子

フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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IoTの通信を支える「LPWA」にはさまざまな規格が入り乱れている

LPWAとは何か?既存の無線通信技術とは何が違うのか

 LPWA(Low Power=省電力、Wide Area=広域エリア)とは、その名前の通り、低消費電力で広い領域(キロメートル単位)を対象にできる無線通信技術のこと。

 無線通信規格にはさまざまな種類があり、無線LAN(いわゆるWi-Fi)、Bluetooth、Bluetooth Low Energy(Bluetooth 4.0に統合)、ZigBee、IrDA、RFIDと数多くの規格があるが、LPWAはそれらよりも広い範囲をカバーする。

 無線通信技術の比較にはさまざまな軸があるが、まず転送速度や通信可能な距離から考えてみよう。転送速度と通信距離から主な無線通信をマッピングすると以下の図のようになる。

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主な無線通信の通信距離と転送速度とを比べたときのLPWAの位置付け

 Wi-Fiの転送速度は最大およそ54Mbps(IEEE802.11a/11gの場合)と高速な通信が可能だが通信距離は100~300メートル程度、Bluetoothの転送速度は最大24Mbpsで通信距離は10~100メートル程度。一方のLPWAの場合、たとえばSIGFOXの転送速度は最大およそ100bpsだが、通信距離は最大50キロメートル程度となる。

 このようにLPWAは通信速度は遅いものの、低消費電力で広域通信が可能なことから、IoT(=すべてのモノがインターネットにつながる)やM2M(=デバイス同士がインターネット経由で通信する)に特化した活用ができると期待されている。

LPWAはなぜ「IoT/M2M向き」と言われるのか

 IoT、M2Mをサービスとして成立させる(それによりユーザーにベネフィットを感じてもらう)には、大量のセンサーからデータをクラウドに送信し、蓄積したデータを解析し、活用することが必要となる。

 その際の通信の特徴として、大量のデバイスとの通信が発生する一方、1つ1つのデータはごく小さなもので、そこまで高速な通信は必要ない。

 また、IoT/M2Mでは、スマートフォン以上にデバイスが小型化されていくが、そこで問題になるのは消費電力だ。少容量のバッテリーで長時間動作するというのが理想となる。

 つまり、効率的に通信処理を行い、いかに低消費電力に抑えた設計にするかが重要な要素になる。ご存知のように、Wi-Fiの消費電力は大きい。

 BLEの登場で一番のインパクトは低消費電力で動作可能なことだったが(機能や実装により異なってくるので一概には言えないが、ボタン電池1つで何ヶ月といった省電力性)、LPWAではさらにボタン電池で数年単位の動作を実現するという。

 ネットワークとして構成できるトポロジーの違いも大きい。それにより接続数や耐障害性、通信効率なども違ってくるわけで、こうした違いは、当然その上で展開するサービス(アプリ)の特性にもそのままつながる。

 インターネットをはじめ、現在主流の通信は「スター型」で、接続可能な最大数はWi-Fiで32個と少ない。こうした場合、一般にネットワーク機器を追加してネットワークを拡大する。そうした構成にはハード的なコストもかかるし、通信を制御する人的なコストもかかる。

 人が実際に使うサービスではクライアントとサーバの間でさまざまなリクエストが行き交うことになるので、こうしたコストがかかっても仕方がない。しかし、IoT/M2Mではエッジ側のデバイスからセンシングしたデータを一方的に送信できればいい。低コストでシンプルな仕組みがあればよく、一方IoTサービスの実装には、より多くのデバイスを接続できること、到達距離を延ばすことが必要であったり、年単位で電池交換せずに動作することが求められる。

 つまり、一口に通信インフラといっても、何を実現するかによって用いる技術は異なる。鶏が先か卵が先かではないが、モノやサービス側を開発するだけでは進まない。IoT/M2Mデータのやり取りに必要な通信インフラの開発も、IoT/M2M普及への両輪として重要だということだろう。

 そこで「低消費電力で、通信速度は高速でなくてもよいが、広域で通信できる」ような通信技術が求められ、企業や業界団体などがさまざまな規格を実用化に向けて開発が進んできた。そうした通信技術を「LPWA」と総称し、LPWA技術で構成されたネットワークを「LPWAネットワーク」と呼ぶ。

IoT/M2M市場に占めるLPWAの割合

 米シスコ社によれば、全世界のモバイルデバイスの数は2014年に73億、2015年には79億にまで達し、さらに2020年までに116億までに増加するという。ウェアラブルデバイスやスマートウォッチ、あるいはこれから登場するIoTデバイスの多くはスマートフォンやモバイルデバイスに紐づく使用シーンが想定されている。

 そして、車載GPSシステムや医療システムにつながるM2Mデバイスの数は2015年から2020年にかけて6億から32億とへ大きく増加すると予想している。予想ではあるが、2020年にはそれだけのデバイスが通信を行うことになる。

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モバイルデバイスの推移
(出典:『平成28年版 情報通信白書』図表2-1-1-3より)


 また、通信事業者のネットワーク回線に接続されるM2Mデバイスの割合は、2015年時点で世界で6億回線、2020年時点で31億回線に上るという。

 従来は主に2G/3Gネットワークへの接続であったのに対し、今後は4GネットワークやLPWAネットワークへの接続が急速に進むとされている。2020年時点でのM2M接続全体のうち4Gが34%、LPWAが28%を占めるとの予測だ。

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M2M接続数の推移
(出典:『平成28年版 情報通信白書』図表2-2-4-8より)


 こうした市場拡大の可能性から、各企業、団体が急速にLPWAへの取り組みを開始した。LPWAは大きく分けて、LTEや5Gの標準化を推進する3GPP(Third Generation Partnership Project)が取り組む認可周波数帯でのLPWA、いわゆる「セルラー系LPWA」と、IEEEおよび各アライアントがISM(Industry Science Medical:産業・科学・医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数)バンドを利用する「非セルラー系LPWA」に分けられる。

 つまり、携帯電話キャリアが認可を受けたその周波数帯域で携帯通信の技術でLPWAネットワークを構築するものと、免許が不要なISMバンドを用いてLPWAネットワークを構築するという2つのパターンで進んでいる。このあたりも規格が乱立する要因の1つだ。

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セルラー系LPWAと非セルラー系LPWAの違い
(出典:インプレス『インターネット白書 2017 IoTが生み出す新たなリアル市場』資料2-1-1より)


 現在、セルラー系LPWAとして「NB-IoT」、非セルラー系LPWAとしてSIGFOX社の「SIGFOX」、LoRa Allianceの「LoRa」、Wi-Fi Allianceが進めている「Wi-Fi HaLow」(IEEE 802.11ah準拠)などがある。

3つのLPWA「LoRa」「SIGFOX」「NB-IoT」の違いとは

 ここでは、LPWAの代表格として3つの規格「LoRa」「SIGFOX」「NB-IoT」について詳細を見ておこう。

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SIGFOX、LoRa、NB-IoTの違い(概要)

1.LoRa(LoRaWAN)

 LoRaはLoRa Alliance(米のSMETECH社が中心となり2015年に設立、IBM、シスコ、オレンジなどの大手IT企業や通信事業者がメンバーになっている)により策定されているオープンな技術仕様だ。「LoRa」はローレベルの物理層の規格の名称で、上位層まで含めた規格として「LoRaWAN」が使われる。

 仕様はSub-GHz帯(日本では920MHz帯)、Ultra Narrow Band方式の無線技術を使い、通信速度はおよそ250kbps程度、通信距離は最大およそ10キロメートルとなる。

 パブリックとプライベート両方のシステムで利用でき、企業が小規模なプライベートネットワークに利用するという形もあるし、事業者として広くビジネスに提供するビジネスモデルも可能だ。

 海外ではすでに実用化されているが、日本ではすでにSORACOM(ソラコム)が「LoRaWANサービス」を正式にスタートし、これから本格稼動したという段階だ(なお、ソフトバンクやKDDIも2017年度中にサービスを開始することを公表している)。

 SORACOM Air for LoRaWANの利用イメージは以下の図の通り。デバイスのデータはゲートウェイを通じてクラウドに送信され、SORACOMのクラウドと連携する形でサービスを利用する。前述のように、パブリックモード、プライベートモードでLoRaWANサービスの構築と運用が行えて、ゲートウェイの設置もできる。

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「SORACOM」を活用したLoRaWAN システム構成イメージ
(出典:SORACOM報道発表)


2.SIGFOX

 フランスのSIGFOX社(2009年設立)により開発されたもので、Sub-GHz帯、Ultra Narrow Band方式の無線技術を使い、通信速度はおよそ100bps、通信距離は最大およそ50キロメートル。

 エッジ側のデバイスは基地局と920MHz帯(日本国内)で通信する。このとき、デバイスはデータをブロードキャストするだけとなる。特徴的なのが、上りだけの提供となること。エッジデバイスはセンシングデータを適宜、決められた時間に送信するだけに特化した非常に割り切った通信形態になっている。

 サービスのイメージは、デバイスからデータを基地局へ、そしてインターネットを経由してクラウドへ送信されたデータを各ソリューションが利用するという形になる。

 スター型のトポロジを取るが、電池で数年の稼動が可能という省電力設計で、基地局の設置コストが携帯電話基地局と比べて安く、そのため初期導入コストを抑え、低価格なサービスを提供できるという仕組みだ。

 SIGFOXはすでにフランス、スペイン、オランダ、イギリス、ベルギーなどヨーロッパを中心に展開し、現在29カ国に及ぶ。「1国につき1事業者」が原則で、契約した事業者をSIGFOX Network Operator(SNO)としてその国におけるネットワークの構築運用を行うというビジネスモデルを取る。

 日本では京セラコミュニケーションシステムがSIGFOX対応のIoT向け低価格通信サービスの提供を2017年2月から開始することを発表している。

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SIGFOXのサービスイメージ
(出典:京セラコミュニケーションシステムの報道発表より)


3.NB-IoT

 NB-IoTは3GPP、いわゆる既存の通信事業者や大手通信機器ベンダーが進めている規格だ。ライセンスバンド(無線局免許を必要とする周波数帯)を使うLPWAで、NB-IoTはいわばLTE版のLPWAといえる。

 通信速度はおよそ100kbps、通信距離は最大およそ20キロメートル。LTEを低速、低消費電力、低価格に向けて拡張したものであり、既存のLTEネットワークと共存できることが大きな利点になっている。

 2016年6月に仕様が固まり、2016年後半からの商用化に向けて動いている。日本での商用化は2018年以降の見込みだが、ソフトバンクが2016年11月にNB-IoTの実験試験局免許を取得し、千葉市美浜区で実証実験(スマートパーキングに取り付けたNB-IoT方式のモジュールを用いた車の入庫・出庫によるNB-IoTの挙動などの検証)を行っている。

LPWAの今後の見通し、新規格の実用化はいつか?

 ここで紹介した3つのLPWAは仕様がオープンであり、誰もが展開可能な「LoRa(LoRaWAN)」、1国に1事業者というように通信サービスとして提供するビジネスモデルを取る「SIGFOX」、LTEとの共存が容易な「NB-IoT」といずれも特徴的だ。

 世界的に見て、すでに実サービスが始まっているのは非セルラー系LPWAネットワークのLoRa(LoRaWAN)およびSIGFOXで、セルラー系LPWAネットワークは後追いという形になっている。なお、ここでは取り上げなかったが、Wi-Fi HaLowは2018年に実用化予定で、実際の製品が登場するのはもっと後になる。

 さて、本稿ではIoT/M2Mに特化したLPWAネットワークの動きをまとめた。M2Mの具体例としては、車両の追跡、駐車場管理、エレベータ・自動販売機の遠隔監視、水道・ガス・電気等の計測、産業用資材・機器の管理、農業管理など、既存分野と組み合わせた幅広い展開が期待されている。

 また、IoTの事例としても、フィットネス・ヘルスケアを中心にスマートデバイスの普及は、徐々にではあるが進みつつある。LPWAをベースにIoT/M2Mが普及するにつれて、サービスとしての作り込みが進んでいくものと期待できる。
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