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  • 2016/05/25 掲載

ダイレクト・レスポンス・マーケティングの父、ダン・ケネディ氏らが説く顧客獲得戦略

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現在では世界の5人に一人の労働者が失業や著しい不完全雇用、たとえば労働時間の短縮、賃金の低下などの状態に陥っている――そう語るのは、世界一の億万長者メーカーの異名をとり、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの指導者としても知られるダン・ケネディ氏だ。ベストセラー作家で起業家であるダン氏は、世界経済について「今までにないニューエコノミーの世界が少しずつ広がり始めている」とし、ネット上であらゆる情報を取り寄せることができる消費者こそが力を持つ時代だと指摘する。では、消費者の心を掴み、マーケティングに生かすにはどのような施策があるのか。ダン氏の著書から、そのヒントを探ってみたい。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

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ダン・ケネディ氏らの語る顧客獲得戦略とは

積極的に多様性を取り入れる

 ダン氏の語る「今までにないニューエコノミー」とは、1990年代後半のIT企業に代表される新ビジネスを指すのではない。似通ったチェーン店やブランドが乱立することでモノがあふれ、サービスの質が低下している現状の経済のことを指摘している。このような状況を打開するための施策としてダン氏は、積極的に多様性を取り入れるのが大事だと力説する。

「私は常々、ビジネスにおいて最も良くない数字は『1』だと言い続けています。一つのこと、例えば一つの取引先、製品と製造ライン、マーケティング手法やビジネスソースに依存しすぎるのは、愚かなことです」と警鐘を鳴らすダン氏は、その事例を紹介する。

 2009年末から2010年にかけてのこと、グーグルは突然3万件の広告主との取引を止め、グーグルメディアの利用を禁止したケース。多くの広告主はサイトへのトラフィックのすべてまたは、ほとんどをグーグル経由トラフィックに依存しており、セールス用のWebサイトへの流入に多大な影響があった。そのため、一夜にして順調な状況から消滅してしまった広告主も少なくなかった。

 こういった事態に陥らないためにも一つの媒体、顧客獲得手段、顧客ソースに依存しすぎないビジネスモデルを構築すべきなのである。

 ダン氏は「顧客獲得手段に関して、その時々で優先順位が高いものを、すばやく取り入れることで、結果的に顧客リストが充実する」と指摘し、次のような成功事例を紹介している。

 同氏と20年以上の付き合いのあるクライアントの場合。顧客獲得の90%を一つの媒体に依存していたところを8つの大きな媒体から顧客を呼び込むように戦略を変更したところ、新規顧客の20%を占めるまでになった。

 さらに年間1000万通のメールを送ることで顧客獲得手段のコスト圧縮を図り、先手を打ったのだという(2009年時点)。

「すべてのオンラインでマーケティングが行われている場合、これ以上のオンラインで別の媒体を使ってもあまり効果が無い」(ダン氏)

 これはオフラインの場合でも同様で、同じ分野でビジネス展開をしている限り効果が劇的に表れることはない。大切なのは単独分野に依存しないことだとダン氏は助言する。

「捨てる戦略」が業績を伸ばす

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 ダン氏の著書『常識を変えた15人の売れる仕組み(ミラクルマインド出版)』の共著者である、日本一カリスマメーカーの濱田昇氏は小さな100個の「Unique Selling Proposition(USP)より、一つのコアを確立することが絶対的優位性を持つ鍵だ」と話す。

 USPとは、消費者の購入理由となる特徴的な価値を表すスローガンやメッセージ、などの価値提案のことだ。

 濱田氏によると、USPは相対的なもので、ライバルの成長に伴い通用しなくなる。一方、“コア”は「なぜ、そのビジネスをやっているのか」という問いに対しての答えであり、唯一無二の価値を生み出す源泉なのだという。

 例えば以前、ビジネス+ITで紹介したジャズレーベルの澤野工房のケース。澤野由明社長自身が熱狂的なジャズコレクターで、自分が満足のいく本物のジャズを日本に届けたいとの思いがコアとなり、大手メーカーを押しのけ、この業界で唯一無二のジャズレーベルを確立している。


 マスターテープの音質にこだわり、マニアが「こうして欲しい」というアルバムを徹底的に作り込む。さらに世界各国で活躍している無名のジャズアーティストを発掘しアルバムを制作。ミュージシャンとファンが触れ合う場としてコンサートを主催するなど、ジャズのすそ野を広げる活動が商売繁盛を後押しする。

【次ページ】捨てる戦略の実践例

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