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  • 2016/09/06 掲載

メルカリCEO山田進太郎氏が「世界基準」で海外に挑む理由

#tiatokyo2016

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競争が加熱するC2C分野においてフリマアプリを展開するメルカリは、評価額10億ドル以上を誇る日本唯一のユニコーン企業だ。月の半分以上は海外におり、米国やイギリスでの事業にコミットしているメルカリ 代表取締役 山田進太郎 氏がテックインアジア東京2016に登壇し、海外で戦う起業家として「世界基準」の視点を持つ重要性を語った。
(執筆:編集部 時田 信太朗)

photo
メルカリ
代表取締役
山田進太郎 氏

メルカリが米国で「バズった」理由

 2016年5月、日本だけで3000万ダウンロードを突破したメルカリだが、国内のみならず米国においても急成長している。2016年3月に700万だった米国版メルカリのダウンロード数は、半年で2.5倍の1900万になった。この要因の一つにあるのは、7月末にApp Storeのランキングが急上昇したことだ。山田氏はこの「バズ」が起こった背景について次のように説明する。

「とあるインフルエンサーのような人が(メルカリのことを)ポストしたようだ(注1)。90人くらいの人を(アプリに)招待した。これが最大20連鎖以上した。そのうち、40人以上が1000人以上を招待したことでアプリランキングが上がり、さらに流入が増えたようだ。いまは60位前後に落ち着いているが、以前に比べても高い水準を保っている」

(注1)山田氏は「どのような要因で発生したか分からないが、おそらくスナップチャットではないか」と推測している

 モデレーターを務めたテック・イン・アジア David Corbin氏は、「このようなバズを起こすためにどのようなアドバイスはあるか?」を山田氏に問いかけた。山田氏は「実は我々が仕掛けたのではなく、インフルエンサーを増やす施策は何もやっていなかった」とし、次のように続けた。

「我々も、このバズが起こった後に『インフルエンサーマーケティングがいいのでは』と思い、彼らにコンタクトを取ろうとした。しかし、(そのやり方では)ナチュナルに『いい』と思って発生したものとは違うように思える。結局、サービスが良くなければダメだということ」

画像
メルカリ山田進太郎氏が語る「世界基準」の戦略

メルカリはなぜ米国版を優先して開発するのか?

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 現在、メルカリの開発リソースは日本にあるが、その9割が米国版の開発を優先しているという。A/Bテストを行い、米国で試して結果が良ければ日本版に反映させるというプロセスだ。David氏は、「日本企業で米国を優先するというのは珍しい。なぜ米国を優先しているのか?」と山田氏に質問した。

 これに対して山田氏は「C2C市場には色々な可能性がある。主要プレーヤーであるeBayは、ヤフオク!の10倍ある。C2Cをやる以上は、米国、ヨーロッパを押さえないといけない。そこで成功した収益力を持った会社が日本に来たら負けてしまう。攻撃は最大の防御ではないが、先に米国市場に着手しなければいけないと思っている」と語る。

「メルカリは現在、米国でもダイレクトなコンペティターはいない。eBayはPCのレイヤーで強大だが、モバイルの総合型C2Cではメルカリのように専業の会社はない。日本は当然重要なマーケットだが、米国、ヨーロッパを押さえれば10倍の市場が見える。合理的に見れば、このチャンスを逃すのはもったいない」(山田氏)

 PC向けに機能を追加すると複雑になるし、プロユーザーも多い。eBayやヤフオクにプロと一緒に出品すると、クオリティが保てないと思って、出品を止めてしまうユーザーもいるという。「こうした中でメルカリはモバイルユーザーが使いやすいように作っている。写真を入れて本文、タイトル、カテゴリ、値段を選べば気軽に出品できる。モバイルという『個人』に近いデバイスに合わせている」(山田氏)。

 続いてDavid氏は「メルカリにはどのような属性のユーザーが増えているのか?」という質問を投げかけた。

 山田氏は「一般論としてインターネットのサービスはアーリーアダプターと呼ばれる人が使い始め、だんだん浸透していくが、メルカリは(レイトマジョリティやラガードと呼ばれる)『普通の人』も使っているところが特徴的。米国も同様で、カリフォルニアの次に使っている地域は中西部のテキサス。女性向けファッションアイテムや子供向けおもちゃが売れている」

 米国での人気カテゴリは、ファッションではバッグ、ブランドではナイキ、ルイヴィトンなどの人気ブランドのほか、下着ブランドのヴィクトリアズ・シークレットなどが人気だという。

「(米国での)流通額は公開していないが、去年の8月と比べて6倍になっている。それも前述のバズがあったのが大きい。同じくMAUやDAUも非公開だが、ダウンロード数は1900万、そのうち1/3から1/4のユーザーは使い続けてくれている」(山田氏)

グーグル、フェイスブック同様「0.1ポイントの差」を積み重ねる

 山田氏が例に挙げたのが、グーグル、フェイスブックの成功だ。「検索(サービス)は誰でも作ることができるが、グーグルは細かい改善を繰り返している。マイクロソフトのような無限の資金力を持っている企業が参入してきても勝てる。フェイスブックも広告参入は遅かったが、アルバム、360度動画といった愚直な改善を繰り返すことで、圧倒的な競争優位性を作っている」(山田氏)。

 実際、メルカリも愚直にサービスを改善しているという。価格のサジェストやカテゴリのサジェストをビッグデータを使って行っており、ユーザーに出品してもらう、あるいは購入してもらうという体験を日々アップデートしている。

「これからの改善、何を優先するか? という意味では、あらゆることをやっている。70人程度のメンバーが、CRM、インフラなど小さいチームに分かれて細かな改善をしている。この改善は1ポイント、0.1ポイントの差だ。しかし、べき乗で差が出て、最終的に競合が追いつけなくなる」(山田氏)

【次ページ】メルカリの海外戦略、次なる一手は

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