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  • 2016/12/16

なぜアップルは「自前」にこだわるのか? グーグルとまるで異なるビジネスモデル

2017年、アップルのネクスト戦略【前編】

すでにスティーブ・ジョブズがこの世を去って5年の月日が流れた(2011年10月5日没)。しかし、アップルの時価総額はいまだに60兆円を超え、世界最高額クラスを維持している。しかし、スマートフォン市場での売上やシェアは減衰し、2016年第4四半期決算(7月〜9月)は約469億ドル(前年同期比の約91%)利益は約90億ドル(約81%)と、2001年以来15年ぶりとなる初の減収減益となった。現在の2017年度の第1四半期(10月〜12月)はiPhone7の投入、新MacBook Pro、クリスマス商戦、Apple Payなどと持ち直しが期待されるが、以前のような急激な成長は見込めなくなってきている。新たな製品投入の声が聞かれないまま、アップルは一体どこへ向かおうとうしているのだろうか?

ITジャーナリスト 神田 敏晶

ITジャーナリスト 神田 敏晶

ITジャーナリスト、KandaNewsNetwork代表。神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の編集とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部で非常勤講師を兼任後サイバー大学客員講師、ソーシャルメディア全般の事業計画立案、コンサルティング、教育、講演、執筆、政治、ライブストリーム、活動などを行う。

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アップルは一体どこへ向かおうとしているのか
(©pagnacco - Fotolia)

2017年完成予定の「Apple Campus2」は維持できるのか?

 Apple Watchにスティーブ・ジョブズが関与していたかどうかは定かではないが、確実に関与した最後の作品は、アップルの未来型の新社屋「Apple Campus2」である。太陽エネルギーから自然との調和という壮大な事業構想から設計され、ジョブズ自身がクパチーノ市でプレゼンテーションを行った一大プロジェクトである。しかし、2016年内の完成予定はずれこみ2017年となってしまった……。さらにiPhoneからバトンタッチされるべく「金のなる木」の製品はまだ成長していない。


スティーブ・ジョブズによるCampus Projectのプレゼンテーション2011年6月
※この4か月後にジョブズは亡くなることとなった

ドローンによる定点観測映像で工事の進捗状況がわかる

 現在のiPhoneシリーズの売上成果のみで、この広大なCampus2を維持していけるとはとても思えない。海外大手新聞紙によると、アップルによる自動運転の自動車事業「Taitan」は、自動車本体をイノベーションする自動車メーカーではなく、サービス事業へと事業形態をシフトしたようだ。

新規参入の自動車業界でさえ「自前」にこだわるアップル

 このように、新たな市場へと取り組む場合のアップルは、常にナンバーワン組織ならではのジレンマを抱えてしまう。なぜならば、それはテスト販売ではなく、どの製品も数千万台を数年かけて作り続けなければならないというジレンマだ。つまり、アップルは常に数千万台売れる製品しか作ってはいけないという規模になってしまっている。この立場において自動車のような事業を考えると、初期の段階では数千万円のテスラ・ロードスター初期モデルのようなハイブランドなポジションで展開し、除々に価格と販売台数を増やすという、テスラと同じ戦略が取れたはずだ。しかし、自動車の場合のサプライチェーンは、デジタルデバイスのような単純なものではなかった。

 テスラも初期のロードスターのシャーシは、ロータス・エリーゼの借り物であった。また、EV車用のバッテリーも現在ではパナソニックの独占供給であり、パナソニックも50億ドルクラスのリチウムイオン専門工場をテスラと共同で作るという体制でなしえている。

 このように自動車産業はサードパーティーでさえも、新たな投資を必要とする事業なのだ。テスラ初の普及モデル「Model 3(35,000ドル、約385万円)」では約40万台の有償予約。2020年までに100万台という流通が目標である。いくらアップルと言えども、初めての自動車プロジェクトでは尻込みするサプライヤーが多かったのではないだろうか? 台湾の鴻海でさえも自動車まではさすがに作る経験値を持っていなかった。

 むしろ、アップルにとって、自動車産業は今、すぐに参入すべきタイミングではなかったのかもしれない。もっと自動運転のクルマが普及し、EV自動運転のサプライヤーが整備され、投資環境が成立してからでも良いのだ。しかし、今日のアップルの競合は、かつてのIBMやマイクロソフトではなくグーグルとなったので、参入時期の遅さは負け戦になる可能性さえある。もちろん、既存の自動車産業もここにきて自動運転やAI化、ロボット化とIT投資に積極的だ。

 グーグルの時価総額は約55兆円、アップルと一位二位を争う企業に成長した。世界ナンバーワンの自動車メーカーとなったトヨタでさえ、時価総額は約21兆円とアップルの35%、グーグルの38%でしかない。アマゾンの約37兆円、Facebookの約36兆円にも及ばない。いずれ自動運転でのEVカー市場では、IT業界、特にアップルから巨額の自動車メーカー買収というのも、未来においてはありえることだ。むしろIT産業のプレイヤーは、いずれもプラットフォームで制覇したいので、アップル以外は自前で創ることにはこだわらない。アップルだけが自前でなんでもやりたがるからだ。

 ではなぜ、アップルは自前にこだわるのか? それはビジネスモデルの違いだ。

【次ページ】 グーグルとアップルのビジネスモデルの違い

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