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  • 2017/05/24 掲載

日本を救う精密農業は「4つのICT」が支えている

フロスト&サリバン連載 「TechVision:世界を変革するトップ50テクノロジー」

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日本では、急速に進んでいる少子高齢化および過疎化のため、労働力不足が深刻な問題になっており、農業における生産性の向上が重要な課題となっている。こうした中、精密農業は、解決策の1つであると見られている。2025年まで平均12%の成長が見込まれる「精密農業」について、基本的なコンセプト、目的、利用技術、そして将来動向をフロスト&サリバン ジャパン 成長戦略コンサルティングマネージャの伊藤 祐氏が解説する。

執筆アシスタント:フロスト&サリバン ジャパン ディオン・ン・ジェ・ティン

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日本の農業・食糧問題を解決する可能性のある精密農業。それを支える4つのICTとは何を指すのか。
(© Montri – Fotolia)



精密農業とは?

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 精密農業の目的を一言でいえば、「ICT活用を通し、産出前から産出後までの全体過程を効率化し、収穫高と投資収益率を向上させること」となる。

 精密農業は、センサーネットワーク、衛星通信システム、ロボット工学とAIなどのテクノロジーを活用する。これらのテクノロジーを活用することで、農作物の各パラメーター(気候、空気や土壌の状態、水質など)の監視、計測と問題対応を効率的に行うことができる。農作物についての情報収集を細かく、また広範囲に実施することにより、市場価格の変動に応じて植付・収穫・流通の規模などに関する重要な決断の裏付けとなるデータを大量に入手し、投入物と廃棄物の削減及び生産高向上を促すことができる。センサーの他、インテリジェンスネットワーク、ドローン・無人陸上ビークル(UGV)、農薬・肥料・労働力などを適切に配分するロボットなども活用される。

精密農業を支える4つのICT

 精密農業を適用する際、収穫率の改善を目標に、4つのICTを従来の農法に適用する必要がある。その4つの技術は、クラウド・ソフトウェアパラダイム、モノのインターネット(IoT )、モビリティ/モバイルアプリケーション、ビッグデータ分析・機械学習である。

 1つ目のクラウド・ソフトウェアパラダイムは、クラウド上のデータストレージやアプリケーションの活用により農業のコストパフォーマンスを向上させる仕組みのことを指す。特に、精密農業におけるクラウド・ソフトウェアパラダイムは、今までは保存できなかったデータを集中化したプロセシングシステムに結集することを指す。

 各企業は個別にデータストレージを保有する必要はなく、あるクラウドサービス提供者のクラウドサーバーにインターネット経由でアクセスし、従量課金モデルで高いコストパフォーマンスを実現する。とりわけ自前でシステムを準備できない中小企業は、クラウド・ソフトウェアパラダイムのメリットを最大限に活かせる。

 2つ目のICTであるIoTは、あらゆるモノがネットワークにより相互に接続されることを示す概念である。センサー、ソフトウェア、ネットワークにより、データの収集と分析が容易にできるようになる。精密農業においてIoTにより各農業機械の監視、管理を行い、それを機械分析した結果が各パラメーターの自動調整機能のベースとなる。

 3つ目のモビリティ/モバイルアプリケーションは、精密農業における農作物管理の手段の1つだ。携帯用のスマートデバイスの普及に伴い、利便性と省コストをもたらすモバイルアプリケーションが、ますます重要性を増している。特に現在注目を浴びているのは、小規模農家への監視・管理用モバイルアプリケーションの提供、また、発展途上国用の低コストデバイスの提供・貸与などの取り組みである。

 最後に、ビッグデータ分析・機械学習である。これは、構造化データ(簡単なアルゴリズムで検索できる情報)と非構造化データとの両方から、分析、認知、インテリジェント制御、規制、データ処理などより、価値のある情報を見つけ出すことを指す。精密農業に適用できるビッグデータ分析・機械学習では、収穫データや市場価格、現在価格、気候解析、農作物病害などに関するアーカイブにアクセスし、データの分析により農法の改善点を見つけ出すことができる。

画像
精密農業を変える4つのICT
(出典:フロスト&サリバン)


 このように精密農業により導入されるICTにより、主に4つのインパクトが見込まれる。それは、食糧需要に応じた供給増加と生産性の向上、システム予測管理・食品安全確保の向上、コネクティビティの向上による効率化、および新しいビジネスモデルの導入である。

 新しいビジネスモデルの例としては、農業用機械を販売していたメーカーが、自社での研究開発やスタートアップ企業の買収を通してデータ分析およびソフトウェア開発事業に参入し、クラウドサービス提供を開始するケースなどがある。

【次ページ】日本が世界市場の4割を占める植物工場
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