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- 2017/09/12 掲載
「東京五輪ではソフトウェアがレガシーに」、舘局長が語るセキュリティへの取り組み
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過去のオリンピックで登場した先端テクノロジー
「たとえば1964年の東京五輪では、IBMがオンラインシステムによる競技結果の集計・配信をスタートした。それ以降、総合情報システムが整備され、システムが複雑になった。2000年のシドニー五輪ではBSハイビジョン試験放送が開始し、2012年のロンドン五輪ではモバイルトラフィックやサイバーセキュリティ対策が課題として顕在化した」(舘氏)
2016年のリオ五輪では、情報システムの一部をクラウドベースに移行。またIOC下部組織である「OBS」(Olympic Broadcast Service)によって、360度映像が試験的に導入され、開会式や一部の競技で配信された。VRゴーグルでの視聴も複数の海外放送局が対応した。OBSが開始した会員制動画アーカイブサービス「Olympic Channel」では、五輪後に視聴できる環境をネットで提供した。
近年、普及が著しいモバイル・アプリケーションの増加もリオ五輪の特徴だった。7カ国語に対応した「Rio 2016 Mobile App」により、会場情報、競技スケジュール・結果、国別メダル数、関連動画・写真などを、スマートフォンから閲覧できるようになった。
「2012年のロンドン五輪では、PCから競技結果を見るユーザーが多かったが、リオ五輪になってからネットの8割以上がモバイルアプリに移った。それに伴って、モバイルトラフィックも爆発的に増加した」(舘氏)
東京五輪ではデータ活用によるスポーツ体験最適化が課題
もうひとつ面白いのがシドニー五輪から導入された「スポーツ・プレゼンテーション」だ。これはオリンピックを劇場型ショーとして捉え、その魅力を高める考え方だ。具体的には、会場で使われる音楽、ビデオボード、映像・音声、照明、特殊効果、開催地の文化演出などをトータルで演出した。「当然だが、2020年の東京五輪でも最新テクノロジーを駆使し、スポーツ・プレゼンテーションを進化させたいと考えている。これはフランスのトップスポンサーであるATOS Scientific Communityが、新しい動向としても予測しているものだ」(舘氏)
最新テクノロジーとしては、たとえば競技データをリアルタイムで利用し、一部をテレビやネットで活用したり、またファン同士で情報を共有するソーシャルネットワークの標準化などがある。個人の嗜好に合わせてカスタマイズされた視聴体験や、音声認識・顔認識などの新しいセキュリティ、ビデオやVR、ロボット競技などのテクノスポーツも注目されている。
舘氏は、このスポーツテクノロジーの背景について次のように語る。
「まず入力技術として、カメラ映像やウェアラブルデバイスなどが挙げられる。それらを可視化・分析する出力としてのデバイスや、プレー内容に関する統計情報から、より高度な分析を行う“アドバンスド・スタッツ”と呼ばれる技術もある。これらの情報はアスリートが最も必要とする情報で、観客も未体験の臨場感や面白さを発見できる。私は、これらのデータを“スポーツ版ビッグデータ”と呼んでいる」(舘氏)
このスポーツ版ビッグデータをめぐるエコシステムでは、スポーツアナリスト、医師・トレーナー、科学者・研究者がデータを処理・分析して活用するほか、競技・運営団体が選手の強化やトレードのための共通尺度にしたり、審判員の判定データとして使えるだろう。メディアのコメンテーターが自分の解説を裏付けたり、コアなファンや観客も楽しめるデータとして加工することが可能だ。
「エコシステムでビッグデータをどんどん活用できる。これらの技術を使い、アスリートやコーチが勝つために何を考え、工夫しているのか、その考えを観客が理解できれば、さらにゲームの面白さにつながる。最終的に要素技術をうまく組み合わせ、何を見せるのか、これが東京五輪をイノべーティブにするために最も問われることだ」(舘氏)
【次ページ】サイバー犯罪やハクティビストによる攻撃が顕在化
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