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  • 2018/04/25 掲載

なぜ、日本の教育では変化に強い「アジャイル型人材」が育たないのか

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スピーディーにプロトタイプを作り、効果測定を繰り返しながら臨機応変に改変していく「アジャイル」な人材はどのように育成すればよいのか。「課題解決型」の教育やプログラムにヒントがありそうだ。

スタディオアフタモード代表 矢萩邦彦

スタディオアフタモード代表 矢萩邦彦

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む。1万5000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラーとしても活動。株式会社スタディオアフタモードでは人材育成・メディア事業に従事、教養の未来研究所では「教養・複業・ゲーム」をテーマとした研究を軸に、キャリアコンサルタント・クリエイティブディレクターとして企業の未来戦略やブランディングを手がけている。一つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を目指し探究する独自の活動スタイルについて、編集工学の提唱者・松岡正剛より、日本初の称号「アルスコンビネーター」を付与されている。Yahoo!ニュース個人オーサー。グローバルビジネス学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。主な編著書に『中学受験を考えたときに読む本』(洋泉社)など。

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アジャイルに行動できる人材をどのように育成すればいいのか
(© ONYXprj – Fotolia)



まずはアジャイルの「意義」を理解することから

 アジャイル開発にはどういった人材が向いているのだろうか。「スクラム」をはじめとした開発手法によって異なるだろうが、それでも向いている人材・向いていない人材は存在すると筆者は考える。

 アジャイルに向いている人材の特徴として、まずコミュニケーション能力の高さが挙げられる。

 チームに顧客の意図を伝える力やチームメンバーの受容力から始まり、毎日のスタンドアップミーティング(毎朝行うチームの状況を立ったまま共有する会議)や、“アナログ”なコミュニケーションには理解と慣れが必要だ。

 アジャイル開発では、作業領域を厳格に区切り、自分に最適化した手順で仕事を進める傾向がある“熟練者”は不要であり、コミュニケーション能力と柔軟性がモノを言う。

 しかし、最も大事なのはアジャイルの「哲学」を納得して受け入れられるかどうかだ。筆者の知り合いのSEでもアジャイルの話をすると「無理だ」「無駄だ」と最初から受け付けない人も少なくない。

 アジャイルの意義を理解し、それが真に効果のある方法であることに納得すれば、コミュニケーションにも積極的になるし、柔軟に対応しようと努力するようになる。

 極端な話、チーム全員の内的なモチベーションが高ければアジャイル状態になりやすい。後は大枠の中でチームに合った手法を採用し、カスタマイズしていけばよい。

アジャイルが育ちやすい“課題解決型”学習

 とはいえ、アジャイルの価値を理解し納得しやすい人材と、そうでない人材がいることは間違いない。元々の性格以外にどのような要因があるかを考えみたい。

 アジャイル導入が成功している国では初等教育から課題解決型のプロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)を導入している国が多い。

 PBLとは、欧米発祥の教育理論であり、学習を能動的なものと規定している。教科書の暗記など受動的な座学ではなく、自ら問題を発見、解決する能力の習得を本質とする。

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課題解決型のプロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL:課題解決学習)

 たとえば、ヨーロッパを中心に普及している幼児教育では、医師マリア・モンテッソーリが開発した「モンテッソーリ教育」や世界の幼児教育を先導するイタリアの都市レッジョ・エミリア発祥の「レッジョ・アプローチ」など、主体性や対話を中心とした教育環境作りが一般化している。

 どちらの教育にもほぼ共通しているのは、素材や道具や道具がたくさん用意された環境で、それぞれが興味を持ったものに向き合い、目的や方法を自ら調整しながら探究的に活動を進めていく点だ。

 その際、周囲の子どもや大人を巻き込みながら、チームを作り力を合わせて何かを作り上げていく。そのような教育スタイルは、幼児教育に留まらず、高等教育まで続いていく。

【次ページ】“受け身”の教育がアジャイル普及を阻む一因

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