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  • 2018/11/16 掲載

「機械翻訳があるからもう英語話せなくても大丈夫」は本当なのか?

三津村直貴の“今さら聞けない”テクノロジー講座

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前回は機械翻訳の仕組みと特性、その限界について「Google翻訳」などを例に挙げて説明しました。まだまだ限界があるとはいえ、機械翻訳の精度は日々上がっており、補助的な役割であれば十分ビジネス利用に値します。では、「機械翻訳があるからもう英語話せなくても大丈夫」という世界は近いのでしょうか?今回は、機械翻訳が現在できることについて、翻訳タスクを「機械翻訳」「翻訳家が必要なケース」に分けて解説します。

執筆:フリーライター 三津村直貴

執筆:フリーライター 三津村直貴

合同会社Noteip代表。ライター。米国の大学でコンピューターサイエンスを専攻し、卒業後は国内の一部上場企業でIT関連製品の企画・マーケティングなどに従事。退職後はライターとして書籍や記事の執筆、WEBコンテンツの制作に関わっている。人工知能の他に科学・IT・軍事・医療関連のトピックを扱っており、研究機関・大学における研究支援活動も行っている。著書『近未来のコア・テクノロジー(翔泳社)』『図解これだけは知っておきたいAIビジネス入門(成美堂)』、執筆協力『マンガでわかる人工知能(池田書店)』など。

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「機械翻訳」「翻訳家」それぞれが必要となるケースがある
(©Golden Sikorka - Fotolia)


機械翻訳でいいケース

 前回で機械翻訳の持つ特性について理解していただけたところで、現時点での機械翻訳をどのように使うべきかという点に焦点を当ててみましょう。

 機械翻訳は完璧ではありませんが、確実に性能は上がっており、機械翻訳が苦手な文章でなければ人間と変わらないレベルの訳を作ってくれます。使えるべきケースで使えれば大きなコスト削減になるはずです。翻訳家や英語の得意な人材が足りなければ、機械翻訳によってビジネス領域を広げることもできるでしょう。問題は、「どこで使うか」です。

 正直なところ、英語を全く理解できない人間が機械翻訳で出てきた言葉をそのままビジネスに使うのは難しいでしょう。簡単な意思疎通はできますが、最終的な決断・決定に繋げるにはリスクが大きいです。

 しかし、外国語をある程度理解できる人間がチェックしながら使う分には非常に有用です。その際、翻訳家・ネイティブレベルの英語力は必要ありません。不自然に感じる部分は調べてみるなり、文章を変えてみる形で調整すれば十分です。書いた文章を外国語にする場合でも外国語を日本語にする場合でも、基本的には訳文・原文をチェックすることは必須です。ただし、その時間的コストは大幅に削減されるでしょう。

 また、機械翻訳の特性を理解した上で「翻訳しやすい単純な文章」で文章を書くのでればチェック不要で使えるレベルになります。小中学生の文章のように、短い文と単純な文法だけを使う形になりますが、正確な意思疎通を機械翻訳で行うことができます。体裁は悪いですが、チャットツールを使った短い文章での会話ならそれほど問題になりませんし、いちいちチェックを入れられない重要度の低いケースでは十分に有用です。

 中小企業や個人間の取引が主となるeBayのようなオークションサイトでも機械翻訳は積極活用されており、海外取引の突破口になっています。大きな組織でも、常に原文と訳文を併記する形で報告書・議事録・仕様書などに機械翻訳を使うケースが増えています。

 大まかな内容を把握するのに訳文を使い、正確な意味把握が必要でれば原文を見るという形にすれば機械翻訳の精度はそれほど大きな問題にはなりません。グローバル企業などでは社内文書の翻訳が必須になることがありますが、その際に翻訳家を雇用して社内のあらゆる文書を翻訳させる必要もなくなるため、大幅なコスト削減になります。

 面白い使い方として、自分で書いた英語(外国語)を機械翻訳にかけて日本語にし、読みやすい文章になっているかを確かめるという使い方もあります。読みにくい難解な文章は機械翻訳の訳が不安定になるため、機械翻訳が綺麗に訳せるような文章を書くようにするのです。互いに英語のネイティブでないような場合、読みやすい文章が作れるので有効かもしれません。

【次ページ】では「翻訳家が必要なケース」とは?機械翻訳は翻訳家の代わりにはならないのか

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