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- 2019/05/31 掲載
【炎上リスク】社長の失言・退職ブログ・バイトテロ…効果的な対策はあるのか?
火事とケンカはネットの華
商用インターネットが始まる前は、限られた大学や研究機関、企業しか参加していなかったので、論争もBSDとSystemVのどっちが優れているか、ファイル終端をCTRL-Zとする文化は害悪だ、ビッグエンディアン(リトルエンディアン)はやめろ、WindowsよりMacが優れている、というどちらかというと「宗教論争」的なものが多かった。社会的問題でも、喫煙派と禁煙派の論争、サンキューハザードは危険、など答えの出ない論争が多かった。
これらの議論はいわば永遠の課題であって、エリートによるディベート、思考実験として、議論そのものが目的となり、結論を出すことが目的ではない。その意味で、ネット黎明期の炎上は、自律的に統制がとれていたものだったといえる。
しかし、インターネットが重要な社会インフラ、主要メディアにもなった現在、炎上は深刻な人権問題、企業活動への影響、あるいは人命にもかかわるものになっている。発信者にその意図がなくても、バイトテロで企業の株が下がり店舗が廃業に追い込まれ、デマツイートにだまされた殺人事件まで発生する始末だ。
いかに火種を見つけるか
大企業の場合、ネットの炎上や不祥事で即倒産という事態は考えにくいが、最低でもブランド毀損や株価の下落、不買運動による売り上げ減といったダメージは避けられない。ベンチャーや中小企業の場合は、文字通り存続の危機となる。そのため、炎上対策は近年企業ガバナンスとコンプライアンスの重要項目となっている。関連するセミナーもここ数年で定番化してきているし、対策ソリューションや炎上対応サービスなど、炎上対策に特化した市場さえ出来上がっている。
主な対策ソリューションは、脅威インテリジェンスのOSINT(オープンソースインテリジェンス)を応用したものがベースとなっている。炎上は、内部犯行的なものを除くと「もらい事故」が多い。もらい事故ならば企業側に責任はない場合も想定されるが、かかってくる火の粉は払う必要はある。サイバーセキュリティにおいて、防御側は飛んできた火の粉に対処するだけより、飛んでくる火の粉の兆候や予兆を検知して備えることで、被害を防ぐことが可能になる。
OSINTとは、一般に公開されているものを情報源にして情報収集を行う手法だ。事前の情報収集やソーシャルウォッチによるOSINTが注目されるのは、攻撃側に対して立場が弱いとされる防御側が少しでも優位に立てるとされているからだ。OSINTは、潜在する攻撃者を発見するために利用できる。
炎上対策の場合、ダークウェブなどをウォッチする必要はないので、サーフェスウェブ(普通の手法で閲覧できる一般的なウェブ)や各種メディアを監視し、自社に対するネガティブな書き込み、動きを早い段階で検知する。無名のアカウントの書き込みでも、フォロワーの多いインフルエンサーにリーチした段階で、一気に広がる可能性があるので要注意だ。
安易な対応は「燃料投下」
では、炎上の兆候、火種を発見したとして、どのような対応が考えられるだろうか。具体的な対応の詳細は、多様であり各社のノウハウ部分でもある。ここでは、一般的な対応や予防策について考えてみたい。
炎上の予兆、火種を発見したあとの対応は、ユーザーサポートや公式アカウントによる対応が参考になる。炎上が初期の場合、まずは当事者にコンタクトを試み、告発が誤解ならば説得や話し合いを提案する。このとき、いきなり法的措置をちらつかせたり、脅迫するような接触は避けるべきだ。多くの場合、これは燃料投下にしかならない。
また、DMCA(著作権侵害を理由にプロバイダーに書き込みを削除させる)を炎上対策に進言する法律家や業者がいるかもしれないが、これも逆効果の場合が多い。DMCAは文字通りの著作物の無断利用に用いるべきで、DMCAの乱用はかえって燃料になると認識すべきだ。
書き込みが誹謗中傷であるなら、プロバイダーに規約違反のアカウント停止を依頼する方法もある。しかし、アカウントはいくらでも作れるので、停止は対症療法であり、問題の解決にはならないという認識で適用する必要がある。
相手の主張にまったく根拠がなく、理不尽なもので、名誉毀損、営業妨害、脅迫、反社のいやがらせの類いならば、ネット上の動きは静観し、法的な処理を淡々と進めるという手法もある。
【次ページ】社長のツイートや退職ブログ…火種は内部にも
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