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  • 2019/07/24 掲載

日本企業を「ノキアの二の舞」にしないためにできることは?

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イノベーションを創出するデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)は第2章に入る。経営者らの指示でAIやIoTなどデジタル技術を導入した第1章は、業務プロセスの自動化、効率化に一定の成果を上げた。さらなる効率化を進めて、そこから得た経営リソースを新しいビジネスモデルの創出に振り向けるのが第2章になる。成果を生み出すうえで欠かせないのが、デジタル化の目的やゴールを明確に設定すること。欧米アジアの企業に比べて、日本企業のデジタル化は遅れているとの指摘もあるが、第2章はその挽回のチャンスになる。デジタル時代に勝ち残り、リードする策を探った。

執筆:ITジャーナリスト 田中克己

執筆:ITジャーナリスト 田中克己

日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長、主任編集委員などを歴任し、2010年1月からフリーのIT産業ジャーナリストとして活動を始める。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)、2012年度から一般社団法人ITビジネス研究会代表理事を務めるなど、40年にわたりIT産業の動向をウォッチする。主な著書に「IT産業再生の針路」「IT産業崩壊の危機」(ともに日経BP社)がある。

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世界はデジタルにより様変わりした
(出典:アクセンチュア 報道発表)

変革の必要性を認めない企業の行く末

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アクセンチュア
常務執行役員
製造・流通本部統括本部長
原口貴彰氏
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 「(フィンランドの通信機器メーカー)ノキアのようなことが、日本の製造業に起きる」──。アクセンチュアで製造業と流通業のデジタル変革を支援する原口貴彰常務執行役員は、日本の製造業に警鐘を鳴らす。

 同氏によると、ノキアが携帯電話市場シェアを5年間に35%失って、時価総額を9割も減らしたのは、アップルなどがスマートフォン市場に参入する中で、競争環境がデザインやサービスなど顧客視点にシフトしたことに、気がつかなかったということ。

 だが、「デジタル変革の影響はまだ小さい。業績を伸ばした企業も落とした企業も少ない」と、日本企業の経営者らは楽観視するだろう。確かに、日本企業の時価総額トップ10の顔ぶれはこの10~20年変わっていない。自動車や金融機関、通信事業者らが上位を独占し、時価総額もほとんど増えていない。GDPもこの30年間に増加したのはわずか60%超と横ばい状態にある。

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世界の「トップ企業」が大きく様変わりしたのに対し、日本のトップ企業は変化に乏しい
(出典:アクセンチュア 報道発表をもとに編集部作成)

 一方、欧米アジアを見ると、時価総額トップ10は製造業や金融機関、石油からIT企業へと大きく入れ替わり、GDPは30年間で5倍近くにもなった。企業を取り巻く環境変化に対応し、時価総額も大きく増やしている。

 アクセンチュアが2018年4月に発表した世界の大企業を対象に調査した結果でも、「すでに大規模な創造的破壊に直面している大企業」が6割以上、「創造的破壊の兆候を強く感じている大企業」が4割を超す。変革を読み取り、行動に移せるかが問われているのだ。
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機会の「扉」:機会の「扉」が開かれたときに、事後対応では遅い
(出典:アクセンチュア 報道発表)



賢明な事業転換を提案するアクセンチュア

 アクセンチュアによると、製造業における競争環境は性能や品質、価格など製品そのものの優位性から、サービスやユーザー体験、エコシステムに移行したという。

 たとえば、自動車産業の構造を破壊するMaaS(モビリティ アズ ア サービス)の広がりで、自動車メーカーだけの戦いから、グーグルなど自動運転技術を持つIT企業、ウーバーテクノロジーズなどライドシェアサービスを展開する新興企業との競争や協業へと根本的に変わった。

 アクセンチュアは、その創造的破壊を4段階で進むとみる。伝統的な企業が構造的な恩恵を享受し、安定した業績を上げている「長期安定期」の第1段階は、創造的破壊が起き始めているものの、危機的な状態にはなっていない。自動車販売やアルコール飲料などになる。

 次に伝統的な企業の業績が伸び悩み始める第2段階の「不安定期」になると、創造的破壊が少し進行し、高い人件費などの問題が鮮明になる。保険やコンビニエンスストア、ヘルスケアなどだ。そして、伝統的な企業の業績が悪化する「転換期」、新しい破壊者や新興勢力が次々に現れて、彼らの力が増す「混乱期」へと、S字カーブを描いて進んでいくという。

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業界別のディストラプションのステージ
(出典:アクセンチュア 報道発表)

 この破壊サイクルが通信や金融業界などから、製造業などへ広がっていくという。問題は、創造的破壊による機会の扉が突然開くこと。「ゆっくりしたイノベーションから突然、新しいサービスが生まれる。その市場が開いた瞬間に、素早く参入できるよう備えておく」(原口常務)。扉が閉じる前に、エコシステムの一員になるためだ。

 そこで、アクセンチュアはデジタル化に出遅れている日本企業に、「現行事業と新規事業のバランスをとる『賢明な事業転換(WISE PIVOT)』」を提案する。簡単に言えば、現在の中核事業を成長させる投資、中核事業を変革させる投資、新規事業を拡大させる投資、3つのバランスを取ること。中核事業からしっかり収益を稼ぎ、将来の成長に投資を振り向けるということだろう。当たり前に思えるが、経営リソースのシフトには、しっかりした戦略が必要になる。

 その一例として、アクセンチュア自身の事例を紹介する。アウトソーシングなど従来ビジネスを成長させる一方、デジタルサービスよる収益拡大とサイバーセキュリティなど新規ビジネスを立ち上げる。

 そのため、約40万人の従業員の進むベクトルを合わせて、M&Aなどによるデジタルサービスを加速させた。不足するスキルは外部から取り込む。これらによって、「2014年から2018年の間に時価総額が倍増した」と、原口常務は自慢する。

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WISE PIVOT成功事例 (1)
(出典:アクセンチュア 報道発表)

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WISE PIVOT成功事例(2)
(出典:アクセンチュア 報道発表)

【次ページ】デジタル変革に備える体制作り

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