• 2019/08/20 掲載

【4レポート比較】数字でLGBTの実情を徹底解説、割合は?差別は?対応企業は何%?(2/2)

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LGBT施策は本当に効果があるのか?

 「LGBT支援施策を導入・推進しても、誰もカミングアウト(性自認・性的指向を公開すること)しないし、本当に効果があるのか?」と考える人もいるでしょう。そもそもカミングアウトを施策効果の目標に設定すること事態適切ではありません。

 カミングアウトをする・しないは本人が選択し、そのうえでカミングアウトをしたい社員は安心してカミングアウトができる職場環境を構築することを目標とすべきです。ただそうはいっても目に見える成果がないと企業としては施策の導入・推進には踏み切れないという声が聞こえてきそうです。この点についての調査をみてみましょう。

 
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多様性に関して何らかのサポート制度があるとの回答は16.3%にとどまる
(出典:電通ダイバーシティラボ「
LGBT調査2018
」より)


まず職場におけるLGBT施策の有無に関するデータをみてみましょう。DDL「LGBT調査2018」によると、回答者が勤めている企業に性の多様性に関して何らかのサポート制度があるとの回答は16.3%にとどまり、「ない」または「わからない」との回答は83.7%にのぼります。

 虹色ダイバーシティと国際基督教大学 ジェンダー研究センターが発表した「niji Voice 2018」の結果もほぼ同様で、職場のLGBT施策について「特に何の対応もない」という回答が70%以上となっています。

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職場のLGBT施策の数
(出典:虹色ダイバーシティ、国際基督教大学 ジェンダー研究センター「niji Voice 2018」)

 同調査によるとLGBT施策の有無・数については企業規模(大企業・中小企業・小企業)で差異が認められ、「まったくない」の割合が、大企業53.4%、中小企業79.5%、小企業81.9%となっています。

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企業規模とLGBT施策の数の関係
(出典:虹色ダイバーシティ、国際基督教大学 ジェンダー研究センター「niji Voice 2018」)

 一方、何らかの施策を導入している企業の割合は、大企業46.6%、中小企業20.6%、小企業18.1%となっています。企業の取り組みが、特に中小企業において進んでいない現状が明らかになっています。なお、導入を希望するLGBT施策としては過半数が「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い」、「差別禁止の明文化」、「トランスジェンダーの従業員へのサポート」、「職場での性的マイノリティに関する研修、eラーニング」を挙げています。

 次に施策の効果についてみてみます。「niji Voice 2018」が、企業のLGBT施策の数と職場における「心理的安全性」、「働きやすさ」、「相談しやすさ」、「メンタルヘルス」各項目との相関関係を調査しています。

 なおメンタルヘルスについては、一般住民を対象とした精神的な問題の程度を表す指標として広く利用されているK6で4点以下を基準としています。詳細は調査結果を参照いただければと思いますが、企業のLGBT施策数が多いほど正の相関関係があることが示されています。企業として、施策導入の効果をはかる必要があるということであれば、「niji Voice 2018」の手法を参考として、施策開始前と施策開始後に社内アンケートを実施・分析することが考えられるのではないでしょうか?

LGBT施策、「待ち」の姿勢では危ない

 LGBT当事者を含むすべての社員が安心して働くことのできる職場を構築することは、法令遵守、法的リスクの回避、社員の人権保護という観点から重要であり、労働契約法等に基づく企業の基本的な義務です。

 裁判例に照らすと、安全配慮義務違反については多くの場合、企業の予見可能性、予見可能性に基づき適切な制度整備を行っているかが問われています。社会の動き、そして数多くの調査に照らせば、現実に問題が発生した場合、LGBT当事者が直面する職場の困難について予見可能性がなかったとの主張がそのまま認められる可能性は極めて低いといわざるをえません。

 なお、企業がLGBT支援に取り組むことは上記のような負の効果の防止という側面のみならず、経団連「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」報告書が指摘するとおり、幅広いプールからの人材獲得と退職の抑制、働きやすい社内環境の整備による生産性の向上、自社のブランド価値向上、ビジネスの拡大など、多くのプラスの効果も期待できます。

 セクハラ指針はすでに2年前に改正されています。今後パワハラ指針の施行を待って取り組みを進めようと考えている企業もあると思いますが、それまで待つことが果たして適切でしょうか。今一度社内でご検討いただくことをおすすめします。
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