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  • 2018/08/03

トランスフォビアとは何か?お茶の水女子大、「英断」の意味を解説

衆議院議員の杉田水脈氏が『「LGBT」支援の度が過ぎる』という論稿を雑誌『新潮45』に発表した。その内容は「LGBT嫌悪」に満ちており、ネット上で炎上し続け、27日には自民党本部前に5000人(LGBT法連合会事務局発表)が集まり、杉田氏の辞職を求め、抗議活動を行った。LGBT嫌悪は、ホモフォビア(同性愛嫌悪)とトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)といった「嫌悪」から成り立つ。今回は後者について解説。お茶の水女子大が発表した「性自認が女性のトランスジェンダー学生を受け入れる方針」に対する対応も合わせて掘り下げていく。

LGBTコンサルタント 増原 裕子

LGBTコンサルタント 増原 裕子

LGBTコンサルタント/株式会社トロワ・クルール代表取締役。慶應大学大学院修士課程、慶應大学文学部卒業。ジュネーブ公館、会計事務所、IT会社勤務を経て起業。2013年、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ国内外で話題に。2015年渋谷区同性パートナーシップ証明書交付第1号。ダイバーシティ経営の一環としてのLGBT施策推進支援を手がける。経営層、管理職、人事担当者、営業職、労働組合員等を対象としたLGBT研修の実績多数。著書に『同性婚のリアル』など4冊がある。

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LGBT嫌悪の中にはトランスフォビアとホモフォビアなどがある
(© taa22 - Fotolia)


トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)とは

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 トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)という言葉は、「〜を超えて」を意味する接頭辞「trans」と、「恐怖症」という意味の「phobia(フォビア)」からできている。そこから全体として、「トランスジェンダーの人たちに対する嫌悪感や恐怖感など、否定的な感情や価値観」を意味する。

 トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別とは異なる性別で生きる人/生きたい人のことを指す。トランスジェンダーの中で、一定の医学的な診断基準を満たした人がつけられる診断名を「性同一性障害」と言う。

 かつてテレビドラマ『3年B組金八先生』で上戸彩氏が演じた鶴本直という役は、性同一性障害の認知を広げた。

 先月、お茶の水女子大学は国内の女子大で初めて、戸籍上は男性だが、自ら認識する性(性自認)が女性であるトランスジェンダーの学生を、2020年度から受け入れると発表した。

 社会の変化に沿って、性の多様性(ダイバーシティ)をインクルージョンする(受け入れる)画期的な決断だとして歓迎する声が上がり、容認派が多数である一方で、ネット上ではさまざまな批判や反対意見も噴出した。

 たとえば「女性だと偽って受験する男子学生がでてきたらどうするのか?」「ほかの女子学生が混乱するのでは」「そういう人たちがなぜわざわざ女子大に入ろうとするのか。共学であれば今でも入れるのに」といった声だ。

「よーし、今から受験勉強に挑戦して、2020年にお茶の水女子大学に入学を目指すぞ!」

 作家の百田尚樹氏は、Twitterにこのような投稿をして物議を醸した。冗談めかした口調だが、トランスジェンダーを揶揄する発言には、作家としての見識を疑う。「トランスジェンダーはネタにして笑っていい存在なんだ」という認識が、その発言の根底にあるからだ。


 性的少数者は「見えないマイノリティ」または「見えづらいマイノリティ」といわれることがある。性的少数者は一見しただけで「レズビアンだ」「ゲイだ」「バイセクシュアルだ」とわかることが多くないからだ。

 車いすユーザーと比較すると分かりやすいだろう。車いすユーザーは車いすに乗っているところが周りの人の目に入り、「この人は車いすユーザーだ」と認識される。しかし、性的少数者は必ずしもそうではない。そういう意味で、性的少数者は「見えないマイノリティ」「見えづらいマイノリティ」といわれる。

 しかし、トランスジェンダーが性別移行(服装や髪型などの見た目や身体を生まれ持った性別のものから変えていくこと)を始めると、途端に「見た目の差別」にさらされてしまう。典型的な男性または女性の見た目からはみ出す存在として、社会の中で暴力や差別に見舞われるのだ。

 アメリカ最大のLGBT人権団体であるヒューマン・ライツ・キャンペーンによれば、アメリカで2017年には少なくとも28人が、2018年にはすでに少なくとも15人が、ヘイトクライム(憎悪犯罪)によって命を奪われている。

 ヒューマン・ライツ・キャンペーンが発表した数字にも現れているように、アメリカでは、2015年に全米で同性婚が法制化されたが、トランスジェンダーへの差別・偏見・暴力についてはまだまだ大きな課題が残っている。

 いくつかの州では、トランスジェンダーであっても出生証明書に記載された性別に合わせたトイレ使用を義務付ける州法をめぐって、いまだ論争が続いている。

 また、2017年にはトランプ大統領がTwitterで「米国政府はトランスジェンダーが軍で働くことは認めない」という方針を突然発表して大きな問題となった。その後、国防総省は、「2018年1月からトランスジェンダーの人たちが軍に入ることを認める」と発表していったん解決したが、トランスジェンダーは常に排除されるかもしれないという不安定な状態に置かれているといえるだろう。





 日本でも、トランスジェンダーは高い割合で差別、暴力、性暴力に直面している。差別や偏見により、正社員として働くのが難しいことから、結果として貧困の問題にもつながっている。

なぜトランスフォビアが起きるのか? 構造と背景、理由

 では、なぜトランスフォビアによる差別や排除が起きてしまうのか?

 日本の文化においては、伝統的には性やジェンダーの多様性がある程度受け入れられてきた。だが明治以降の西欧化・軍国化の過程で、「男女の二元論」と「異性愛主義」という強固な性規範が日本社会のスタンダードとして根づいていくことになる。

 性別を「越境」するトランスジェンダーは、この性規範を乱し、揺さぶる存在とみなされてしまい、フォビアの対象となりがちだ。

 また、見た目の差別・偏見、美醜差別も大きい。人は無意識のうちに、他人をパッと見て男性か女性かに振り分けて認識している。性別移行中などで、見た目が典型的な男性または女性に見えない人に対して、どっちの性別なんだろう?ということが気になってしまう人が多い。

 この文脈で、性自認が中性、両性、無性などの「Xジェンダー」に対しても、なかなか理解がされづらい。見た目が中性的な場合が多いXジェンダーなどの、「中間領域」に対する社会的許容度が低いのだ。

 これは、日常生活やいろいろな制度設計が男女二元論を大前提として成り立っている弊害とも言えよう。二元論的な考え方を少し緩めるだけでも、トランスジェンダーやXジェンダーとの共生の仕方がぐっと改善するはずだ。

 もう一点、特にトランスジェンダー女性(生まれの性別は男性、性自認は女性)に特有の困難は、男性の性犯罪者と混同されてしまいがちということだ。実際に公共のトイレなどで性暴力の加害をする男性がいて、被害を受けた女性も多いことから、「もともと男性で生まれた人」だというだけで、トランスジェンダー女性が女性トイレを使うことに対して、抵抗感を示す女性も少なくない。

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 トランスジェンダー女性とは、生まれついた性別は男性だが、自分のことを女性だと認識している人のことだ。その意味では、トランスジェンダーではない女性と、性自認が女性である点についてはなんら変わりない。

 トランスジェンダー女性は、性犯罪者のせいで、迷惑を被っている。この点については、この誤解を根気強く解いていくことと、性犯罪対策の両方が必要となる。

【次ページ】経営課題、人材マネジメントの課題としてのトランスフォビア

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