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  • 2018/11/06 掲載

「ゾーニング」とは何か?LGBTのアウティングを防ぐために知っておくべきこと

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LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者)が性的指向(好きになる性)・性自認(自分はどの性かという認識)を自分以外の人に伝えることを「カミングアウト」という。この言葉はよく聞かれるようになったが、カミングアウトは「するか・しないか」の二択ではないことはあまり知られていない。実は、LGBTは「ゾーニング」をしながらカミングアウトしていく。最近ではLGBT当事者の性的指向・性自認を暴露する「アウティング」という言葉にも注目が集まるが、アウティングはゾーニングの理解が足りない場合に起きることが多い。ゾーニングとアウティングの関係、そして企業がとるべき対策を解説する。

LGBTコンサルタント 増原 裕子

LGBTコンサルタント 増原 裕子

LGBTコンサルタント/株式会社トロワ・クルール代表取締役。慶應大学大学院修士課程、慶應大学文学部卒業。ジュネーブ公館、会計事務所、IT会社勤務を経て起業。2013年、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ国内外で話題に。2015年渋谷区同性パートナーシップ証明書交付第1号。ダイバーシティ経営の一環としてのLGBT施策推進支援を手がける。経営層、管理職、人事担当者、営業職、労働組合員等を対象としたLGBT研修の実績多数。著書に『同性婚のリアル』など4冊がある。

ゾーニングとは何か

 ゾーニングとは、「どの範囲の人にまでカミングアウトをするか」という線引きのことをいう。 この言葉は「区分、区画する」という意味の英語の動詞「zone」から来ている。

 LGBTの当事者の多くは、「まずは親友にだけ打ち明けよう」とか、「身近な人にはカミングアウトしているが、職場では絶対に隠しておこう」など、自分の中でゾーニングをしながら、カミングアウトの範囲をコントロールしている。

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ゾーニングの例

 ではなぜこのようなゾーニングが必要になるのか?

 それは、LGBTやSOGI(ソジ。性的指向・性自認のこと)についての理解が十分に浸透しておらず、根強い差別や偏見がある社会の中では、カミングアウトをすることがつねにリスクと背中合わせだからだ。

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 大切な家族や友人からの拒否、学校や職場から居場所を奪われることなどを恐れているからこそ、カミングアウトは範囲を決めて慎重に行われるのだ。

 「この人には本当の自分を知ってほしい」「もう嘘をつき続けるのはつらい」「この人になら打ち明けても大丈夫そうだ」「職場で困っていることがあるから、この人にだけは相談したい」。LGBT当事者はこういった切実な思いを胸に、おそるおそる信頼している相手にカミングアウトする。

 誰かからカミングアウトを受けた場合には、その人のゾーニングを確認して、尊重しなければいけない。職場であれば、すでに誰にカミングアウトしているのか、これから誰にするつもりなのかなどの確認が必須だ。このプロセスが抜けてしまうと、本人のゾーニングを超えて、その人の性的指向・性自認が望まない範囲の人にまで知れわたってしまうことになりかねない。

アウティングとは何か

 カミングアウトとは、LGBTの当事者が、自分の性的指向・性自認を伝えたい人に、伝えたいタイミングで打ち明けることだ。

 これに関連した言葉に「アウティング(暴露)」がある。アウティングとは、カミングアウトを受けた人が、カミングアウトした当人の同意がないままに、その人のセクシュアリティを第三者に教えてしまうことだ。暴露するという意味の英語の動詞「out」から来ている。

 本人のゾーニングよりも外の範囲の人に、本人以外の人間が勝手にセクシュアリティを知らせてしまうことと説明できる。

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アウティングの例

 アウティングについては、下記のようなケースが職場でよく起こっている。

 LGBTの社員が信頼できると思っていた上司にだけ、まずはカミングアウトをした。しかし、上司には「まずは上司にだけ」というニュアンスが伝わらず、翌日その社員が出社すると、職場全員がそのことを知っていて、慄然とするーーー。

 このケースでは、上司がゾーニングやアウティングという概念も持ち合わせておらず、もともと想定されていた「上司だけ」というゾーニングの外にいる「そのほかの社員」に部下がLGBTであることを教えてしまったのだ。

 このような場合に、LGBTの社員がその職場で働き続けられなくなってしまうこともある。いじめに遭ってしまったり、無視されたり、あるいは本人がショックを受けてメンタルヘルスを悪化させてしまったりすることもある。

 カミングアウトを受けた上司が良かれと思って人事やほかの管理職に伝えてしまう場合もある。そこに悪意がないとしても、本人は準備ができていないことも多く、戸惑ったり傷ついてしまうことがある。

 悪意があってもなくても、アウティングに変わりはない。そして、本人の意に沿わない範囲で本人の性的指向・性自認が知られることは、本人の意志を無視しているので、プライバシーの侵害でもある。そして、アウティングというプライバシーの侵害を行えば、裁判で訴えられることも十分にあり得る。

【次ページ】アウティング防止のために企業がとるべき対策

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