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  • 2019/10/10 掲載

メルカリ会長ら提言「日本の人事はプライド高すぎ」「人手不足は大チャンス」

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日本最大級のチームリーダーカンファレンス「PxTX」に、メルカリ会長(取材当時は取締役社長)の小泉 文明氏、2019年版「働きがいのある会社」第一位になったアトラエの代表取締役 新居 佳英氏、一橋大学大学院 教授の楠木 建氏が登壇。令和時代の経営・人事部門のあり方について率直な言葉を交わした。
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セッションのグラフィックレコーディング。内容の詳細(一部抜粋)は下記


「年功序列・終身雇用制度は日本の文化」という間違い

楠木 建氏(以下、楠木氏):まずは私から、日本の企業や現状、将来についてどう認識しているのか話します。

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一橋大学大学院
経営管理研究科 教授
楠木 建氏

 「日本的経営」というと、年功序列の評価制度や終身雇用制の労働契約などの話になりますが、正直うさんくさい感じがします。「日本的経営」は実際は第二次世界大戦が終わってから高度成長期の間のみ、日本で見られたことです。それ以前の日本では、米国よりも短期雇用かつ労働市場の流動性が高く、決して年功序列ではありませんでした。

 戦後復興期から高度成長期にかけて、この経営スタイルがものすごくうまくいったことで「経営のイノベーション」とも言われました。ただ、社歴や年齢でポストを与え昇進させる組織体制は、誰が聞いてもおかしな話です。みんなが同じベクトルを向いていた状況下では、ものすごく低コスト、かつ透明性の高い評価制度とみなされましたが、今ではもう時代とずれています。

 それが、いつの間にか年功序列や終身雇用が「日本的な経営」とか「日本の文化」と言われ出しました。私は、100年も続かないものを“文化”とは言えないと思います。また、さまざまな業態の企業が存在する中、「日本企業」という集合名詞で捉える意義はほとんどないと思います。これが、今回の議論における大前提となります。

アトラエ 新居 佳英氏(以下、新居氏):「日本的経営や日本企業の現状の問題点」と言う場合、おおよそ製造業を中心とする、ヒエラルキーの非常に強い組織体系を代表的なイメージとして話されるのでしょうね。

 高度経済成長期における日本の企業は、塀の中に社員を囲って、その中にいればみんなの幸せが長期にわたり保証されるというものでした。塀の中にいる間は「会社の言うことをなんでもいうことを聞きなさい」、塀の外に出たら「守ってあげられない、危険だよ」と言い続けてきました。漫画『進撃の巨人』のような世界だったと言えます。

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アトラエ
代表取締役
新居 佳英氏

 現在は、企業の中心にはまずビジョンやフィロソフィー、ミッションがあって、それに共感した人がチームを組んでビジネスをやっていく、という本来の企業のありように戻りつつあります。年功序列も社員を囲うことも本来はおかしいこと。それが長く成功体験として残り続けていることが一番の問題だと思います。

メルカリ 小泉 文明氏(以下、小泉氏):戦後復興期では「護送船団方式」で、すべてが同じ計画経済的なもので、それはそれで正しかったと思います。しかし、これだけグローバルでの競争が進む中、ミッションがないと人材を確保できません。そのミッションにどうやって組織戦略をアジャストしていくのかが、これから企業が工夫していかなければいけないところだと思います。

働きがいのある会社の採用基準とは

楠木氏:人材確保という観点では、特にメルカリの場合、完全にグローバル採用にかじを切っていると思いますが。

小泉氏:創業から6年たちますが、3年目からグローバル採用の方針を打ち出しています。現在は40カ国の人が働いていて、海外勢は全体の3割を超えています。2018年の新入社員は海外の方が多かったです。

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メルカリ
取締役President (会長)
小泉 文明氏

 実感としては、グローバル採用はめちゃくちゃ難しいです(笑)。コミュニケーションの問題などいくつかの課題があります。最近、「ESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)」を推進するプロジェクトチームを発足し、「SDGs(持続可能な開発目標)」に関するメッセージを打ち出しました。グローバルメンバーにメルカリに来た理由を聞くと、「アプリやサービスはあくまで手段であって、本当にやりたいのはサステナビリティを与えられる会社だから日本に来た」といいますね。

 社会的に本質的に価値があると思えるものは、国境を越えます。グローバルで事業を展開するには、まさしく国籍を超えたプロミス(約束事)を作っていくことが大事です。これができていれば、いろいろな人と束になれると感じています。

楠木氏:新居氏が経営されているアトラエは、GPTWジャパンが実施した、2019年版「働きがいのある会社」ランキング調査の従業員25~99名部門で第1位を獲得していますね。

 これは良いことですが、「働きがいがある会社」といっても万人にとっていい組織ではないのではということです。企業のミッションとかカルチャーは、普遍的なものである必要はありません。単純に合う・合わないという「好き嫌い」も出てくると思います。

新居氏:私たちアトラエのミッションが100%万人受けするものではないという自覚はあります(笑)。当社における採用条件は、スキルよりも私たちの「バリュー」(価値観)に対する共感や共鳴、共有してくれる人材であることが大前提となります。

小泉氏:メルカリの採用条件もまったく同じですね。メルカリには「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」という3つのバリューがあります。それらに共感してくれることが重要ですね。入社後は、基本的には「OKR(Objective and Key Results)」と「バリュー」という2つを用いた人事評価をしています。人材確保に関しては、バリューをベースに評価することを一気通貫で行っています。

 メルカリにおける人事評価では、透明性を重視しています。「この会社はどういう人を評価し、どういう人を大事にして、どういう人に働いてほしいか」という軸がないといけません。経営者が変われば、評価軸が変わるのでは働く人はたまったものではありません。評価軸がないと、自分がその会社とフィットできるかの判断ができません。これからはバリューを定義しないと、そもそもその会社が何者なのか、透明性が低くなると思います。

新居氏:当社では、組織の中での貢献度合いを「Pay for contribution」として評価基準として取り入れています。自分の担当範囲外のことでも貢献できることはどんどんやる、ということをポリシーにしています。その評価基準で確実に評価できるようなシステムを現在構築中です。

「野球型」から「サッカー型」へチームは変化する

楠木氏:法人が“組織”というならば、そこにはいろいろな“個人”がいて、その中間に“チーム”があります。組織がオーナーシップを持つものと定義できるとすれば、チームとは「普段から一緒に働いていて、それぞれの行動がお互いに影響を与え合う“相互依存関係”を認識できる範囲のこと」を指すと言えるでしょう。実際、組織のパフォーマンスの良しあしは8割方チームにあると思いますが、いかがでしょうか。

【次ページ】日本の人事はプライド高すぎ、「ビバ、人手不足」

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