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  • 2024/09/20 掲載

ADAS(先進運転支援システム)とは何かを完全解説、自動運転との違いや7つの機能など

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自動車の運転を支援してくれる装置やシステムの搭載が、当たり前のような時代になった。こうした安全運転や自動運転を支える重要技術がADAS(Advanced Driver Assistance System:エーダス)だ。ADASとは、先進運転支援システムのことで、搭載が義務化された衝突被害軽減ブレーキや、義務化が検討されているペダル踏み間違い防止装置などを含む、自動車の運転を支援するシステムの総称だ。本記事では、これからのクルマに必須となるADASについて、自動運転との違いや関係、システムの種類、価格などをわかりやすく解説する。
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ADASとは何か
(Photo/Shutterstock.com)

ADASとは何か

 ADAS(Advanced Driver Assistance System / 先進運転支援システム。読みは「エーダス」)とは、車両に装着された各種センサから得た情報を基に、車両周辺の状況を確認し、安全性の確保や、運転の快適性を向上させることを目的として、アクセル、ブレーキ、操舵(そうだ)などをコントロールするシステムの総称だ。

 ADASは特定のシステムを指すものではなく、複数のシステムが含まれる。そのうちの1種である、衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務化(一部未施行)されており、今後はペダル踏み間違い防止装置も義務化される予定である。

 こうした義務化などが後押しとなり、市場規模も右肩上がりで拡大していく見通しだ。詳しくは次のページで解説する。
 

ADASの歴史

 国内におけるADASの歴史は、1991年にさかのぼる。自動車事故の削減に向け、国土交通省がASV(先進安全自動車)推進会議を開始し、安全装置の技術検証を始めたのが同年である。

 2009年11月、モスクワで行われた世界閣僚会議において、2011年~2020年の10年間で交通事故による死者数を半減する目標が掲げられた。これを受け、自動車の安全性を評価してきたNCAP(New Car Assessment Programme/新車アセスメントプログラム)などを中心に、交通事故への予防安全に対する取り組みが本格化したと言われている。

 自動車における安全技術は当初、エアバッグやシートベルト、自動車の構造体に対する衝突安全性能などのパッシブセーフティーが中心だった。しかし、側前方衝突警報装置、自動ブレーキなど、ADASに分類されるアクティブセーフティーへと注目が移り始めている。

 なお、Euro NCAP(欧州自動車安全性評価機関)はさらなる交通安全達成のため、2030年までにV2X(Vehicle to X/自動車とさまざまなものを通信する技術)通信の評価項目への追加を予定している。今後のADAS進化・発展と深い関係がある、V2X通信についてはこのあと解説する。

ADASと自動運転(AD)の違い

 よく、ADASと自動運転(AD)は何が違うのかという声を聞く。この違いについて国土交通省は運転操作を実行する主体が人かシステムかで区別しており、レベル1・2が運転支援、つまりADASであり、レベル3以上を自動運転とみなしている(図1)。

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図1:自動運転はレベル0からレベル5までの6段階に分類される
(筆者作成)

 なお、日産自動車の自動運転レベル2に該当する「プロパイロット2.0」のように、ハンズフリーでの自律走行機能を「自動運転レベル2+」「自動運転レベル2.5」と呼ぶケースもある。

 ただ、ADASと自動運転は共通することが多くあるため、ADASの開発がそのまま自動運転の開発につながる。つまりADASは自動運転を支える基礎技術と言えるのだ。

自動運転を支える「ADAS」の限界

 5~6年前、筆者がADASに使用される各種センサーの大手メーカーに取材したとき、担当者は自信を持って、「我々のセンサー群を使えば、実は自動運転は実現できる段階に到達している」と断言していた。

 しかしどうやら、この発言は間違いだったらしい。

 「SIP 協調型自動運転ユースケース」では、自車の車載センサーのみで自動運転を行う、自立型自動運転システムの限界について、25のケースを紹介している。

 たとえば、現在のセンサー技術では信号機の灯火色を正確に認識することは困難なことが挙げられる。また高速道路ICにおける合流なども、車両が前後斜め各方向に存在し、しかも刻一刻と移動していく周辺状況を、車載センサーだけで把握するには限界がある。

 自立型自動運転システムをベースに、車両間・道路などのインフラ間で相互通信を行う協調型自動運転システムであれば、信号機から灯火色の情報を受け取り、あるいは合流車両・本線走行車両が相互に速度情報や位置情報を通信・共有すれば、より円滑により安全な状態を実現できる。

 わかりやすく、また高い交通安全効果が見込まれるのは、追突事故の発生が予見されるケースだろう。何かしらの理由で、急ブレーキをかけた先行車が、「急ブレーキをかけた」ことを通信によって後続車に緊急伝達できれば、追突事故回避の可能性は格段に高まる。

 さらに、路地などから人や自転車などが飛び出した際、街中に設置された対物センサーによって、車両側に伝達できれば事故を防ぐことができる。

 このような協調型自動運転システムを支えるのが、V2X通信である。

ADASを補完する「V2X通信」とは

 V2X通信は、コネクテッドカーと混同されることがあるが、それは間違いである。コネクテッドカーはV2N通信(車両-クラウド/Vehicle to Network)を指すが、V2X通信は、V2N通信を含む、以下の通信形態すべてを含むからである。

  • V2V通信:車両間/Vehicle to Vehicle
  • V2P通信:車両-歩行者/Vehicle to Pedestrian
  • V2I通信:車両-路側インフラ/Vehicle to Infrastructure

 ある試算では、車両と歩行者・自転車・二輪車の交通事故発生について、15年後にはADAS単体で55%防止できるが、V2Xを追加搭載することで防止率を78%にまで引き上げられるとしている。

 V2X通信をADASに含めることには違和感もあるが、さりとて交通安全の高度化や、自動運転を論じる上では同じ文脈上にある。そのため、本稿でもV2X通信を紹介した。

 V2X通信の経済効果についても紹介しておこう。「5G(第5世代移動通信システム)」の活用を研究する国際組織「5GAA」によれば、欧州におけるV2X通信導入による経済効果は、200~430億ユーロ(3.2兆円~6.9兆円)と試算している。内訳は、約80%が道路交通の効率化、約17%が交通事故防止効果である。

ADASに含まれる「7つの機能システム」

 ADASは先述のとおり、複数のシステムが含まれる。代表的なものを挙げよう。

・ペダル踏み間違い防止装置
 アクセルとブレーキの踏み間違いを防止する装置。高齢者による事故の増加を踏まえ、政府は搭載を義務化する方針を打ち出している(義務化の時期は未定)。

・自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ<AEBS/Advanced Emergency Braking System>)
 前方に障害物があり、かつドライバーがブレーキ操作などを行わず衝突の危険性がある場合に、自動的にブレーキを作動させる装置。前方衝突警告装置(FCW/Forward Collision Warning)と組み合わされる。

 自動ブレーキの搭載は、以下の図2のスケジュールで義務化される。

  国産車 輸入車
新型車
(新しいモデルの車種)
2021年11月 2024年7月
継続生産車 2025年12月 2026年7月
図2:衝突被害軽減ブレーキの義務化施行スケジュール
(出典:国土交通省 リリース

・車線逸脱防止支援システム(LDW/Lane Departure Warning)
 自動車が車線から外れるような動作をしたときに、アラート発報を行い、また車線内での走行を維持するためのステアリング操作をアシストするシステム。

・先行車に追従するクルーズコントロール(ACC/Adaptive Cruise Control System)
 一定の速度をキープして走行するクルーズコントロールを進化させ、先行車を検知し、車間を維持した状態で走行を継続する装置。 【次ページ】「もう3つの機能システム」や「ADASの価格」「市場規模」など解説
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