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  • 2019/11/22 掲載

従業員のために開発した“スーツに見える”作業着、取引先はなぜ欲しがった?

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一見スーツにしか見えない作業着「ワークウェアスーツ」が、さまざまな業界のあらゆる職種で採用されている。元は、水道工事業のオアシスソリューションの作業者用ユニフォームで市販の予定はなかったが、デザイン性の高さが注目されて市販されることになった。汚れて当たり前の作業着を、あえてスーツスタイルにしたのはなぜか? 市販化に当たり設立されたオアシススタイルウェアの代表取締役 中村有沙氏に、誕生までの歩みや市販後の事業展開などについて話を聞いた。

フリーランスライター 大澤裕司

フリーランスライター 大澤裕司

フリーランスライター。1969年生まれ。月刊誌の編集などを経て、2005年に独立してフリーに。工場にまつわること全般、商品開発、技術開発、IT(主に基幹系システム、製造業向けITツール)、中小企業、などをテーマに、雑誌やウェブサイトなどで執筆活動を行なっている。著書に『高すぎ? 安すぎ!? モノのねだん事典』(ポプラ社)『これがドクソー企業だ』(発明推進協会)、共著に『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ)がある。

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オアシススタイルウェア 代表取締役 中村有沙氏


「ワークウェアスーツ」とは?

「あなたは作業着のままデートに行けますか?」

 こんな質問をされたら、おそらく「行けない」と答える人が多いだろう。汚れているかもしれないし、何よりオシャレじゃない。

 しかし世の中には、デートにも着て行けるオシャレな作業着がある。オアシススタイルウェアの「ワークウェアスーツ」がそれだ。

 2018年3月に発売された「ワークウェアスーツ」はスーツタイルの作業着。男女ともにラインナップされており、法人はもちろんのこと、個人もインターネット通販や三越伊勢丹グループの百貨店、セレクトショップで購入できる。建設やリフォームなどあらゆる業界で採用されており、法人ではこれまでに250超の採用実績がある。

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スーツスタイルの作業着「ワークウェアスーツ」男性用
(提供:オアシススタイルウェア)
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スーツスタイルの作業着「ワークウェアスーツ」女性用    
(提供:オアシススタイルウェア)

 オアシススタイルウェアは持ち株会社のオアシスライフタイルグループ傘下の企業で、2017年12月に誕生。マンション向け水道工事業のオアシスソリューションから分離独立した。

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ワークウェアスーツの5つの強さ

 「ワークウェアスーツ」はスーツとはいえ作業着。開発に当たっては次の点に気を使った。
  1. ストレッチ性が高いこと
  2. 軽いこと
  3. 家で丸洗いでき、干せばシワが伸びること
  4. はっ水性が高いこと
  5. ポケットが多いこと

 これら5点は実際、商品にどう反映されたのか? そのうちのストレッチ性とはっ水性について検証した。

 まずはストレッチ性。普通のスーツはそもそも伸びないが、「ワークウェアスーツ」は手で引っ張るとよく伸びる。伸びると屈んだり体を曲げたりした時に引っかかったりすることがないので、着心地が快適なことが想像できる。

 次にはっ水性。ジャケットに水を掛けてみたところ、まったく染み込むことなく弾いた。はっ水性が強いと濡れる心配がないので、身だしなみを整えやすく、得意先から好印象を得る上で有効だと思われる。

 ポケットの数や大きさも確認した。数は、ベーシックな男性用スーツで上下合わせて12。一般的な男性用スーツにはないものとして、ジャケットの表に2つの隠しポケット、パンツの側面に大きめのジップポケットが1つある。工具をはじめとしたさまざまなものを持ち歩けるよう、デザイン性を損なうことなく収納力を高めた。

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ジャケットの袖を引っ張ってみたところ。一般的なスーツと違い伸びることが確認できる

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ジャケットに水を掛けてみたところ。強力なはっ水性を有している

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ジャケットのサイドポケットの脇には隠しポケットが

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男性用パンツの太もも部に設けられた大口のジップポケット

作業着のまま仕事終わりにデートに行けるのか?

 「ワークウェアスーツ」の誕生は、オアシススタイルウェアの母体がオアシスソリューションであることと関係がある。代表取締役の中村有沙氏は次のように話す。

「ワークウェアスーツ誕生のきっかけは、オアシスソリューションの作業員が着用するユニフォームのリニューアルでした。水道工事業界は平均年齢が50歳を超えると言われ、若手の採用が難しいところ。業界のイメージを少しでも変えたいという思いと、若手のさらなる採用を目的に、ユニフォームをリニューアルするプロジェクトを立ち上げることになりました」

 プロジェクトメンバーは5名。当時、オアシスソリューションの人事部にいた中村氏ともう1人の人事部スタッフのほか、当時オアシスソリューションの社長だった関谷有三氏(現オアシスライフスタイルグループ 代表取締役)、現場スタッフ男女各1名ずつで構成された。20代、30代の若手が中心になり、1年半ほどの活動期間を経て、2017年秋から社内でワークウェアスーツを使い始めた。

 コンセプトは「作業着のまま仕事終わりにデートに行けるもの」。以前から、「作業着で通勤するのは少し抵抗があり恥ずかしい」「営業はスーツを着ているから、着替えることなくデートに行けてうらやましい」といった声が現場の若手スタッフから聞かれていたことを受けて決まった。

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「ワークウェアスーツ」にリニューアルする前のオアシスソリューションの作業着
(提供:オアシススタイルウェア)

 アイデアとしては、カジュアルな要素が強いストリート寄りのものや、ハーフパンツ、ブルゾンといったものがあった。しかし、「自分自身がどんな人とデートしているか? を考えたところ、ジャケットを着ていたりスーツで決めている人が多かった」(中村氏)ことから、「スーツで作業できればいいのでは」という結論に至った。

 それに水道工事は、客先で接客も行う。お客さまから見て第一印象が良く思われる身だしなみでなければならいことも、スーツにする決め手になった。

 しかし、オアシスソリューションにアパレルやテキスタイルのノウハウはない。開発は手探りで進めて行かざるを得なかった。

 まず、つくってくれるところを見つけなければ話にならなかった。中村氏の知り合いを頼ってアパレル関係の会社を探し、何とか引き受けてくれるところを見つけることができた。

 「とにかくわからないことだらけ。試作品をつくっては現場のスタッフに試着してもらい、意見をもらうことを繰り返しました」と振り返る中村氏。つくった試作品は4、5品程度だが、アパレルの試作はせいぜい2回程度なので、通常よりは多い。ジャケットの胸ポケットのシッパーを左右のどちらから開けるようにした方が使いやすいかなど、細かな使い勝手を検証。使いにくいと意味がないので、妥協せずつくり込んだ。

 開発では、生地探しも難航した。理想的なものを見つけるべく、100種類以上のサンプルを集めて検証。スポーツウェアにも使われるある生地が理想に近いことから、活用することにした。

【次ページ】従業員用だったワークウェアスーツに三菱地所から購入希望

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