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- 2018/02/21 掲載
日本初の農薬散布用ドローン、TEADの「Mulsan DAX04」誕生秘話
日本初の農薬散布用ドローン
性能認定に関するガイドラインができ、農水協による初の認定が行われたのは2016年4月。TEADの「Mulsan DAX04」が日本ではじめて、農水協の性能認定を受けた。Mulsan DAX04は2016年7月に発売され、これまでに200台強が売れている。
あえて重く作った機体を4枚のプロペラで飛ばす
Mulsan DAX04のサイズは1650×950×692mmと軽トラックの荷台に余裕で収まり、最大10リットルの農薬を搭載できる。フライト可能時間は10~14分で、8~10分で1ヘクタールに農薬を散布する。また、機体重量が競合機種より重く、25キロを超えている。航空法では最大離陸重量が25キロを超える無人航空機は、25キロ未満のそれと比較して要求される機能や性能が厳しくなる。しかし、古屋氏は、「Mulsan DAX04はあえて25キロを超えて作った」と言う。その理由は、「厳しくなる基準をクリアした上で性能認定を取得できれば、機体性能の信頼性がより高いものになるから」と話す。
しかも、この重い機体を27インチプロペラ4枚で飛ばしている。「これは単に高出力のモーターを採用すれば解決するわけではなく、制御アルゴリズムにまで関わってくることなので、開発当時はどこでもできるものではなかったはずです」と古屋氏。長年大型ドローンを手がけてきた同社には、アドバンテージがあった。
プロペラを4枚にしたのは、農薬散布時に適した気流が発生できるからでもあった。農薬散布にはダウンウォッシュ(プロペラの回転によって生じる下側に吹き付ける風の強さ)と気流の流れの2つが重要になるが、気流はプロペラの配置の仕方によって変わる。同社の検証では、プロペラ6枚のときの気流と4枚のときの気流を比較したところ、4枚の方が農薬を作物の隅々に行き渡らせる気流ができていたことが確認できた。
農薬散布の仕組みについては、農水協と産業用無人ヘリコプター大手のヤマハ発動機が確立した基準を元に開発した。農薬を吹き付けるノズルはヤマハ発動機の無人ヘリコプターに搭載されているものとほぼ同じものを活用しているほどだ。
ただ、無人ヘリコプターとドローンでは発生するダウンウォッシュが異なるので、農薬散布の仕組みが無人ヘリコプターとほぼ同じでもきちんと行き渡るとは限らない。きちんと行き渡らせるために、ノズルの仕様や取り付け位置、角度などの見直しのほか、飛行速度や高度といった飛行条件なども見直しも必要で、1年間かけて検証した。飛行条件は無人ヘリコプターの場合、飛行高度3メートル(作物上)、散布幅7.5メートルだが、Mulsan DAX04は飛行高度2メートル(同)、散布幅4メートルとした。
やまびこと共同開発したモデルも登場
また、同社は2017年春に、薬剤散布装置の大手であるやまびこと共同開発したMulsan DAX04も発売した。ノズルがモーターの下にあるのが外観上の特徴で、散布装置はやまびこ製だ。開発の背景は、もともと同社が粒剤散布装置を搭載したモデルの開発を目指していたことにある。ライバル社がとある散布装置メーカーと組んだことから、同社はやまびこに協力を打診。やまびこは、ドローンへの参入機会をうかがっていたことから、ドローンに搭載する粒剤散布装置の開発を快諾したが、やまびこには「液剤散布装置も手掛けたい」という意向があったことから、開発することになった。
やまびこが開発した粒剤散布装置も17年春に発売になっている。特徴は、均一に撒けることにある。
それまでの粒剤散布装置はインペラーが回転しながら散布するため、均一に拡散しないという問題点があった。しかし、やまびこがMulsan DAX04用に開発した粒剤散布装置は、アルミ製の専用散布案内板を装着したことにより、真下と真横に均一に拡散するようになった。
【次ページ】開発のきっかけは農林水産省からの相談
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