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  • 2020/02/05

拡大続く「新型肺炎」で中国依存があらわに、経済や東京五輪への影響は?

新型コロナウイルスによる感染拡大が続いており、経済への悪影響が懸念され始めている。日本の場合、7月に東京五輪開催が予定されていることから、事態が収束しなかった場合の影響は計り知れない。国内では政府の対策が後手に回っているとの批判の声が大きいが、国内経済の中国依存が高まっていることに加え、五輪開催を控え、最大の顧客である中国とのビジネスが停滞することを政府は強く恐れている。政府に求められているのは、たとえ朝令暮改になったとしても、常に明確な方針を示し続けることである。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『"投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』(イースト・プレス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方』(ビジネス社)、『お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか』(朝日新聞出版)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)などがある。

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マスクをして大阪を観光する訪日外国人たち
(写真:毎日新聞社/アフロ)


懸念され始める東京五輪への悪影響

 中国の保健当局は2020年2月4日、新型コロナウイルスに感染して死亡した人の数が425人になったと発表した。中国の感染者数は2万438人で、このうち重症の患者は2700人に達するという。日本国内における2月2日時点での感染者数は20人で、武漢からチャーター機で帰国した565人のうち感染が確認されたのは8人なので、単純計算で1.4%の感染率ということになる。

 1.4%というのはかなり高い数字であり、これを単純に武漢市の人口(約1100万人)に適用すると15万人もの感染者がいる計算になり、現時点での武漢の感染者数である5142人を大きく上回る。同じ飛行機に乗り合わせたことについては割り引いて考える必要があるが、それでも武漢における現実の感染者数は、公式の数字よりもかなり多いと思った方が良いだろう(武漢に7万6000人の感染者がいるとの推定もある)。

 これは、感染していても病院に行っていないケースや無自覚なまま感染しているケース、あるいはすべてが発表されていないケースなどが予想される。想像以上に感染者が増えていると推定される中で、死者が400人レベルにとどまっていることは、致死性はそれほど高くない可能性も考えられる。少なくとも日本国内ではまだ死者は出ていないので、冷静に対応した方が良いだろう。

 ただ、感染拡大が長引けば、経済にマイナスの影響が出るのはほぼ確実である。今回の感染拡大に際して、日本政府の対応が後手に回っていると批判する声は多いが、実際、政府の対応は十分とは言えず、経済への悪影響を憂慮し、決断が遅くなっている面があることは否定できない。

 特に日本の場合、7月に東京五輪開催を控えており、事態が長引いた場合、国をあげて取り組んできたイベントに致命的な影響が及ぶ可能性がある。これに加えて日本経済の中国依存が高まっており、政府内部には景気への懸念もあるはずだ。

 だが、逆に言えば、そういった状況であるからこそ、徹底的な対応が必要であり、決断が遅れることは何のメリットももたらさない。新型肺炎による悪影響を最小限に食い止めるには、現実を見据えた上で、合理的な判断を下す必要があるだろう。

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東京五輪への影響は?
(Photo/Getty Images)

安倍政権が習近平国家主席を国賓待遇で招く理由

 現在、日本には年間3200万人の外国人観光客が訪れており、小売店や外食産業はもはや外国人観光客なしには成り立たない。外国人といっても、その半分以上は中国、香港、台湾といった中華圏からの観光客であり、特に中国本土からの観光客は約1000万人と突出している。

 つまり日本における外国人観光客というのは、多くが中国人観光客であって、欧米からの観光客ではない。逆に言えば、中国から日本にやってくる観光客が減ってしまうと、インバウンドビジネス全体が大打撃となってしまう。


 人だけでなくモノのやり取りも同じである。2019年における対中国の輸出入総額は33.1兆円となっており、対米輸出入(23.6兆円)をはるかに上回る。日本はすでに米国ではなく中国と貿易する国に変貌しており、中国への依存が年々高まっている。

 国内には中国に対して良い感情を持っていない人もいるが、日常生活の多くが中国なしには成立しないところまで来ているのが現実だ。政府の対策が後手に回っていることを擁護するつもりはないが、政府が思い切った対策の実施に躊躇しているのは、中国政府に忖度(そんたく)しているのではなく、日本国内への影響を懸念しているからである。

 政府はあえて口にしていないのかもしれないが、仮に事態の収束に時間がかかった場合、東京五輪開催に大きな逆風となるのは間違いない。

 大会期間中、中国からは50万人もの観戦者が日本にやってくるとの試算もあるが、そうなると、外国人観戦者の大多数が中国人で占められる可能性も出てくる。結局のところ五輪観光特需というのは、中国特需そのものであり、政府は何としても中国からの観光客を確保したいはずだ。安倍首相が、習近平国家主席を国賓として招待すべくあらゆる手を尽くしているのはこれが理由である。

【次ページ】収束までには10カ月程度必要?

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