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  • 2020/02/20

日本人の闇? 「育休」で横行する“ホンネとタテマエ”

多くの人が認識しているように、日本における男性の育休取得率は極めて低い。だが意外なことに、男性を対象とした育休の制度そのものは世界でもトップレベルに位置している。つまり制度は作ったものの実際にはまったく運用していないのだが、これは育休に限った話ではない。あらゆる分野において、表面的に制度を作り、現実には運用しないというダブルスタンダードが横行しており、これがやっかいな問題を引き起こしている。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『"投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』(イースト・プレス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方』(ビジネス社)、『お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか』(朝日新聞出版)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)などがある。

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小泉進次郎環境相の「育休」取得で風向きは変わるのだろうか?
(写真:毎日新聞社/アフロ)


小泉環境相の育休取得効果は……

 小泉進次郎環境相は2020年1月15日、第一子の誕生をきっかけに2週間の育児休業取得を宣言した。国会議員は、立法という国家権力の中枢を担う立場であり、一般労働者のように組織に対して時間や能力を提供して賃金をもらう職種ではない。本来は育休取得という概念はなく、どのように働こうが原則として自由である(成果については、選挙という形で主権者である国民の審判を受ける)。

 ただ、議院内閣制を採用している日本の場合、大臣の過半数は国会議員から選出されるので、一部の国会議員は行政組織のトップという顔も持つ。小泉氏は現在、環境相を兼務しているので、今回の育休取得は、国会議員というよりも組織トップしての決断ということになるだろう。

 組織全体に制度を定着させようと思った場合、トップが率先して実施するというのは効果的な手法の1つといって良い。大臣が率先して育休を取得すれば、省内の職員が実践しやすくなるのは間違いないだろう。実際、三重県では鈴木英敬知事が、2012年と2016年に育休を取得しているが、効果は絶大で、男性職員の育休取得率は8年間で1.9%から36.7%に急増したという。

 党内や世論の一部からは「単なるパフォーマンス」「イメージ戦略にすぎない」といった批判の声も出ているが、そもそも政治というのはきれい事で済むような世界ではない。小泉氏の今回の決断は明らかに政治的動機に基づくものだろうが、政治家が政治的行動を取ることについて批判するというのはあまりにもナイーブすぎるだろう。

 小泉氏の意図や目的はともかく、今後の注目点は、環境省内で育休取得率が本当に上がるのか、また、この動きが民間にも波及するのかという点である。実は、日本の男性育休制度は世界でもトップレベルであり、制度自体はかなり先進的である。ところが現実の育休取得率が極めて低く、制度と現実に大きな乖離が存在している。つまり、ホンネとタテマエの差が激しくなっており、これが大きな障壁となっているのだ。

日本でホンネとタテマエが違うのは当たり前?

 厚生労働省が行った雇用均等基本調査によると、日本における男性の育休取得率は上昇しているものの、2018年時点で6.16%とかなり低い。一方、国連児童基金(ユニセフ)が行った国際比較調査では、男性が取得できる日数において世界トップクラスと評価されるなど、制度自体はかなり先進的といって良い。つまり日本は立派な制度は作ったものの、現実にはそれを運用していないということになる。

 今回の小泉氏の行動でも状況が大きく変わらなかった場合、制度と現実の乖離がいかに大きいのかを示す結果となってしまうだろう。

 このような乖離は、日本のあちこちで観察できるのだが、有給休暇もその1つである。

 日本では年間20日間の有給休暇を取得できるが、旅行サイト「エクスペディア」の調査によると現実の取得率は50%にとどまっている。このため実際に取得した有給休暇日数を比較すると、日本は3年連続で19カ国中最下位という結果になっている。

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日本人の有給休暇取得率は50%にとどまり、3年連続の最下位
(出典:エクスペディア)

 ここで注目すべきなのは、法律で定められている有休の日数と実際の取得日数の差である。ドイツやフランスは年間30日の有休が定められているが、取得率は100%となっている。一方、タイは10日しか定められていないが、やはり取得率は100%である。韓国も15日に対して14日、シンガポールも15日に対して14日と100%に近い取得率を達成している。

 各国には経済水準の違いなど、それぞれ事情があるので、すべての国が長期の有休を取得できるわけではない。だが各国はそれぞれの事情を考慮し、その範囲の中で可能な制度を構築しているので、現実に制度が運用された場合には、100%近い消化率を達成できる。

 ところが日本では現実を考えず、見かけだけは立派な制度を作り、実際に運用するとまったく実現できないというお粗末な状況になっていることが分かる。

 日本では「ホンネとタテマエ」という言葉があり、制度と現実が乖離していることを当然視する雰囲気があるが、これは諸外国から見るとかなり異様な光景といって良いだろう。

【次ページ】このままで済むとは思わない方が良い

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