開閉ボタン
ユーザーメニュー
ユーザーメニューコンテンツ
ログイン

  • 会員限定
  • 2020/03/13

実は拡大中「乗合バス」市場の最新動向、MaaS時代突入で経営難から脱却なるか

身近な乗り物、バス。豪華な観光バスが話題になり、高速バスは都市間の移動手段として人気が定着したが、日々、停留所を周回し、住民の日常の足として活躍する「乗合バス(路線バス)」からは、あまり景気のいい話は聞こえてこない。しかし、人工知能(AI)を活用した配車システムなど、市場が急拡大する「MaaS」への取り組みは、全国各地で始まっている。乗合バスを取り巻く最新事情を整理する。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

photo
走り始めた「スマートなバス」はどこへ向かう?
(Photo/Getty Images)

乗合バス市場はわずかに拡大

 乗合バス(路線バス)は、全国どこへ行っても景気の良い話が聞かれない。「クルマ社会でバスに乗らなくなった」「少子化で高校生が減り、安定収入の定期券購入は減る一方」「人手不足で運転手の人件費が高騰し、採算はさらに厳しい」「運賃収入だけでは万年赤字」…などなど。

 しかし、乗合バスの国内市場は縮小する一方なのかと思いきや、実は直近ではわずかではあるが拡大している。

 国土交通省は「国内輸送の現状-乗合バス輸送状況推移表」で各年度の全国の乗合バス(一般乗合旅客自動車運送業)の統計を公表している。それによると輸送人員、車両数のピークは高度経済成長期の1968年度(昭和43年度)で、それぞれ101.43億人、6万7694両だった。

 その後、輸送人員は東日本大震災が起きた2011年度の41.18億人、車両数は2004年度の5万8119両まで減少の一途をたどったが、2017年度にはそれぞれ43.24億人、6万522両まで回復をみせている。

画像
日本国内の乗合バスの輸送人員、車両数

 原因の1つは、2006年の道路運送法改正で乗合バス事業の参入規制緩和が行われ、バス会社が増えたことだ。国土交通省の統計によると、事業者は2011年度末の1836社から2016年度末の2267社まで、5年で23.5%も増えた。2018年度末の事業者数は2265社である。

2極化が進む都市と地方

 しかし、バス会社の経営状況は都市と地方で2極分化している。国土交通省が毎年公表する「乗合バス事業の収支状況について」(保有車両30両以上の事業者対象)によると、営業収入から営業経費を差し引いた経常収支率(100%を超えれば黒字、下回れば赤字)は、東名阪三大都市圏の大都市部のバス会社は2011年度の97.4%から2018年度は102.6%へ改善。2013年度から全体の損益が黒字転換して黒字事業者は、79社中51社ある。

 しかし、その他地域(地方部)では、同じ期間に87.3%から84.7%へ、逆に赤字が拡大している。黒字の事業者は161社中わずか18社しかない。

画像
日本国内の乗合バスの大都市部、その他地域の経常収支率の推移

 2010年代、政府が「地方創生」を重要な政策課題に打ち出すのと裏腹に、地方から都市への人口流入が続き、高齢化、通勤・通学客の減少がさらに進行して地方のバス会社の経営は厳しさを増した。補助金で財政支援した路線バスが廃止され、直営の「コミュニティバス」で住民の足をなんとか確保している自治体も少なくない。

 国土交通省の「国内輸送の現状-乗合バス輸送状況推移表」によると、輸送人員が底を打った2011年度の営業収入は全体で約9,650億円あったが、5年後の2016年度は輸送人員が回復したにもかかわらず約9,591億円で、まったく増えていない。

 その間、運輸業界の人手不足は深刻化し、大型二種免許を持つバス運転手の人件費は高騰した。都会と違って乗車密度が低く、座れない人をほとんど見かけないような地方の乗合バスの赤字が増えるのも、当然といえば当然だろう。

今後10年で32.8倍の急成長「MaaS市場」

 国内では厳しい現実に直面している乗合バス業界だが、「MaaS(マース:Mobility as a Service)」という急成長市場では、公共交通機関としてタクシー、鉄道、船舶、航空機などとともにプレーヤーの一角をなしている。国土交通省の国土交通政策研究所によるMaaSの定義は次のとおりだ。

ICTを活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念

 そして、矢野経済研究所が2018年に発表した「国内MaaS市場に関する調査」によると、サービス事業者売上高ベースのMaaSの国内市場規模は、2020年に1,940億円と見積もられているが、10年後の2030年には32.8倍の6兆3,634億5,000万円に達すると予測されている。5年後の2025年でも2兆1,042億3,800万円で10.8倍だ。年平均成長率(CAGR)は44.1%もある。

画像
国内MaaS市場規模予測

 MaaSは、次のような5つのステップで進行していくと考えられている。

レベル0 統合なし。個別にサービスを提供
レベル1 情報の統合。目的地までの経路、時刻などの情報を一括検索できるなど
レベル2 予約・支払いの統合。各交通機関が乗り放題のゾーン制運賃など
レベル3 提供するサービスの統合
レベル4 社会全体の統合

 乗合バスについていえば、「運転手がいない自動運転+運賃キャッシュレス決済」による無人化などはかなり先の未来の話になりそうだが、レベル1の情報の統合、レベル2の予約・支払いの統合あたりは、ICTを活用してすでに「スマート化」に着手しているバス事業者がある。その最先端を走っているのが、福岡市に本社を置く西日本鉄道である。

【次ページ】西鉄バスが取り組む「オンデマンドバス」と「スマートバス停」の可能性

お勧め記事

運輸業・郵便業 ジャンルのトピックス

運輸業・郵便業 ジャンルのIT導入支援情報

PR

ビジネス+IT 会員登録で、会員限定コンテンツやメルマガを購読可能、スペシャルセミナーにもご招待!