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  • 2019/11/27

「自動運転バス」続々と実証実験へ、急ぐのも分かる深刻事情と“MaaS社会”の利点

全国の地方自治体が大学やバス会社、IT企業などと連携し、自動運転バスの実証実験を急いでいる。人口減少で地方のバス路線が相次いで撤退に追い込まれているうえ、運転手不足で需要のある路線が縮小されるケースも出てきたからだ。交通弱者の足が確保されなければ、人口減少にさらに拍車をかける結果になりかねない。自治体は省人化を図れる自動運転に路線維持の望みをつないでいるわけで、名城大理工学部の田崎豪准教授(情報学)は「自動運転バスが実用化されれば、赤字路線の維持や運転手不足対策に効果を期待できる」とみている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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大津市のJR大津駅前を走行する自動運転バス。市は運転手不足解消と過疎地の足確保を目指して早期導入したい考え
(写真:筆者撮影)

大津市は2020年度中の導入目指し、レベル3の実証実験

 滋賀県大津市春日町のJR大津駅前を青い車体のバスがゆっくりと動き始める。手動運転から自動運転へ切り替え、平均時速約10キロで中央大通りを琵琶湖畔へ。11月上旬、大津市が京阪バスなどと協力して行った自動運転バスの実証実験。運転手が乗車する自動運転レベル3で大津市におの浜のびわ湖大津プリンスホテルまで3.6キロのコースを走った。

自動運転レベルの定義
レベル 概要 運転者
0 自動運転機能を搭載していない車 運転手
1 自動ブレーキなど運転手を補助するシステムを搭載した車 運転手
2 限定された範囲で自動運転が可能な車 運転手
3 緊急時を除き、条件付きで自動運転が可能な車 システム
4 原則として運転手の関与が必要ない車 システム
5 運転手の関与を全く必要としない車 システム
(出典:内閣官房「官民ITS構想・ロードマップ2019」などから筆者作成)

 踏切などでは運転手がハンドルを握ったが、おおむね自動運転での走行。40キロの最高時速を出し、曲がり角やカーブも危なげない。途中2カ所のバス停留所では自動でウインカーが点灯し、停車した。

 プリンスホテルの駐車場では運転手が乗らないレベル4の実験が行われ、無人のバスが駐車中の乗用車など障害物を避けて指定の場所に停車すると、見学者から一斉に拍手が上がった。

 初日は走行に先立ち、大津駅前で関係者約50人を集めて出発式があった。越直美大津市長が「自動運転の先進都市として実用化に向けて日本全体を引っ張っていきたい」とあいさつ。実証実験は1週間続けられ、毎日6往復12便が運行した。試乗した大津市京町の主婦(59)は「速度は遅いが、乗り心地は悪くなかった」と笑顔を見せていた。

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JR大津駅前で開かれた自動運転バス実証実験の出発式。越直美大津市長(左から3人目)らがテープカットした
(写真:筆者撮影)

 大津市は自動運転バスを早ければ2020年度中にも大津駅と湖岸エリアを結ぶコースでの運行を考えている。市民や急増する観光客の移動手段として利用するためで、将来は山間部など人口減少地域の公共の足確保にも活用する方針だ。

 大津市交通戦略室は「超高齢化社会では交通弱者の移動手段確保が大きな課題。これを解決するため、1日も早く自動運転バスを実用化し、運行させたい」と意気込んでいる。



バス路線の縮小に運転手不足の影響も

 国土交通省、日本バス協会によると、全国の乗合バス輸送人員は2017年度で約43億人。1960年代後半に年間100億人を超えていたが、自家用車の普及とともに減少の一途をたどり、ピーク時の約4割まで落ち込んだ。

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(出典:国土交通省、日本バス協会資料から筆者作成)

 利用客の減少とともにバス会社の収入も減り、保有車両30台以上のバス会社の約7割が赤字に陥っている。過疎地の路線バスはまるで空気を運んでいるような状況で、自治体の補助でどうにか運行が続けているありさまだ。

 2010年度から2015年度までの6年間に全国で約7500キロのバス路線が廃止された。1キロ圏内に鉄道、500メートル圏内に路線バスが運行していない公共交通空白地域は、約3万6000平方キロに及び、国内可住地面積の約3割を占めている。

 そこへ人口減少が追い打ちをかける。国立社会保障・人口問題研究所は2015年に1億2700万人いた日本の人口が2040年に1億800~1億1400万人まで減ると予測している。過疎地では集落の消滅も避けられない見通しで、路線バスのさらなる乗客減が見込まれている。

 人手不足の影響はすでに各地のバス路線に表れている。京都府宮津市は4月、丹後海陸交通の運転手不足から、市内6路線の運行を週2、3日に縮小するなどの再編に踏み切った。宮津市企画課は「人手不足が解消されない以上、2020年度の運行もあらためて検討することになりそうだ」と肩を落とす。

 熊本市内を走る熊本都市バスは4月から運行本数を5%削減した。高知県で路線バスを運行する、とさでん交通は2018年、高知市内の土日祝日ダイヤを減便している。北海道室蘭市に本社を置く道南バスは室蘭、登別の両市で12月下旬から約17%の大幅減便に入る。

 日本バス協会が2017年に30台以上保有するバス会社を調べたところ、310社のうち85.8%が運転手不足と答えた。運転手は平均労働時間が長く、賃金が低いため、募集してもなかなか集まらない。このままでは路線を縮小する以外に方策がないという。

【次ページ】対馬市や横浜市でも本格的な実証実験、自動運転バスの「最大のメリット」

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