基本の関数はたったの11種類
Excelには、あらゆる計算に対応したさまざまな関数が多数用意されていますが、すべての人がすべての関数を覚える必要などまったくありません。多くの関数は、大半の人にとっては使用頻度の低い関数だと思います。Excelの関数は「必要になったときに、必要な関数の使い方のみを調べて使う」が鉄則です。まずはこの基本的なスタンスを覚えておいてください。
一方で、職種や業務内容に関わらず、全員に絶対に覚えておいてほしい関数もあります。その数はたったの11種類だけですが、この11種類の関数は非常に使い勝手が良く、汎用性も高い関数なので、ぜひ本稿を読んできちんと覚えてください。
次項から、11種類の関数をひとつずつ解説していきます。
合計するなら─SUM関数
SUM関数は、指定したセル範囲の合計を求める関数です。Excelの代表的な関数なので、知っている人も多いと思います。SUM関数の基本的な書式は次の通りです。
合計を表示したいセルに「=SUM()」と入力して、カッコ内に計算対象のセル範囲を指定します(関数に指定するセル範囲や条件のことを「引数(ひきすう)」といいます)。
セル範囲をマウスでドラッグすると「A1:A3」のように、セル範囲の開始と終端のセル番地を「:」(コロン)でつないだ形式で引数のセル範囲が入力されます(範囲指定方式)。
また、複数のセルを個別に指定したい場合は、Ctrlキーを押しながら対象のセルを順番にクリックします。すると、「A1, A3」のように、個別のセル番地が「,」(カンマ)で区切られて入力されます(個別指定方式)。セル番地やコロン、カンマはキーボードから直接入力してもかまいません。セル範囲を指定後、Enterキーを押すと合計値が表示されます。
異常値を見つけ出す最も簡単な方法─MAX関数、MIN関数
特定のセル範囲内から最大値を求める場合はMAX関数、最小値を求める場合はMIN関数を使用します。
MAX関数、MIN関数ともに、「A1:A10」のように範囲の先頭セルと終端セルを「:」(コロン)でつないで指定する範囲指定方式と、「A1,A5」のように個々のセル範囲を「,」(カンマ)で区切って列記する個別指定方式の両方の方式でセル範囲を指定できます。また、併用も可能です。
MAX関数、MIN関数には、直接数値を指定することも可能です。たとえば「=MAX(A1,100)」を指定すると、セルA1の値と「100」のうち、大きいほうの値が表示されます。つまり、直接指定した数値を下限(この場合は100)としたうえで、最大値を求められるということです。
あり得ない数値を正常値に変換する─ROUND関数
財務諸表にある商品数、価格、店舗数、人数などの値に小数点が付くことは絶対にありません。みなさんが扱っているデータの中にも「小数点が付くことのない値」があるのではないでしょうか。
しかし、そういった値に対して「前年比1.5倍」や「70% OFF」のような試算を行うと、結果的に小数値になってしまうことがあります。そのような場合はROUND関数を使用して値を任意の桁数に四捨五入します。
「セル範囲」には四捨五入を行う対象のセル範囲を指定します。計算式を指定することも可能です。また、「桁数」には小数点以下の桁数を指定します。小数第1位までなら「1」、小数第2位までなら「2」、小数点以下を四捨五入するなら「0」を指定します。
次の例では、小数点の出る計算結果を、ROUND関数を利用して「0桁目」に収まるように四捨五入しています。元の式をそのままROUND関数の1番目の引数に指定し、桁数には「0」を指定している点に注目してください。
エラー時の表示内容を変更する─IFERROR関数
関数や数式によっては、データの未入力が原因でエラーになる場合があります。
たとえば、経費と販売数の実績表から1台あたりの経費を算出するには「経費÷販売数」を計算しますが、「販売数」のセルが未入力(空白)の状態だとセルに「#DIV/0!」(ゼロ除算エラー)が表示されます。
閲覧者全員がExcelの操作に慣れている場合は、このままでも良いかもしれませんが、Excelに不慣れな人も閲覧する場合は、Excelのエラー表示のままでは不親切です。このような場合は、IFERROR関数を使用して、一般的にわかりやすいエラー表示に変更することをお勧めします。
=IFERROR(セル範囲,エラー時に表示する文字)
「セル範囲」には、エラーになる可能性があるセル範囲(数式を含む)を指定します。次の例では、IFERROR関数を使用して、エラー時には「要確認」と表示するように変更しています。E列の元の式を関数の1番目の引数に指定し、エラー時に表示する文字を2番目の引数に指定している点に注目してください。
計算結果によって表示内容を変更する─IF関数
「年齢が20歳以上」「居住地が東京」といった“条件”に応じてセルに表示する値を切り替えたい場合は、IF関数を利用します。IF関数は、指定した論理式の計算結果に応じて、2通りの表示内容のうちのいずれかをセルに表示する関数です。
=IF(論理式, TRUEの場合の表示内容, FALSEの場合の表示内容)
IF関数を使用する際のポイントは「論理式」です。論理式とは「=」や「<」「>」といった比較を行うための記号(演算子)を使った、いわば問いかけです。
たとえば、「A1=10」という論理式は、「セルA1の値と数値10は等しいか」という問いかけです。この式が成立する場合、つまりセルA1の値が10の場合、計算結果は「TRUE」(正しい)となり、IF関数は第2引数に指定されている「TRUEの場合の表示内容」を表示します。
一方、セルA1の値が10ではない場合、計算結果は「FALSE」(正しくない)となり、IF関数は第3引数に指定されている「FALSEの場合の表示内容」を表示します。
論理式に指定できる比較演算子は次の通りです。どのような場合にTRUEになるのかも併せて確認してください。
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