- 会員限定
- 2020/03/26 掲載
【深刻】コロナショック直撃の京都、「これくらいでいい」の声も
訪日客が激減、祇園や嵐山は日本人客が中心に
3月下旬の3連休初日、京都市東山区の祇園は好天に恵まれ、それなりの人出でにぎわいを見せた。しかし、花見小路を歩く訪日客の姿は数えるほど。新型コロナ流行前の中国人観光客でごったがえした様子はどこにもない。近くの和菓子屋では店員が「売り上げが半減した。中国人だけでなく、欧米からの観光客も減ってきた」と渋い表情。長い行列ができることで有名な懐石料理店も、日本人客がほとんどを占めている。
ただ、祇園地区ではマナーの悪い外国人観光客に舞妓さんがストーカー行為をされたり、敷地内に無断で侵入されたりする被害が出ていた。店主の中には「昔の静かな祇園が戻ってきた。これぐらいの人出でいい」という声もあった。
右京区と西京区にまたがる嵐山周辺も状況はよく似ている。3連休とあって人出は少し増えたものの、訪日客の姿はまばらで、中国語の話し声はほとんど聞こえてこない。名物の渡月橋や竹林の小径もそれほど混雑せずに通行できる。東京から来た大学生のカップルは「行列に並ばずに食事ができた。去年とは全然違う」と喜んでいた。
嵐山周辺の5商店街は2月から「スイてます嵐山」と名付けた自虐的なキャンペーンを展開するなど集客に躍起だが、土産物店の店主は「人出はピーク時の半分ぐらいかな。今がかき入れ時なのに、このままでは大変」と頭を抱えていた。
嵐山おもてなしキャンペーン
— 嵯峨嵐山おもてなしビジョン推進協議会 (@sagaarashiyamao) February 14, 2020
~スイてます嵐山・今こそ!おこしやす~
嵐山の5つの商店街が合同でキャンペーン。
比較的閑散期でもあり、またコロナウィルスの影響で通常より来訪者が少ない今!
ゆったりと嵐山を訪問してもらい、各お店もいつも以上のおもてなしの心でお迎えするキャンペーン pic.twitter.com/ZoQtE8PR0M
簡易宿所は6割近くがこのままなら廃業か事業転換検討
コロナショックでより深刻な影響を受けているのが宿泊業界だ。ゲストハウスや民宿など小規模宿泊施設が加盟する京都簡易宿所連盟が10~16日にオンラインで実施した会員アンケートでは、2月実績で34%、3月見通しで62%の施設が6割以上の大幅な売り上げ減に陥っていることが分かった。客室稼働率が20%に満たない施設が2、3月とも約半数を占めている。廃業を決めた施設はまだ4.3%にとどまっているが、「廃業を検討中」、「この状況が続けば廃業を検討する可能性がある」と答えた施設は合わせて34.3%に上った。賃貸など別の業態に転換を決めた施設は2.9%。業態転換を検討中、業態転換を検討する可能性がある施設は合計15.8%を数えた。
各施設は料金の引き下げや臨時休業、勤務シフトの見直し、従業員の解雇などで対応しているが、新型コロナの感染が欧米に拡大し、さらに集客に苦しんでいる。2時間1,500円でお昼寝プランを打ち出したり、クラウドファンディングで支援金を募ったりする施設が上京区で出るなど、懸命に生き残りを模索している。
市内にある簡易宿所は1月末現在で3290施設。2014年の460施設から7倍以上に増えているだけに、過当競争の影響も続いている。市内で複数の施設を運営する業者は「料金を40%下げたが、新規の予約がほとんどない」とショックを隠し切れない様子で話した。
京都簡易宿所連盟のルバキュエール裕紀副代表は「4月の予約が3月以上に悪化しているだけに、このままでは京都の簡易宿所が壊滅しかねない。市には抜本的な救済策をお願いしたい」と危機感を募らせている。
ホテル経営も苦境に立たされている。インターネットの宿泊予約サイトには、一泊2,000円台という投げ売り状態の料金が見える。2019年3月の客室平均単価が1万円近かった下京区のホテルは、平日の素泊まりだと3,000円台。JR京都駅周辺でも3、4割の料金引き下げが珍しくないという。
府と市が緊急開催した京都経済対策トップ会議では、市観光協会から「観光・宿泊業界への影響は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や2008年のリーマン・ショックの比でない」との見方が示された。
【次ページ】府、市、観光協会が緊急支援策を発表
関連コンテンツ
PR
PR
PR