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  • 2023/01/11 掲載

iPaaSとは何か、RPAやIaaS、PaaSとの違い、13製品比較ポイントをわかりやすく解説

連載:デジタル・マーケット・アイ

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複数のクラウドサービスを利用するのが当たり前になり、既存のオンプレシステムもある中で、各システムの管理の複雑化やデータ連携の不便さといった問題が山積しています。そこで注目を浴びているのが、企業の各種システム/データを統合的に連携できるiPaaS(integration Platform as a Service)です。今回はアイ・ティ・アール(ITR)のシニア・アナリストである水野 慎也氏監修の下、iPaaSの基本知識やPaaS・SaaSなどとの違い、求められる背景を解説します。併せて、セールスフォースやセゾン情報システムズ、インフォマティカといった代表的なベンダー・ツールと製品選定のポイントについても紹介します。

監修:アイ・ティ・アール シニア・アナリスト 水野慎也

監修:アイ・ティ・アール シニア・アナリスト 水野慎也

カゴメの情報システム部門に20年以上在籍し、生産・調達・物流を中心にエンタープライズアプリケーションの企画・開発・導入を担当。SCMパッケージの導入推進など各種プロジェクトを担当するとともに、組織運営・IT戦略立案などに携わる。また、広告宣伝部門にてデジタルマーケティングを推進。2019年4月よりITRのリサーチ・フェローとして活動。2020年4月入社し、現職。

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iPaaS(integration Platform as a Service)とは何か

iPaaSとは何か

 iPaaS(integration Platform as a Service)とは、クラウドサービスやオンプレミスで利用する複数のシステムおよびアプリケーションにおいて、統合的にシステム連携やデータ連携を可能にするプラットフォームサービスです。ITRの定義では、システム間でデータ連携を行い、前後のプロセスを統合的に管理する製品を、iPaaSの範囲であるとしています。

 昨今のビジネスシーンにおいて、各種システムをオンプレミス環境からクラウド環境に移行するケースが増えています。このため、オンプレミスとクラウドそれぞれの複数あるシステムが複雑に絡み合い、運用は煩雑化しています(図1)。

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図1:クラウド環境への移行が進む一方で、多くの企業ではオンプレミス環境と併存させている
(出典:ITR)

 こうした課題を解決するのがiPaaSです。アイ・ティ・アール(ITR) シニア・アナリストの水野 慎也氏は次のように説明します。

「iPaaSはAPIベースの統合だけでなく、従来型のシステム連携(EAI〈Enterprise Application Integration〉、ESB〈Enterprise Service Bus〉、データベース連携、ファイル連携など)を兼ね備えます。また、多様なコネクタを備え、製品・サービスによってはローコード/ノーコード型の開発ツールや、ビジネスモデル設計支援、プロセス自動化、イベント駆動などの機能も備えているところが特徴です」(水野氏)

iPaaSの機能

 iPaaS機能の多くは、APIを使って複数のSaaSを統合的に連携・監視できるものが主流となります。そこで、iPaaSの主要な役割である、API管理について機能を紹介します

APIゲートウェイ
 APIコンシューマからのリクエストを受け取り、セキュリティポリシーや流量制御を行った上で、APIプロバイダーにリクエストを転送。そのレスポンスをコンシューマに返す際のゲートウェイとしての役割を果たします。

アクセス制御/セキュリティ
 APIキーや、OAuthおよびOpenID Connectといった認証システムと連携し、APIのセキュリティを担保します。

管理ポータル
 APIカタログ、API提供ポリシー、APIゲートウェイのデプロイ、テスト用サンドボックスなどを指します。

開発者支援
 APIの開発およびAPIを利用したシステム開発を行うデベロッパーに対して、各種情報(仕様、チュートリアルなど)やテンプレートを提供します。

稼働監視
 APIゲートウェイおよびAPIコンシューマ/プロバイダーの稼働状況を監視します。

分析/レポート
 API利用状況とパフォーマンスを分析し、レポーティングを行います。

課金/支払い管理
 APIプロバイダーがAPI利用に関する課金ルール(登録費用、定額/従量課金など)を設定し、定期的に請求書を発行します。

iPaaSのメリット・デメリット

 iPaaSを導入するメリットとデメリットは何かを抑えておきましょう。

・メリット
 iPaaSの最大のメリットは、システムのスパゲティ状態(システム同士が複雑に連携した状態のこと)をiPaaSによって解消できることです。

 たとえば、基幹システムなどの古いシステムと、SaaSなどの新しいクラウドサービスを連携させると、運用が煩雑になる恐れがあります。これに対し、水野氏は次のように説明します。

 「iPaaSを使って簡素化できれば、トラブルが起きた時の復旧にかかるスピードを早くできたり、API連携の開発工数を削減できるといったメリットがあります。管理のポイントを集約可能なことから、生産性の向上やセキュリティの強化にもつながるでしょう」(水野氏)

・デメリット
 一方、デメリットとしては投資の負担がかかることや、製品の見極めが難しいことが挙げられます。水野氏は「せっかく導入しても、使いこなせるIT人材がいないと、宝の持ち腐れになる恐れもあります」と注意しています。

iPaaSとIaaS・PaaS・SaaSとの違い

 iPaaSに似た言葉として、IaaS(Infrastructure as a Service)や、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。3つの定義を説明すると、次のようになります。

  • IaaS:サーバなどハードウェアの部分をクラウド化したもの
  • PaaS:ミドルウェアのソフトウェア開発環境部分をクラウド化したもの
  • SaaS:エンドユーザーが利用するアプリケーション部分をクラウド化したもの

 それぞれ違いはあるものの、どれもクラウドサービスである点は同じです。これらのサービスやシステムを統合的に連携できるものがiPaaSとなります。iPaaSを使えば、バラバラになった業務システムを統合することができます。

iPaaSの分類

 昨今は多くのベンダーが、連携をはじめとした多様な機能を持つサービスについてiPaaSを名乗るようになってきました。このため、各製品の得意領域を見極めることが難しくなっています。そこで次のような3つのタイプに分類すると理解がしやすいでしょう(図2)。

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図2:iPaaSは製品の成り立ちから、3つのタイプに分類される
(出典:ITR)

「iPaaSを製品の成り立ちごとに大きく分類すると、3つのタイプがあります。1つ目は、EAIやETLから発展した『システム連携型』です。2つ目は、API管理製品から進化した『API管理型』。3つ目はSaaSとの連携に強みをもつ『プロセス制御型(またはレシピ提供型)』です。オンプレミスシステムとの連携も可能な製品群がiPaaS市場を形成しています」(水野氏)

【次ページ】iPaaS製品の選定ポイント、主要13社、市場規模などまるごと解説

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