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- 2022/09/15 掲載
LMS(学習管理システム)とは? eラーニングと何が違う? 今アツい注目機能も解説
連載:デジタル・マーケット・アイ
外資系ソフトウェアベンダーやITコンサルティング企業において20年以上にわたり、BIツール製品のマーケティング、BIシステムの導入支援に携わる。2013年よりITRのリサーチ・フェローとして活動。現在は、事業企画コンサルタントとしてIT企業の新規事業立ち上げ、事業再編を支援するかたわら、ITRアカデミーにおいてデータ分析スキルコースの講師を務めるなど、データ分析を中心としたテーマでの講演・執筆活動を行っている。

LMSとは何か?
LMS(Learning Management System:学習管理システム)とは、社内研修用の教材をオンラインで配信したり、受講、管理したりするためのシステムのことです。インターネットやLANなどのネットワークを介して、学習教材の配信や学習履歴などの管理を行います。平井氏はLMSについて、次のように補足しています。
「LMSは、受講登録やID/パスワードの発行など受講生を管理する機能や、学習の履歴など進捗管理を行う機能を備えているものを指します」(平井氏)
LMSを導入することで、研修をいつでもどこでも行うことができ、その進捗を管理することで、知識やスキルの属人化を防ぐことができます。また、受講管理や成績、評価、受講者アンケートといった業務を、オンラインやリアルに問わず一元的に管理することができ、大幅な業務効率化につなげることができます。
LMSと「eラーニングの違い」
eラーニングシステムと混同しやすいLMSですが、その違いを平井氏は次のように説明します。「eラーニングはAmazon Prime VideoやNetflixのような、事前に用意された動画コンテンツをオンデマンドで配信するためのものです。一方、LMSはこれに管理機能がプラスされたものと考えてください。以前のLMSはこうした機能を備えていなかったことから、かつてはeラーニングとLMSは同義のものとされていました」
LMSがeラーニングと違う大きなポイントは、ID/パスワードを発行し、受講生の学習や進捗、成績などを管理できる機能を備えているところにあります。企業の教育担当者は受講者が「どれくらいのペースで学習を進めているか」「何点くらい獲得しているか」「どこが弱いのか」などを、把握することができます。このため学習の進捗状況に合わせて、適切な教材を従業員に勧めることができるというわけです。
LMSの「5つの基本機能」
LMSの主要な機能を紹介します。最新のLMSは、コンテンツの配信、作成、登録をメインとした従来のようなLMSとは異なっています(図1)。LMSは次の5つの新しい機能が備わっている点が特徴的です。
- マルチデバイス対応のサブスクモデル
従来のLMSは購入したコンテンツを自社サーバーに載せるオンプレミス型でしたが、最近はサブスクリプションモデルによるクラウド型へほぼ移行しています。このため、パソコンと携帯電話などから、いつでもどこでも利用できるマルチデバイス対応が一般的となっています。 - 受講し放題の学習コンテンツ
無料で見ることができ、受講し放題の標準コンテンツが用意されています。また既成のコンテンツだけでなく、オリジナルで作成したコンテンツも簡単に組み込むことができます。 - 学習者の進捗状況・成績を一括管理
「誰に、どの教材を、どれくらいの期間、受講してもらうか」など、任意のグループ単位で学習コースを一斉に割り当てることができます。またアカウントごとに、ログインの制御や受講のお知らせといった細かな設定を一元管理することも可能です。社員一人ひとりの学習結果と進捗を管理するので、社員のスキルマップを可視化することもできます。 - 紙やエクセルの作業をデジタル化
これまで紙やエクセルを使うことが多かった受講後アンケートの回収・分析・管理や、確認テストの実施・管理など、受講準備やフォローアップにかかる作業をシステム上で管理できます。 - マイクロコンテンツ
マイクロコンテンツとは、数分程度の短い動画を使った研修方法です。たとえば飲食店の場合は、調理の方法や食器の配り方などをスマートフォンで撮影し、タグをつけてサーバーに蓄積します。この短編動画を見れば、未経験の新入社員でもすぐに仕事が始められるというわけです。
LMSの注目機能
基本機能の中で特に注目したいのがマイクロコンテンツ(短尺動画)です。「マイクロコンテンツを使った『マイクロラーニング』は、特定の業種で発達した研修方法ですが、今や一般企業にも浸透しつつあり、LMSの機能として今最もホットなトレンド機能です。特に、実習やOJT、ワークショップに代わるものとして期待されています。コンテンツが膨大な量となるため、タグ付けして検索しやすくしたり、動画の順番を設定したり、多様な工夫が施されています。一種のナレッジ共有のような使い方です」(平井氏)
コンテンツ共有の意味では、LMS以外の教材も利用できるようにするSCORM(スコーム:Sharable Content Object Reference Model)という世界的な標準規格があります。この標準化の動きに対して、LMSはどこまで対応しているのでしょうか。
これに対し平井氏は、「今はどのプレイヤーもコンテンツの充実化にしのぎを削り合っている段階です。複数のLMS間でコンテンツ流通を容易にするような動きは、今の所、あまり活発ではありません」との説明にとどめました。
このほか、他の業務システムとLMSを連携させるニーズや、機能拡張の動きは、今回の調査では見られないと平井氏は述べました。しかし、ゆくゆくは社員のスキル向上を促したり、把握したりするタレントマネジメントシステム(TMS)などで、他のシステムとLMSのリアルタイムな連携が期待されます。
LMSの導入メリット
LMSを導入することで得られるメリットは、「学習の進ちょく状況をリアルタイムで把握できる」「好きな時に好きな場所で学習できる」「学習データなどを一元的に管理でき、業務効率化につながる」など、受講者側、教師側、管理者側いずれの観点から見ても数多く挙げられます。中でも平井氏は、リアルとオンラインのハイブリッド研修の環境に必要なツールを統合できるところにメリットがあると述べます。
「オフィスと自宅の両方から参加するハイブリッド研修が当たり前の時代となり、オンライン会議やチャットなど、コミュニケーション方法も多様化しています。コロナウイルス対策のために新しいツール導入を余儀なくされたように、環境に依存せずとも社員の学習を管理できるLMSは、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に必須なインフラと言っていいでしょう」(平井氏)
つまり、ウィズコロナ・アフターコロナの時代において、LMSは整備すべき「研修インフラ」に位置付けられます(図2)。
「大企業ではLMSを導入することがすでに当たり前になっています。中堅・中小企業はこれからですが、リモートワーク・ハイブリッドワークの浸透とともに、もっと導入が進んでいくでしょう」(平井氏)
【次ページ】主要プレイヤー5社と製品の特長をそれぞれ解説、押さえたい5つの選定ポイントとは
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