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  • 2020/09/11 掲載

「寺田倉庫」は何が凄いのか?倉庫業界の常識を覆すユニークなビジネスとは?

【連載】成功企業の「ビジネス針路」

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倉庫業界は成熟産業であり、かつ景気の影響を受けやすい業界である。B to Bがビジネスの中心であり、競争も激しいことから、価格の主導権を倉庫会社がとりにくい状況が続いている。新規顧客を開拓しようと思っても、地理的制約があり、倉庫の立地に無関係なエリアには進出しにくい。こうした難しい事情がある中で、業界中堅の「寺田倉庫」は、なぜ他社と差別化を図り成功することができたのか。その秘密を探る。

早稲田大学 ビジネススクール 教授 山田英夫

早稲田大学 ビジネススクール 教授 山田英夫

三菱総合研究所にて大企業の新事業開発のコンサルティングに従事。1989年に早稲田大学に転じ、現職。専門は競争戦略論、ビジネスモデル。博士(学術、早稲田大学)。ふくおかフィナンシャルグループ、サントリーホールディングスの社外監査役。主な著書に『競争しない競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『成功企業に潜むビジネスモデルのルール』(ダイヤモンド社)、共著に『本業転換 既存事業に縛られた会社に未来はあるか』(KADOKAWA)などがある。

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成熟産業と言われる倉庫業界の生存競争に打ち勝つヒントとは
(Photo/寺田倉庫)
 

「モノ」から「モノの価値」を預かる事業へ

 寺田倉庫は1950年にコメ倉庫として東京天王洲に創業し、かつてはほかの倉庫会社と同様、トランクルームや文書保管、運送、印刷などに事業を多角化してきた。ちなみに同社のトランクルーム事業は、関東運輸局から第1号の事業認定を受けたものである。

 しかし、どれもが価格競争に陥り、苦戦を続けていた。そこで1975年から美術品・貴重品の保管を開始、1994年にはワインセラーも開始した。

 創業以来、創業家による経営が続いていたが、2012年にまったくの異業種にいた中野善壽氏を代表取締役に招聘した。中野氏の前歴は、伊勢丹を経て、鈴屋の代表取締役専務など、倉庫業とは縁のないサービス業の経営者だった。

 中野氏は勝ち目のない事業から撤退し、社員も14分の1に削減した。同時に、高級ワインや美術品・コレクションの保管を強化するなど、付加価値の高い事業に重心を移した。ワインや絵画、貴重品では、厳重な温度・湿度管理およびセキュリティ管理を行っている(ちなみにセキュリティは生体認証などによる10段階認証)。ソムリエや美術品を取り扱う専門スタッフも置き、2015年には、楽器専用保管サービスも開始した。

 ワインは保管することが消費者の目的ではなく、おいしくなるまで寝かせて、「その後おいしく飲む」ことにこそ価値がある。すなわち、保管後の価値を上げるために、寺田倉庫は保管サービスを行っている。また、同社の倉庫が立ち並ぶ天王洲一帯を、アートギャラリーやレストラン、イベントなどを開催する観光スポットに変えた。

 なお、中野氏は2020年6月に退任し、東方文化支援財団の代表理事になった。後任には創業家の寺田航平氏が就いている。

倉庫業界では画期的な新規事業を開始

 こうした寺田倉庫だが、今回注目したいのは2012年から、B to C向けに提供を開始した「minikura(ミニクラ)」というサービスだ。

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寺田倉庫のB to C向けサービス「minikura(ミニクラ)」
(Photo/寺田倉庫)
 

 基本プランの「minikura HAKO」の場合、利用者は預けたい品を段ボールに入れて寺田倉庫に送り保管してもう。利用者は保管期間に応じて料金を支払う仕組みだ。利用者が送った段ボール(3辺合計120㎝)の保管料は、月額200円(2020年6月から250円)、箱の中身を取り出す際の費用は、預けて1年未満の場合は、850円(同1,000円)であるが、1年以上の場合は送料無料である。

 次に始めたのが「minikura MONO」のサービスであった。「minikura MONO」の場合には、利用者が送った荷物を寺田倉庫側がいったん開封し、中味を1点ずつ撮影し、利用者専用ページにアップしてくれる。これにより、利用者はいつでも預けた荷物を専用ページから確認できる。月の保管料は250円(2020年6月から300円)であるが、1点単位での取り出しにも対応しており、利用者が必要な品が出てきたら送料800円で送ってくれる。

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利用者は専用ページから預けた荷物を確認できる
(Photo/寺田倉庫)
 

 従来倉庫業では、「顧客の荷物は開封しない」というのが業界の常識であったが、寺田倉庫は、1品ずつ写真に撮り、顧客が何を預けているか明確にすると同時に、1品ごとの取り出しも可能にしたのである。これは倉庫業では、画期的なことであった。


 こうしたサービスを始めると、顧客からひんぱんに取り出しの要求が出てくると想像されるが、実はその頻度は多くない。倉庫業は、物さえ動かさなければ費用はほとんど発生しない。預けた品物の多くは、実は動いていないのである。

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