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  • 2026/02/18 掲載

大阪大学「DX大賞」受賞の舞台裏、効果すごかった「職員研修・推進チーム作り」の全貌

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IMD(国際経営開発研究所)の世界デジタル競争力ランキングで、日本は2025年に「デジタル/技術スキル」が最下位となった。リスク回避志向や、経営主導のシステムが現場に定着しにくい構造も、DX停滞の一因とされている。こうした中、2025年度DX大賞(業務変革部門)で大賞を受賞した大阪大学の取り組みは際立っている。学生約2万3000人、教職員約1万人を抱える巨大組織でありながら、現場のデジタルリテラシー向上を起点にDXを推進。トップダウンで作るDXではなく、業務現場が自ら使い改善していく独自のプロジェクト組織を編成することで、DXを着実に浸透させた。今回は、そんな大阪大学のDX推進の中身を詳しく解説する。
執筆:大阪大学 D3センター 特任准教授 富樫佳織

大阪大学 D3センター 特任准教授 富樫佳織

学習院大学法学部卒業。早稲田大学商学研究科修了(MBA)。NHK(日本放送協会)、放送作家、WOWOWでのプロデューサー、愛知淑徳大学 准教授、京都精華大学 准教授を経て現職。専門は、ビジネスモデル、イノベーション・プロセス、コンテンツビジネス、マーケティング。放送番組の受賞歴として『Blueman Group Connect to Japan』(WOWOW)での第40回国際エミー賞アート番組部門ファイナリスト、第2回衛星放送協会オリジナル番組アワード中継番組部門最優秀番組、映文連アワード2013「ソーシャルコミュニケーション部門」部門優秀賞、ほか。著書に『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』(2020年、SBクリエイティブ)『やわらかロジカルな話し方』(2017年、クロスメディア・パブリッシング)。

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DX大賞を受賞した大阪大学は何をした?取り組みの中身を詳しく解説する
(写真:大阪大学)

何が凄い? 現場課題を吸い上げる“組織の工夫”

 大阪大学では、大学事務が作成する書類やデータ入出力といった定型業務を効率化するためにRPA(Robotic Process Automation)を2021年から活用し始めた。AIと異なるのは、RPAは、これまで手作業で行っていた業務の流れをあらかじめシステムに登録しておき、その指示通りに実行することに特化している点である。

 大阪大学でDX推進を担っているのは情報推進部という部署になる。ユニークだったのは、事務改革推進室と情報推進部が一体となり全学(企業の場合、全社)に向けて、DX導入としてのRPA利用を学び合う「RPA推進タスクフォース」のメンバーを募ったことだ。この呼びかけには多様な複数の部署から初年度に15名ほどが集まった。

 大阪大学 情報推進部 中村太課長は、次のように振り返る。

「もともと現場には定型業務や繰り返しの作業が大変という意識はあったので、これを改善していくためには現場の若手社員を募る必要があると考え、全学に声がけをしました。手を挙げてくれたメンバーは、上司の許可を得ているとはいえ、本来の業務時間を削って参加してくれるため、その部署に役立つテーマ設定にしようと話し合いをしました。その流れから、会計のメンバー、人事のメンバーが自分の分野の中で業務効率化ができるツールを事務改革推進室・情報推進部と一緒に作っていくという形になりました」(中村氏)

 一般に、イノベーションや業務改革の論点では、新しい仕組みやシステムを組織全体に広げる際、どのようなプロジェクト型組織を検討するかが重要な論点とされてきた。その観点から考えると、大阪大学のDX推進を行った事務改革推進室と情報推進部が一体となり進めた組織運営には、独自の特徴があることが分かる。

 たとえば、プロジェクト型組織には、大きく「プロジェクト専従組織」と「プロジェクトチーム組織」がある(下図)。

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【画像付き記事全文はこちら】
プロジェクト組織のパターン
(出所:近能・高井(2010)を参照して筆者作成)

 プロジェクト専従組織は、新規事業やプロジェクトに多様なメンバーが専門的に従事する形態だ。そのため、部門間の調整のやりやすさや開発スピードの速さが特徴だ。ただし、各部門のメンバーが一定期間専属となるため、プロジェクト推進で得た知識やノウハウを定期的に自部門に持ち帰ったり共有したりすることが難しいというデメリットがある。

 一方、プロジェクトチーム組織は、参加する専門部門のメンバーを専従にせず、プロジェクトの仕事に参加する以外の時間は各部門に戻る形を取る。そのためメリットとして、新たに得た知識やノウハウを自部門に共有することができる。また、知識の共有を通して、自部門で潜在的だった困り事を課題として認識し、プロジェクトに持ち帰ってこられるメリットもあるのだ。ただし、自分が所属する部門の管理職と、プロジェクトリーダーの意思決定や業務依頼が違う場合には、メンバーの中にゆらぎが生じやすい。

 こうしたプロジェクトの形態がある中で、大阪大学の場合はプロジェクトチーム型を採用しつつも、プロジェクトマネージャーを特定の個人や役職に置かず、情報推進部という部署が事務改革推進室と連携をしながら運営をしていった点に独自性がある。

【図解】大阪大学流「プロジェクトチーム組織」の全体像

 大阪大学の場合は、企業で言うところの情報システム部門にあたる情報推進部が積極的に関与し、事務改革推進室と共にプロジェクトのマネジメントを行うという組織を作った。そして、プロジェクトで課題が発生するたびに双方でオンラインによる打ち合わせを重ねるなどして推進していった。

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