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  • 2021/02/04

アダプティブラーニングとは? “個別最適”教育はすでに普及モードに

メリット、市場成長性、企業動向まで解説

デジタル機器と通信回線で行う「eラーニング」は、いま右肩上がりで成長している。中でも、AI(人工知能)などのテクノロジーを駆使し、学習者一人ひとりへの「個別最適化」によって学習効果を最大化する「アダプティブラーニング」には、大手からスタートアップまでさまざまな企業が参入している。教育の理想形とも言えるアダプティブラーニングは、教師の負担を軽減し、教育のあり方も大きく変える可能性を秘めている。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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エドテックの本命、アダプティブラーニングとは?
(Photo/Getty Images)


eラーニング市場の主役はBtoC

 PC、スマホ、タブレットなどデジタル機器と通信回線を利用して「学習(ラーニング)」ができる「eラーニング」の市場は、右肩上がりで拡大している。矢野経済研究所が2020年4月に発表した「eラーニング市場に関する調査」によると、日本国内のeラーニングの市場規模は、2016年度は1,767億円だったが、2020年度は2,460億円で、4年で約1.4倍に拡大すると予測されている。

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eラーニングの国内市場規模の推移

 eラーニングは、企業が社員研修などで利用する「BtoB(法人向け)」と、幼児や児童・生徒、社会人などの個人が「勉強」のために利用する「BtoC(個人向け)」に大別できる。この調査によると2016~2020年度の4年間の成長率は、BtoBの15.5%に対し、BtoCは51.2%もあり、市場シェアもおよそ5対2でBtoCのほうが大きい。

 eラーニング市場の主役は個人ユースで、とりわけ政府が学校でのPCや高速通信回線の整備を推進している児童・生徒の学習支援の分野は有望と言えるだろう。そのように教育現場で利用されるICTを活用したテクノロジーを、教育(Education)と技術(Technology)を合わせた造語「エドテック(EdTech)」と呼ぶ。

 文部科学省は2020年度内に小・中学校で600万人分の端末配布、LAN工事完成を目指す「GIGAスクール構想」、経済産業省は2022年度が最終年度の「未来の教室」実証事業、「EdTech導入補助金」でエドテックを推進している. 2020年はコロナ禍によって児童・生徒が学校に通学できない事態が発生したために、「リモート在宅学習」のニーズでもエドテックのビジネスチャンスが広がった。


理想のエドテック「アダプティブラーニング」とは?

 エドテックにはさまざまなシステムがある。

 たとえば、教壇に立って授業する教師の姿を通信回線経由でPCやテレビの画面に映す「映像授業(ビデオ授業)」は、学校での「1対多数」の画一的な授業がそのまま家庭でも受けられ、教室の机が自宅の机に置き換わる「自宅の教室化」の段階にとどまる。授業中に回線経由で小テストを実施し、教師が説明しながらその答え合わせをしても、それだけではICTの利点を生かし切れていない。エドテックと呼ぶにはいささかローテクだ。

 教室の再現という意味で言えば、教師が生徒を指名して答えさせるような授業はリモート(遠隔)でもできるが、システムはあっても当てられた生徒や、先生に質問する生徒以外はただ傍観するだけだ。それもICTの利点をまだ生かし切れていない。

 ICTの利点を十分に生かせるエドテックの本命は、児童・生徒に対して「1対1」のマンツーマン教育が実施できるものになる。一人ひとりの理解度、習熟度や得手・不得手、興味や関心、本人の希望、さらには「飽きっぽい」「気が散りやすい」といった性格、学習時間の都合にも合わせた「個別最適化」ができるようなシステムが、理想のエドテックである。

 つまり、アナログの世界では「家庭教師」「個人教授」でなければ不可能だった個別最適化が、デジタルの世界ではICTを駆使したエドテックによってローコストで提供できるようになる。そんなシステムを「適合性(Adaptive)のある学習」という意味で「アダプティブラーニング(Adaptive Learning)」と呼んでいる。

教員側にもメリット、テクノロジーで志の原点に近づける

 アダプティブラーニングを可能にするテクノロジーは機械学習、音声認識、自然言語処理などができるAI(人工知能)で、ビッグデータ解析の手法も取り入れながら児童・生徒の理解度、習熟度、得手・不得手、興味や関心、意欲、性格などのデータを分析して、最も適応した内容、難易度のカリキュラム、教材、指導方法を選び抜き、提供する。

 その結果、同じ習熟度クラスの生徒でも学習メニューは一人ひとりで違ってくる。日本の中学校における数学の授業に導入したところ、習得にかかる時間が従来の半分に短縮できたという実験結果(コンパス提供「Qubena」を使用)もあるが、メリットはむしろ生徒ごとに的確な個別対応ができる点にある。

 アダプティブラーニングは学習効果が最適化できるだけでなく、学校の教師の負担軽減にもつながる。

 教師志望者で「わからない生徒など放っておけばいい」という考えを持つのは少数派だろう。大多数は「画一教育ではない、教え子一人ひとりへの個別対応によってみんながいい結果を残せる」という理想を胸に教職につき、現場では面談や学習アドバイス、個別の補習などで理想に近づこうと努力している。

 しかし、そんな「いい先生」も、まじめに努力すればするほど仕事の負担は過大になり、部活動や進路指導もしなければならず、身体を壊したり「燃え尽き症候群」に陥ったりする人が出ているのもまた、学校という職場の現実である。

 そんな彼らをテクノロジーでアシストできるアダプティブラーニングは、理想の教育に向けて真摯に取り組む教師に福音をもたらすシステムとも言える。さらには学校内で「担当教師の指導力の違いによって学習効果に差が出る」という属人的な要素を排除できるというメリットもある。

【次ページ】「6年で2倍強」アダプティブラーニング市場の成長性

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