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  • 2021/07/12

中外製薬が明かすDX&セキュリティ戦略の全貌、組織は3つの層に分けてPDCAを回せ

バイオ・抗体医薬品やがん領域の国内におけるリーディングカンパニーである中外製薬は、2020年3月、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表した。これは、デジタル技術によって、ビジネスの変革と社会への貢献を目指す同社のDXビジョンである。さらに、あらゆる領域でデジタル技術やデータを利活用する同戦略では、それを裏側から支えるセキュリティ対策が不可欠になる。執行役員 デジタル・IT統轄部門長 志済 聡子 氏が、DX&セキュリティ戦略の全貌を語った。

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中外製薬
執行役員 デジタル・IT統轄部門長
志済 聡子 氏

製薬企業がデジタル化に取り組む理由

 中外製薬は、バイオ医薬品をリードする研究開発型の製薬企業だ。医療医薬品メーカーとして日本トップクラスの企業であり、特にがん領域では売上シェア1位を誇る。2002年にはスイスのロシュ社と戦略的アライアンスをスタートし、そのグローバルな販売網で医薬品を世界中に供給している。

 2019年、同社にデジタル・ITの責任者として日本IBMから入社したのが志済 聡子 氏である。志済氏は、同社がデジタル化に取り組む背景には、製薬業界が直面している3つの課題があると説明する。

 1つは少子高齢化による医療財政の逼迫である。製薬業界には、デジタルを活用して持続可能な医療に貢献することが求められる。2つ目はCOVID-19によって明らかになった安全保障の危機だ。レセプトデータ、電子カルテ、検診データ等を活用して治療薬開発を加速すると共に、医薬品を安定的に供給することが求められる。そして3つ目が、医療ニーズの増加、疾患の複雑化だ。これに対しては、デジタルを活用した革新的な新薬創出への期待が高い。

「特に創薬においては、医薬品のR&Dにおける生産性が年々下落していることが問題となっており、その解決策として、AIへの期待が高まっています。通常、新薬の開発には、基礎研究から承認までに10年以上の期間と、1000億円以上の費用がかかりますが、AIによってプロセスを短縮し、開発費用を圧縮すると同時に成功確率上昇につながるのではないかと期待されています」(志済氏)

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医薬品のR&D生産性が年々下落する中、“デジタル”は生産性向上の切り札になり得る
(出典:中外製薬社内資料*)

*1: Deloitte ”Unlocking R&D productivity Measuring the return from pharmaceutical innovation 2018”(グローバル大手12社を対象)
*2: 「第3回 保健医療分野におけるAI活用推進懇談会(平成29年3月) 奥野構成員提出資料」(厚生労働省)を加工して作成。https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000154209.pdf(2021/3/12アクセス)


 創薬には膨大な時間・コストがかかることから、製薬企業の立ち位置も、いわゆるジェネリックと呼ばれる後発医薬品を扱うグループと、革新的な新薬の創出を目指す、先発医薬品を扱うグループに分かれている。

「中外製薬が目指すのは後者です。そのためには創薬力を高めることが重要であり、それにはデジタルが不可欠なのです。弊社代表取締役会長の小坂も、自らデジタルへの想いを社内外にメッセージ発信しています。そしてトップのコミットメントのもと、2019年10月には、全社横断でDXを推進するデジタル戦略推進部を立ち上げました」(志済氏)

「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」とそれを実現する3つの戦略

 2020年3月、中外製薬は「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表した。これは、2030年に向けた同社のDX戦略である。掲げられた目標は「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターになる」だ。その実現に向けた戦略が次の3つである。

  • ・デジタルを活用した革新的な新薬創出
  • ・すべてのバリューチェーンの効率化
  • ・デジタル基盤の強化

 新薬創出では、AIを活用した創薬、ゲノム情報やリアルワールドデータ等の利活用、ウェアラブルデバイス等で病状のモニタリングや疾患の発症予測を行うデジタルバイオマーカーの開発に取り組む。バリューチェーンの効率化は、すべての機能で取り組んでいるが、特にスマート工場を目指したデジタルプラント、営業や医療情報担当者を支援するデジタルマーケティングの取り組みを強化している。

 そして、それらを支えるのが、社員の業務効率化や質の向上、新たな価値創造の実現をデジタルで支援するDigital Innovation Labの取り組み、デジタル人財育成、外部パートナーとの連携といったソフト面と、各種ITシステム等のハード面でのデジタル基盤の強化である。

 ただし、全社をあげてデジタル化に取り組めば、あらゆる分野でサイバーセキュリティの脅威が増大していくことは避けられない。

「たとえば、R&D領域では機密情報の漏えいやプライバシーの侵害がありえます。また、バリューチェーンにおいては生産の停止、品質不良、営業の業務妨害といったリスクがありますし、デジタル基盤においては、不正アクセスやデータ漏えい、パートナー・取引先の増加による攻撃機会の増大などが考えられます」(志済氏)

 さらに、サイバー攻撃の脅威も年々高度化・複雑化している。直近でも、VPNの脆弱性を突いた攻撃やランサムウェアによる二重脅迫などが話題になった。

 加えて、各国の規制・ガイドラインへの対応も求められる。現在、各国政府や国際機関によって医療や個人情報に関わる法規制が強化されている。その対応にITが不可欠であることはいうまでもない。

【次ページ】中外製薬のDXを支えるセキュリティ戦略「CHUGAI CYBER SECURITY VISION 2030」

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