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  • 2021/09/23 掲載

「ケニアのGDPの半分がモバイル決済」のワケ、アフリカで勃興する新たな経済圏

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東南アジアなど新興国に越境してビジネスを始める日本人は年々増えているが、中にはアフリカを拠点とする起業家もいる。政情が安定せず、難度の高そうな印象も受ける大陸だが、なぜアフリカを選ぶのか。実際にアフリカで事業を展開する日本人経営者の話からアフリカビジネスの実情に迫る。アジア・アフリカ・インベストメント&コンサルティング社(AAIC)代表取締役 椿進氏をモデレーターに、日本植物燃料 代表取締役社長 合田真氏とナイジェリア イガンムFCオーナー加藤明拓氏が語った。
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ナイジェリア イガンムFCオーナー加藤明拓氏(左上)、アジア・アフリカ・インベストメント&コンサルティング社(AAIC)代表取締役 椿進氏(右上)、日本植物燃料 代表取締役社長 合田真氏(下段中央)
本記事は2021年8月9〜11日開催「キリロムグローバルフォーラム2021アフリカ大陸特集〜アフリカで旬なビジネスを徹底トーク!〜(主催:キリロムグループ)」のセッションを基に再構成したものです。

バイオ燃料を軸に、モザンビークで電子マネー決済を広める

 日本植物燃料 合田氏が行う事業はバイオ燃料の製造・販売だ。新興国ではいまだ電気が通っていない地域も多く、人々は発電機を頼りに電化製品を使っている。合田氏はこの発電機を動かすためのバイオ燃料を手掛けている。アフリカ・モザンビークの農村でバイオ燃料の生産効率が良い作物を配って農業をしてもらい、生産された原料を買い取っているそうだ。

 もともとこの事業は東南アジアで行われていたが、進出先を探していた時に受け入れてもらえたのがモザンビークの村だったという。

 合田氏は買い取った燃料で発電を行い、村に冷蔵庫を設置。冷蔵・冷凍された食料品を売り始めた。事業は好調で、村の人を雇って運営を続けていたが、ある日店舗の売上の3割がなくなってしまった。

 これに対策するため合田氏は会計にデポジット型の電子マネーを導入。以降、売り上げが消えることはなくなり、販売所は地域のお金を管理する銀行のような場所へと変化していった。従来、この村ではお金は地面に穴を掘って保管していたそうだが、洪水やシロアリの被害で無くなることも多かった。電子マネーが普及したことで村の人たちは喜んだという。

 さらに合田氏は電子マネーをバイオ燃料の原料買い取りにも応用。電子マネーを導入することで、誰が、いつ、どれくらいの原料を納品したのか、正確に把握できるようになった。今では電子マネーを媒介に与信が成り立つようになっているという。

「今まで、モザンビークの農村部ではサービスや製品の売買履歴が記録されていませんでした。電子マネーを用いれば売買の履歴が正確に把握できます。農村のデジタル化で実現したいことは、『努力を見える化』すること。与信を可視化して記録すれば、前向きに仕事に取り組む人も増えていくはずです」(合田氏)

 現在、合田氏はバイオ燃料と電子マネーを軸に、アフリカの農業をデジタル基盤に乗せていこうとしている。デジタル与信に応じた出資や、種子や肥料の販売、農業器具のレンタルなどさまざまな事業を計画しており、JICAや現地政府、日本企業と共に実現していく計画だ。

 将来的には電子マネーのIDを転用して医療や保険などのサービスも提供していく構想だという。バイオ燃料の製造・販売から始まった事業が、モザンビークの人々の生活をよりよく変えていこうとしている。


ナイジェリア発のサッカークラブで地域を活性化、子どもにチャンスを

 一方、イガンムFCオーナーの加藤氏はクラブを軸にナイジェリアの活性化を目指している。

 高校時代はインターハイに出場して優勝するサッカー選手だった加藤氏。ビジネスに専念するようになってからは、リンクアンドモチベーションでスポーツコンサル事業を立ち上げた。その後フォワード社を創業した後にはサッカークラブの運営にも着手。2015年にはカンボジアでアンコールタイガーFCを経営している。

 同氏がこのセッションで紹介したのは2016年に経営移譲をうけたナイジェリアの「イガンムFC」の事例だ。現地の選手から「サッカーで地域を活性化したい」と請われた加藤氏は、選手の思いに共感してチーム経営を決意した。

「イガンムFCはナイジェリアのスラムにあるチームです。とても貧しい地域で、視察に行くと子ども達には自身の可能性を生かすチャンスがほとんどないことを知りました。現地では指導者やグラウンドが不足しており、成長する機会が与えられていなかった。この状況を変えなければと思い、声をかけてくれた選手と共にイガンムFCの経営を始めました」(加藤氏)

 チームの目標は、サッカーの本場・ヨーロッパのトップチームに匹敵する選手を輩出すること。まずはラゴス郊外にグラウンド用地を購入し、その後2019年には若手選手の育成を目指し、U12ワールドサッカーチャレンジに出場。世界の強豪チームを倒し、見事優勝を獲得した。

 加藤氏が目指しているのは、「チームを軸にした経済圏」だ。同氏が先行して経営しているカンボジアのアンコールタイガーFCは、同国内で集客率No.1を誇っている。チームの知名度を武器に金融や小売りなどのサービスを提供することで、本拠地ではサッカークラブを中心にした経済圏が生まれている。

 かたやナイジェリアのイガンムFCでは、食糧生産に着手しているそうだ。現地では貧しい家庭が多く、動物性タンパク質を取れない人が多い。強豪チームを目指そうとしても体が出来上がっていなければ実現は難しくなる。この課題を解決するため、加藤氏は現地で食べられているアフリカマイマイ(カタツムリの一種)の養殖・販売を開始。事業の売り上げをチーム経営に充てる予定だ。

 イガンムFCは運営に年間数千万円の赤字を出しているが、加藤氏は「これから経済が伸びる国に投資して、クラブ経営をしながら収益性を高めていきたい。そのほうが多くの人に夢や希望を与えられる」と前のめりな姿勢だ。

【次ページ】ケニアではモバイル決済が金融イノベーションを推し進める

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