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  • 2021/09/28

DXレポート2.1とは? 企業とベンダーの「いびつさ」を解消する方法

経済産業省は2021年8月31日、デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』の取りまとめを公表した。新型コロナウイルス感染症により経済は大きな打撃を受けている。これらの状況を打開するには、個社単位の変革には限界があり、データとデジタル技術の活用による産業全体の変革を促していくことが求められている。今回の記事では、同レポートをデジタル産業の創出に向けていち早く取り組むべき方向性を提示するものとして位置づけ、そのポイントを解説する。

国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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DXレポート2追補版とは?
(Photo/Getty Images)

DXレポート2.1とは何か?

 DXレポート2.1(DXレポート2追補版)は、経済産業省が2020年12月に公開した「DXレポート2」に追補する形で、ユーザー企業とベンダー企業を区別することなく、デジタル変革後の産業の姿、その中での企業の姿、そして企業の変革を加速させるための課題や政策の方向性を議論した内容を取りまとめたレポートだ。

 そもそも「DXレポート2」では、政策の方向性として「レガシー企業文化からの脱却」「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」の必要性を示した。また、企業が「ラン・ザ・ビジネス」から「バリューアップ」へ軸足を移し、アジャイル型の開発などによる事業環境の変化への即応性を追求すること、究極的な産業の姿としてユーザー企業とベンダー企業の垣根がなくなっていくことの方向性などが示された。

 ただ、この「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」という言葉が、“ユーザー企業”と“ベンダー企業”という区別が残存する、これまでの考え方に縛られたことを印象付けてしまった。そのため、相互依存関係を脱することはできず、一足飛びでは変革を進めることが難しいという課題も浮き彫りとなった。

 また、これまでの「DXレポート2」の中では、「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿や、その中での企業の姿がどういったものであるかという点までは議論が進められていなかった。

 こうした背景を踏まえ、DXレポート2に追補されたのが、DXレポート2.1(DXレポート2追補版)というわけだ。

DXレポート2追補版が示す「目指すべきデジタル社会の姿」とは

 DXレポート2追補版が掲げる「目指すべきデジタル社会の姿」とは、ユーザー企業やベンダー企業という区別がなく、各企業がそれぞれのデジタルケイパビリティを磨き、新たな価値を創出する中で成長していく姿だ。

 同レポートでは、ユーザー企業とベンダー企業が「相互依存関係」にあり、この関係こそがデジタル時代に必要な能力を獲得できず、デジタル競争を勝ち抜いていくことを困難にしていると指摘。「低位安定」の関係に固定されてしまっていると表現された。

 既存産業の業界構造は、ユーザー企業は委託による「コストの削減」を、ベンダー企業は受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」というWin-Winの関係にも見える。しかし、これが「低位安定」の関係に固定されてしまうリスクとなるのだ。ユーザー企業も、ベンダー企業もこの低位安定の構造を認識し、この構造から脱する方策を検討していく必要があるだろう。

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ユーザー企業とベンダー企業の相互依存関係
(出典:経済産業省 デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』 2021年8月)

デジタル産業を目指す企業が抱える「3つのジレンマ」

 DXレポート2追補版では、既存産業の企業がデジタル産業の企業へと変革するためには、「危機感のジレンマ」「人材育成のジレンマ」「ビジネスのジレンマ(ベンダー企業)」という3つのジレンマが存在していると指摘する。

 危機感のジレンマとは「目先の業績が好調のため、変革に対する危機感がない」ことを指す。投資体力があるうちに変革を進めていくことが重要であるが、危機感が高まったときにはすでに業績が不調であり、変革に必要な投資体力を失っているケースもある。

 次に、人材育成のジレンマとは「技術が陳腐化するスピードが速く、時間をかけて学んだとしても、習得したときには古い技術となっている」ことを指す。即座に新技術を獲得できる人材は引き抜かれてしまうのだ。

 ベンダー企業にとっては、ビジネスのジレンマも大きい課題だ。受託型ビジネスを現業とするベンダー企業が、ユーザー企業のデジタル変革の伴走を支援する企業へと変革しようとすると、内製化への移行により受託型ビジネスと比べて売上規模が縮小する。また、ベンダー企業がユーザー企業をデジタル企業への移行支援により、最終的には自分たちが不要になってしまうケースも出てくる。

 こうした3つのジレンマを打破してDXを進めるためには「企業経営者のビジョンとコミットメント」が必要不可欠だ。昨今、「パーパスドリブン経営」への注目が高まっており、持続的に社会にどのような価値を提供する存在となるかという観点も重要となっている。

デジタル社会とデジタル産業の目指すべき姿を定義

 DXレポート2追補版で示された、目指すべきデジタル社会の姿は、以下の3点だ。

  • 社会課題の解決や新たな価値・体験の提供が迅速になされる
  • グローバルで活躍する競争力の高い企業や世界の持続的発展に貢献する企業が生まれる
  • 資本の大小や中央・地方の別なく価値創出に参画することができる

 新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの人がデジタル技術の持つ新たな価値に気づき始め、人々の価値観が大きく変化し、デジタル社会に向けた不可逆的な変化が一気に押し寄せている。社会全体でデジタル化が進む中で、デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらすのが、デジタル産業である。

 同レポートでは、デジタル産業の姿として以下の5点を掲げている。

  • 課題解決や新たな価値・顧客体験をサービスとして提供する
  • 大量のデータを活用して社会・個人の課題を発見し、リアルタイムに価値提供する
  • インターネットにつながってサービスを世界規模でスケールする
  • 顧客や他社と相互につながったネットワーク上で価値を提供することで、サービスを環境の変化に伴って常にアップデートし続ける
  • データとデジタル技術を活用し、マルチサイドプラットフォームなどのこれまで実現できなかったビジネスモデルを実現する

 既存産業の企業とデジタル企業の違いは何か? 既存産業の企業は、主にビジネスケイパビリティ(価値を創出するための事業能力)によって価値を創出してきた。対して、デジタル企業はデジタルケイパビリティ(ビジネスケイパビリティをソフトウェアによってデジタル化したもの)を活用して価値を創出する点が大きな違いとなる。

 デジタル産業を構成する企業は、価値創出の全体にデジタルケイパビリティを活用し、これらを介して他社・顧客とつながり、エコシステムを形成している。

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デジタル産業を構成する企業の姿
(出典:経済産業省 デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』 2021年8月)

【次ページ】デジタル産業の構造は“ネットワーク型”へとシフト

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