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  • 2021/09/27

118の自治体が導入「パートナーシップ制度」、見えてきた“限界”と国が取り組むべきこと (2/2)

■婚姻に伴う法的効果(「家族」としての生活・暮らしを補償する諸制度)
(1)「家族」の証明:戸籍
 結婚により戸籍が夫婦単位で作成されます。戸籍は、夫婦とその子が「家族」としての法的保障(や行政サービスなど)を受けるための唯一の公的証明となります。民間サービスも戸籍による証明を要求することが多々あります。

(2)夫婦の共同生活:扶養義務・社会保険など。夫婦の一方が外国人の場合、在留資格
 夫婦としての共同生活は、民法上の扶養義務や社会保険制度が保障しています。

(3)子の監護・育成:夫婦の共同親権・社会保険など
 子との関係については、夫婦単位の親権や社会保険制度が保障しています。

(4)別離を保障:離婚時の財産分与や死亡時の相続・相続税の配偶者控除など
 死や別離に伴う不安定については、離婚時の財産分与や死亡時の相続・配偶者の税額控除、年金制度が保障し、このようなセーフティーネットがあるからこそ、夫婦として役割分担をしながら安心して家族生活を営むことができます。

 しかし、前述した札幌地裁の判決が指摘するとおり、このような法的保障は同性カップルには一切及びません。自治体パートナーシップ制度には、2人の関係を自治体が公的に認知するという意味で限定的に(1)の機能はありますが、(2)(3)(4)の機能はありません。

 そして当然のことながら当該自治体限りの制度であるため、引っ越して自治体を離れると、それまでです。自治体施策にこのような限界があることから、2018年7月には、全国政令指定都市の連合指定都市市長会は国としての対応を求める声明を発表しました。

 また、2021年2月の共同通信調査によれば、パートナーシップ制度を導入済みまたは導入予定の自治体で回答した87自治体のうち約60%が現行のLGBTQ当事者に関する国内制度は不十分と回答しています。しかしながら、理解増進法案が未提出で終わったように、国の取り組みは残念ながら進んでいません。

自治体が進めるさらなる創意工夫

 国の取り組みの現状にかかわらず、いや、取り組みが進まないからこそ、自治体ができる範囲で、当事者の困難を解消するための努力が積み重ねられています。たとえば、以下のような取り組みがあります。

(1)相互利用制度
 パートナーシップ証明は当該自治体限りの制度で、引っ越しなどにより住民でなくなれば、宣誓受領書などを返納する必要があります。たまたま引っ越し先の自治体に制度があっても、改めて一から申請をする必要があり、精神的にも経済的にも負担となります。

 2019年、福岡市と熊本市は協定により相互利用制度を発足し、両市内の引っ越しという限界はあるものの、負担の軽減を試みています。その後、兵庫県尼崎市など阪神7市1町、神奈川県横須賀市など4市1町でも同様の試みが始まっています。
(2)ファミリーシップ制度
 子どもは家族の重要な構成員ですが、同性カップルの子については、その監護育成のために必要となる法的保障が十分でないことは、子の親である同性カップルにとって深刻かつ切実な問題です。

 その困難を少しでも軽減・解消することを目的として兵庫県明石市は、カップルの関係にとどまらず、子(未成年)との関係も含めて証明するファミリーシップ制度を2021年1月から開始しました

 証明にとどまらず、子との関係で生活上発生する問題、たとえば「法律上の親でないパートナーも連携医療機関において病状説明や入退院の手続きなどを受けることができるようにすること」「市営住宅に家族として入居できるようにすること」など、自治体でできる範囲で、生活と暮らしに即した創意工夫を行っています。

 その後、徳島市、東京都足立区、福岡県古賀市、愛知県豊田市もファミリーシップ制度を開始、埼玉県鴻巣市も年内開始予定です。

 上記のほかにも創意工夫が行われています。たとえば近親婚要件です。自治体パートナーシップ証明は、婚姻同様、「近親者」である同性カップルは受けることができません。しかし、婚姻に代えて養子縁組によりパートナーの死後を保障する同性カップルもいます。

 近親婚要件をそのまま適用すると当該カップルは近親者となるためパートナーシップ証明を受けられません。しかし、世田谷区・福岡市・横浜市など一部自治体はその実情を理解し、そのようなカップルでもパートナーシップ証明が利用できる制度設計を工夫しています。

自治体では乗り越えられない壁、必要となる法制度整備

 2015年に導入された自治体パートナーシップ制度は、住民である当事者の困難の軽減にとどまらず、社会におけるLGBTQ理解促進の上で重要な意義を果たしてきました。他方、「家族」としての法的保障は自治体では実現できず、差別偏見を解消するうえでの本質的な限界となっています。

 加えて、自治体パートナーシップ制度の全国人口カバー率が40%に達したとはいえ、導入状況が全国均等に分布しているわけではなく、地域的に大きな偏りがあることも厳然たる事実です。そのため、5月に棚上げとなった理解増進法案など国・立法レベルでの取り組みは不可欠です。

 筆者は友人のゲイ当事者からこんなことを言われたことがあります。「自分たちは同性愛者であるから、大好きな日本に住んでいても、異性愛者ができる『結婚』をすることができない。自分の存在を日本社会に認めてもらえていないように感じ、『生きていていいのだろうか』と自分の存在を疑問に思うこともある」。

 OECDが2020年に公表した報告書によればLGBTIに関する法制度整備状況では日本は35カ国中34位でした。日本における法制度の整備は、筆者の友人のような当事者が自己肯定感をもって日本で安心して暮らし、また、日本を諦めて他国に流出しないために必要です。国による法制度整備に向けた施策の推進を心より望みます。

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