- 2021/09/27 掲載
118の自治体が導入「パートナーシップ制度」、見えてきた“限界”と国が取り組むべきこと
藤田直介
LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)共同代表及び共同創設者。早稲田大学法学部卒、米国ミシガン大学ロースクール法学修士。1987年弁護士登録(39期)。ゴールドマン・サックス証券株式会社法務部部長時代(2009年3月-2019年12月)部下のカミングアウトを受けたのをきっかけにLLANの活動を開始。現在年金積立金管理運用独立行政法人法務室長。2017年6月本団体の活動に関連して英フィナンシャル・タイムズ企業の法務部門に関する「最も革新的な法務責任者」部門を受賞。『法律家が教えるLGBTフレンドリーな職場づくりガイド』(2019年12月)編著。
山本大輔
LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)メンバー。東京大学法学部卒、早稲田大学ロースクール卒、米国UCLAロースクール在学中(Law & Sexuality専攻)。2015年弁護士登録(第68期)。大江橋法律事務所(東京オフィス)弁護士。2017年に本稿共著者の藤田直介らのカミングアウトストーリーに感動して以来、LLANの活動に積極的に関与している。
2019年以降、急拡大した自治体パートナーシップ制度
自治体パートナーシップ制度とは、同性カップルの関係を婚姻と同様の精神的・経済的絆をもった関係であると確認した自治体が、宣誓受領書などの公的書類を当該カップルに交付する制度です。当初緩やかであった自治体パートナーシップ制度の導入は、2019年を境に急速に拡大、2021年7月1日時点で導入自治体数は110、証明を受けたカップルは2018組に達しました。
直近では三重県・佐賀県や栃木県日光市などが導入し、導入自治体数は2021年9月1日時点で118、全国人口カバー率は40%を超えました(「自治体にパートナーシップ制度を求める会」調べ)。
制度導入の拡大は多くのLGBTQ当事者・団体の取り組みの成果です。それと同時に、差別・偏見に苦しむ当事者の現実を正しく理解し、受け止め、人権・平等という観点はもとより、「多様性を尊重」し、「誰もが」・「自分らしく」・「安心して」、「学び、働き、暮らせる」街づくりのため、自治体の首長・関係者が努力し、行動した結果でもあります。
自治体パートナーシップ制度の導入は、導入自治体に限らず、広く社会におけるLGBTQの理解を促進し、企業・学校現場などの民間における取り組みも促してきました。本稿では自治体パートナーシップ制度にこのように重要な意義がある一方、当事者が直面する困難や差別偏見の解消という観点からは大きな限界があり、法制度の整備などより抜本的な対応が必要となることについて考えます。
見えてきた自治体パートナーシップ制度の“限界”
2021年3月、札幌地方裁判所は、婚姻の法的効果を同性カップルが享受できないのは憲法第14条1項(平等権)に違反すると判断しました。札幌地裁は、婚姻の本質は「永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むこと」であり、異性との間ではなく同性との間でそのような意思をもつ同性愛者は、同性パートナーとそのような共同生活を営むにあたって、異性カップルと同様の法的保障を受ける権利があると判断しました。
そもそも異性カップルは婚姻制度に基づき「家族」として生きるうえでどのような法的保障を受けているのでしょうか。婚姻に伴う法的効果、つまり、「家族」としての生活・暮らしを保障する諸制度は大きく次の4つが挙げられます。
【次ページ】婚姻に伴う法的効果、自治体パートナーシップ制度の限界
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