• 2021/06/28 掲載

160以上の企業・団体が「同性婚」賛同、共通して挙げる“企業視点のメリット”とは何か

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ここ数年LGBTQに関する理解が緩やかに進み、同性間の婚姻(同性婚)について、耳にすることが多くなりました。2021年3月には「同性婚を認めない現行法が憲法の平等原則に違反する」と札幌地方裁判所が判断し、広くメディアで報道されました。世界に目を転じると、2000年以降ほとんどの先進経済国で同性婚が実現、わずか20年の間に日本は、中国・インド・ロシア・韓国と並び、グローバル先進経済国の中で少数例外派となりました。2018年9月在日米国商工会議所は同性婚の法制化を提言、約3年弱が経過した現在、同性婚の法制化に賛同する企業・団体数は163社に達しています(2021年6月3日現在)。企業が同性婚に賛同する理由について考えます。

LGBTとアライのための法律家ネットワーク 理事 藤田直介、理事 稲場弘樹

LGBTとアライのための法律家ネットワーク 理事 藤田直介、理事 稲場弘樹

藤田 直介
LGBTとアライのための法律家ネットワーク共同代表及び共同創設者。早稲田大学法学部卒、米国ミシガン大学ロースクール法学修士。1987年弁護士登録後(39期)、国内法律事務所、米国法律事務所を経て、2009年3月よりゴールドマン・サックス証券株式会社法務部部長、同社LGBTネットワーク・アライ。2017年6月本団体の活動に関連して英フィナンシャル・タイムズ企業の法務部門に関する「最も革新的な法務責任者」部門を受賞。

稲場 弘樹
LGBTとアライのための法律家ネットワーク理事及び共同創設者。京都大学法学部卒、米国ニューヨーク大学ロースクール法学修士。国内金融機関、外資系金融機関を経て、2002年4月よりゴールドマン・サックス証券株式会社勤務。シニア・カウンセル、ヴァイス・プレジゼント。同社LGBTネットワーク共同代表。

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同性婚の法制化に賛同する企業を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」。賛同する企業・団体数は163社に達している(2021年6月3日現在)
(出典:一般社団法人Marriage For All Japan - 結婚の自由をすべての人に プレスリリース)


ある当事者社員の同性婚への想い

 筆者の私たちは元職場の上司・部下で、稲場さんからのカミングアウトをきっかけとして社内外でLGBTQに関連する取組みを始めました 。稲場さんはカミングアウト後、自分がもっとも実現を望むのは「同性婚」だと語りました。


「同性婚が認められていないということは、同性愛者に対する差別と偏見の象徴です。婚姻は多くの人に関わっている非常に身近なものであるにもかかわらずそれができない、つまり同性愛者が法律的に差別されているわけで、これほど明確な差別はほかにありません。企業にとって社員一人ひとりが持てる力を十分に発揮できる職場環境を整備することは必須です」

 稲場さんはさらに次のように続けました。

「LGBTQ当事者にとっては職場でカミングアウトしてストレスを感じずに仕事に集中できる職場環境が理想的ですが、職場環境が整備されているだけではなかなかカミングアウトすることはできません。家族や親戚、友人などの他のステークホルダーの理解が乏しい中、職場でだけカミングアウトすることはなかなか難しく、結局社会全体の理解が進まないと職場でのカミングアウトも増えていかないのです。企業が日本でインクルーシブな職場環境を整備したくとも、日本で同性婚が認められていないということがネックになるのです」


在日商工会議所が提言、企業にとっての「3つのメリット」

 「日本で婚姻の平等を確立することにより人材の採用・維持の支援を」。米国、オーストラリア・ニュージーランド、イギリス、カナダ、アイルランドの在日商工会議所が、2018年9月ある提言を公表しました。


 同性のカップルを異性カップルと婚姻制度上同等に処遇することができれば、企業目線では3つのメリットがあり、他方、グローバル競争、特に人材をめぐる競争を考えるとき、制度整備を怠ることは日本の国際競争力に大きなマイナスとなると下記のように示しています。

(1)国際競争力
 今や高度人材は世界を舞台に活躍し、企業間競争は国境を越えて熾烈に行われています。LGBTの高度人材は、LGBTを尊重し制度上平等に処遇する国と、未整備国の選択に直面したとき、いずれの国・企業を選択するでしょうか。
(2)職場の生産性
 法律上の夫婦であれば、税金・医療・保険・在留資格など、法律上また福利厚生制度上さまざまな保障を受けることができます。しかし日本では、社員の同性パートナーを含む家族を、企業の自主努力によっても、完全に平等に処遇することはできません。

 このような社会環境・職場環境が、LGBT社員の精神面も含めた生産性に大きな負の効果をもたらしていることは最近の調査などからも明らかです。逆に差異を解消することができれば、モチベーション、チームワーク、創造性の発揮を通じて、生産性の向上が期待できます。
(3)企業の社会的責任(CSR)
 国内そして国際的潮流として、SDGsやビジネスと人権の考え方が広く浸透しつつあります。企業が法制度整備を含めダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて努力することは、このような責務の遂行に資するものであり、国際舞台における日本の地位向上にもつながります。
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次ページでは、世界における日本の位置づけを図で解説します

【次ページ】160を超える企業・団体が賛同、共通して挙げる「正のスパイラル」

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