同性婚をめぐる世界の状況
同性愛者同士のカップルに法律上の保護を与える形としては、同性婚を認めるものと、結婚とは別の制度(登録パートナーシップ制など)により、相続・扶助義務その他一定の保護を図るものがある。各制度を持つ国・地域の一覧は下表のとおりである。
同性婚を可能とする国・地域(29カ所) |
オランダ、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチン、デンマーク、ブラジル、フランス、ウルグアイ、ニュージーランド、英国、ルクセンブルク、米国、アイルランド、コロンビア、フィンランド、マルタ、ドイツ、オーストラリア、オーストリア、台湾、エクアドル、コスタリカ、スイス(注1) |
パートナーシップのみが可能な国(13カ国) |
アンドラ、イスラエル、イタリア、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スロベニア、チェコ、チリ、ハンガリー、ベネズエラ、メキシコ(一部の州)(注2)、リヒテンシュタイン |
(データ出典:NPO法人EMA日本)
注1:スイスは、2022年の施行予定。
注2:メキシコでは一部の州において同性婚が実行され、それらの州で成立した同性婚がすべての州でその効果を認められている。
国数でみると、世界196カ国のうちのおよそ15%、世界の人口に占める同性婚制度のある国および地域の人口の割合は、およそ17%に及ぶ。
同性婚かパートナーシップ制度のいずれかを持つ国や地域のGDPは、世界全体のおよそ58%を占めることになる。また、G7中、何らの制度も有していないのは日本だけであるとの指摘もある。
日本の現状、自治体パートナーシップが広がるも法的効力なし
日本の現在の法制度では、婚姻は男女間のみのものとされ、同性カップルは法律上の夫婦になることができない。
同性カップルのためのパートナーシップ制度を目にすることが増えたが、このパートナーシップ制度は諸外国のそれとは異なり、各自治体が定め、生活場面におけるカップル関係の事実上の尊重を促すものであり、何ら法的な効力を持たない。
したがって、
自治体パートナーシップに登録しても、所得税の配偶者控除、健康保険への被扶養者としての加入、財産分与や相続など、婚姻関係にあれば法律に基づき受けられる利益は得られない。
しかしながら、パートナーシップ制度は、2015年に東京都渋谷区と世田谷区において最初に導入されて以来、広く認知されることとなり、北海道札幌市、神奈川県横浜市、大阪府大阪市、福岡県福岡市などの主要都市においても次々と導入され、現在は110を超える自治体が同制度を有している。「同性パートナーシップ・ネット」が
公表しているデータによると、実施自治体の人口の合計は、日本の総人口の41%程度を占める。
このような自治体の取り組みにより、2015年以来、同性カップルに対する法的保護の必要性が広く認知されてきた。そうしたことも背景に、2019年6月、野党三党が国政政党として史上初めて、同性婚を可能にする民法改正案を衆院に提出した。衆議院法制局は2021年2月、「同性婚の法制度化は憲法上の要請であるとする考えは十分に成り立ち得る」との踏み込んだ見解を示したが、結局法案は現時点まで国会で審議されるに至っていない。
そのような中、2021年3月、札幌地方裁判所は、同性婚を許容していない民法や戸籍法の現行規定について、法の下の平等を定めた憲法第14条に違反するとの判断を裁判所として初めて示した。同性婚を認めないことの違憲性を主張する同様の訴えは東京、大阪、名古屋、福岡の各地裁でも現在係属中であり、今後どのような判決が下されるのか、注目されている。
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