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- 2021/11/12 掲載
日本人が仕事で才能を発揮できない理由、なぜ「呪い」を解く必要があるのか
山口揚平氏×山口周氏対談:
才能を発揮できない理由は「呪い」?
その中には「これまでは生活や健康を二の次にして仕事をしてきたが、これからは生活と仕事を逆転させたい」という相談も寄せられています。周さんは3~4年前、鎌倉に移る際に「最初に住む場所を決めて、その後に仕事を持ってくる」という話をされていましたね。コロナ禍ではもはや「当たり前の考え方」のように聞こえるのですが、当時は先進性を感じていました。このような悩みを持っている人たちにどんなことが言えますか。
山口 周氏(以下、周氏):自分の中で最近、「生活と仕事のバランス」、つまり働き方と紐づいたテーマとして「呪い」というのがあり、その話と関係しそうです。現在、僕は無職の身なのですが、次の職業は、「陰陽師」がいいと思っています。陰陽師になりたいと思ったのは、今年(2021年)3月に京都に行って、公家の末裔の方とお話ししてからなのですが、まずその話をします。
京都には数多くの神宮(皇室とつながりが深い神社)があります。天皇陛下が御所に住み、その周りには宮家が住んでいるのですが、「天皇陛下や宮家の生活の手助け」を担う、公家の一族も近くに住んでいました。こうした一族は一種の企業として社会システムを形成していて、京都の経済の中心だったといいます。
宮廷には「衣・食が満たされている人たち」が暮らしていたのですが、そうした人たちの人生をより良いものにするために、公家がどういうことをサポートしていたかをみると、「人間が最低限度の生活できるようになったときに、何にお金を払うのか」が分かるという仮説を持っています。たとえば、それは蹴鞠などの遊びやおいしい食事、きれいな着物、歌や文学などの楽しみなどです。
僕たちが到達した高原社会(※)において「人々は今後、何にお金を使うのか」を考えると、当時の公家のような人を楽しませる領域や、それを担う「係」に対してお金が支払われるようになるのではと思います。
※山口 周氏は自著『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)の中で、現代を「高原社会」と捉えている。高原とは、人類の「物質的不足の解消」が実現されつつあり、高度な経済的成長が緩やかに低下する様子。実はその中の「係」の1つに陰陽師があったのです。陰陽師は、公家の人生をよりよくする役割を担う存在であり、端的にいうと「つきものを落とす」ことが職務の1つでした。
この「つきもの」とは、現代では「まず、仕事をとにかく決めなさい。そして、近くに住む場所を探しなさい」ということかもしれません。たとえば、「音楽だけでは生計が立てられない」などの「○○では食えない」とか、「大企業に勤めれば安心できる」というような親世代の説得に近いかもしれませんね。「あなたのためだよ」と最終的に付言されるような言葉です。
こうした言葉こそが「究極の呪い」であり、それらがとりついて自由度を失っている人に対して別の言葉をかけてあげることが、その呪いを解くことになると考えています。揚平さんが自著で掲げている「ジーニアスファインダー」もその手法の1つのではないでしょうか。
ジーニアス(天才性)とは何か
今言及いただいた『ジーニアスファインダー』を紹介しておきます。このメソッドは「天才性は誰にでもある」という発想を軸として、過去の振り返りや意識の向け方を言語化することで自分を最大限に生かす手法です。
そもそもジーニアス(ゲニウス:genius)という言葉の語源は「霊性(精霊)」です。日本語で言いかえるとジーニアスとは「天才性」を指します。
よく聞かれるのが「強み」や「個性」とどう違うのかということです。その点では、強みというのは相対的な概念であり、個性というのはキャラクターという意味合いがあると考えています。
ジーニアス(天才性)とは、ベクトル(方向性)を示すものとして捉えてもらえればと。
【次ページ】コロナ禍が可視化した「会社員の呪い」
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